ヒロイン【横山家】

back numberの「ヒロイン」を使って、横山家名物夫婦の馴れ初め物語。
3
かおり @orange_shake_

【ヒロイン・1】 “横山先生、来週の同窓会のスライド準備、よろしくお願いしますね。” 『あぁ…はい。』 うわ、忘れとった。慌ててパワーポイントを立ち上げて、その間に資料を取りに行く。 “しかし、バスケ部の生徒達頑張りますねぇ。” 『えぇ、大会近いですからね。』

2015-02-07 00:47:44
かおり @orange_shake_

【ヒロイン・2】 “雪降ってますよ、ほら。いくら体育館とはいえ、寒いでしょうに。” 『え。…あ、ほんまや。』 外を見れば、雪が降っていた。 “バレンタインに雪だなんて、ロマンチックですねぇ。まぁ、うちの学校には縁のない話ですけど。(笑)” 教頭が苦笑いする。

2015-02-07 00:47:51
かおり @orange_shake_

【ヒロイン・3】 中高エスカレーターの男子校。 今年は土曜日だから大人しいけど、男子校は男子校でバレンタインも大変なもので。 うるさい生徒を黙らせるのに一苦労やから、今年は部活しかない土曜日で助かった。 事務室から取ってきた卒業アルバムを開く。うわ、懐かし。

2015-02-07 00:48:03
かおり @orange_shake_

【ヒロイン・4】 自分の卒業年度のアルバムを見れば、懐かしい顔達。 “先生―!そろそろ練習終わります!” 『おー、お疲れ。』 寒さで顔を真っ赤にしたキャプテンが呼びにきて、体育館に向かう。 片付けと終礼を終えて職員室に戻る頃には、うっすらと雪が積もりはじめていた。

2015-02-07 00:48:12
かおり @orange_shake_

【ヒロイン・5】 手元の卒業アルバムと外の雪を見比べる。 俺にとって、雪を見て思い出すのあいつしかいなくて。 今頃何してんねやろ。 …いや、あかんあかん。 左手の指輪に視線を落として、雑念を払うように首を振った。

2015-02-07 00:48:21
かおり @orange_shake_

【ヒロイン・6】 * 中2の春。 少女漫画みたいな、ベタベタな出会いやった。 『うっわ!アカン!オカンなんで起こしてくれへんかってん!!』 “起こしたやんか、そしたらあんたがほっといてくれー言うたんや。” 『やからってホンマにほっとく?…ああ”~、もう!いってきます!』

2015-02-08 00:43:18
かおり @orange_shake_

【ヒロイン・7】 “いってらっしゃーい” 遅刻ギリギリ、いや多分アウトやけど、とにかく家を出て学校まで走る。 よし、今日は記録更新できるかもしれへん。もしかしたら、ギリ間に合うかも! そう思っていたその時。 ドンッ 「きゃぁっ!」 『うぉっ!!』

2015-02-08 00:43:24
かおり @orange_shake_

【ヒロイン・8】 曲がり角の反対側から曲がってきた人とぶつかって、見事にお互い転んでしもうた。 『いった…あ、だいじょ「大丈夫ですか!!!」…あ、はい…』 目の前で座り込んでるのは、隣の女子校の制服を着た女子。 足元に落ちてるのは指定のカバンと…え、食パン?

2015-02-08 00:43:31
かおり @orange_shake_

【ヒロイン・9】 「え?…あ。きゃっ、恥ずかしい!」 俺の目線の先に気付いて、慌てて食パンを隠す。かじった跡からして、パンくわえて走ってたんか。 あれ、ホンマにおるんやな。 『てか…大丈夫?自分。』 俺が言うより先に大丈夫ですかって聞いてきたけど、膝血だらけやん。

2015-02-08 00:43:38
かおり @orange_shake_

【ヒロイン・10】 「あっ、大丈夫です!」 テキパキとウェットティッシュで傷口を拭いて、カバンから取り出した絆創膏をペタっと貼って。 何や…変な子。 時計をチラッと見ると、もう絶対間に合わへん。 ええか、もう。諦めよ。 「あの…ケガ、ないですか?」

2015-02-08 00:43:45
かおり @orange_shake_

【ヒロイン・11】 絆創膏を持って俺を上から下まで見る彼女。 『おん、俺は…大丈夫。』 「あっ」 『え?』 「ボタン、」 学ランの下に着てたカッターシャツのボタンが、俺の足元に落ちていた。 『あぁ、ええよええよ。多分最初からとれかけとったし。』

2015-02-08 00:43:54
かおり @orange_shake_

【ヒロイン・12】 「ちょっといいですか?」 ぐっと縮まる距離。 呆気にとられているといつの間に出てきたのか、小さな裁縫セットを手に、あっという間にボタンは元通りに。 『あ、ありがとう…』 「いえ。すみませんでした。」

2015-02-08 00:44:02
かおり @orange_shake_

【ヒロイン・13】 あっという間とはいえ、道端に座り込んで何してんねんって我に返って、立ち上がった。 『あ、自分も学校遅刻ちゃう?』 俺らの学校と彼女の制服の女子校は確か時間割は同じ。 「え?あ!きゃああ!!」 急に慌てて立ち上がって、制服についた砂をはたきだした。

2015-02-08 00:44:10
かおり @orange_shake_

【ヒロイン・14】 「初日から、恥ずかしい!」 『え、初日?』 よく見ると、襟章の色は俺らと同じ2年生やのに、やけに新しいセーラー服。 『もしかして…転校生?』 「はい!今日から2年B組になります、○○と申します!よろしくお願いします!」

2015-02-08 00:44:18
かおり @orange_shake_

【ヒロイン・15】 『いや…よろしくされても、俺学校ちゃうし…』 「あれ、そうなんですか?」 『え、自分とこ女子校って知らんの?』 「…あ!そうだった!」 何かこの子…しんどいな。 『じゃあ、俺はこれで。ケガ、お大事にな。』 「あっ、ちょっと待って!」

2015-02-08 00:44:26
かおり @orange_shake_

【ヒロイン・16】 嫌や。 これ以上関わるのめんどくさい。 聞こえないふりをして歩き出すと、 「待って…横山くん!」 『え?』 何で俺の名前… すぐに追いついてきた彼女が差し出したのは、俺の学生証。 「落としてたから…」 『あ、ありがとう…』

2015-02-08 00:44:35
かおり @orange_shake_

【ヒロイン・17】 「じゃあ、いってらっしゃい」 『(いってらっしゃい?)…おん。』 これが、彼女と俺の出会い。 食パンくわえた女と曲がり角でぶつかって、そいつが転校生やったなんてベタベタな展開。 唯一想像してたのと違うのは…美少女ではなく、ただの変な女やったってこと。

2015-02-08 00:44:42
かおり @orange_shake_

【ヒロイン・18】 ただ、登校途中にぶつかっただけ。 勝手に自己紹介しとったけど名前も覚えてへんし、学校も違う女のことなんてその日の夕方にはすっかり忘れていた。 いつものように友達とバカやりながら下校している途中。 「横山くん!」 『え?』

2015-02-09 07:35:00
かおり @orange_shake_

【ヒロイン・19】 女の声に自分の名前を呼ばれて振り返ると。 『あ、今朝の…』 “何~ヨコ、彼女できたんかぁ?” 『ちゃうわアホ』 肘で小突いてくる友達をシバく。 彼女の隣にもすでに友達らしき女子が何人かいて、“え、彼氏?”なんて聞いてる。

2015-02-09 07:35:08
かおり @orange_shake_

【ヒロイン・20】 そんなわけないやろ、転校初日やぞ。 いや、それ以前に俺とこいつが何でそんなことなんねん。ありえへんわ。 「違うよ~、友達。」 『え、友達?』 「そう。転校してきて最初にできた友達なの!」 そう嬉しそうに周りの女子に俺のこと紹介しとるけど…

2015-02-09 07:35:18
かおり @orange_shake_

【ヒロイン・21】 正直、俺は友達になったつもりはない。 できればもう関わりたくない。 『いや、あの…』 「一緒に帰ろ、横山くん♡」 ニヤニヤしながら消えていった俺の友達と彼女の友達。 絶対変な勘違いされてるやん。 2人きりにされた帰り道。

2015-02-09 07:35:27
かおり @orange_shake_

【ヒロイン・22】 何を話したかとか全く覚えてへん。 覚えてるのは、やたら嬉しそうにずっと笑っとった彼女の顔だけ。 * 次の日も、そのまた次の日も。彼女は俺を校門前で待ち伏せしよった。 部活で遅くなった日でも寒そうに手を擦り合わせながら、ずっと。

2015-02-09 07:35:39
かおり @orange_shake_

【ヒロイン・23】 “おい~ヨコ、今日も出待ちやんかぁ♡” 『うっさい、シバくぞ。ほんでお前は何でいつもおんねん、1人で帰れや。』 最初の頃は面白がって冷やかしてた友達も次第に校門にすらついて来なくなり、俺もいつの間にか抵抗を忘れてあいつと一緒に帰るのが当たり前になってた。

2015-02-09 07:35:47
かおり @orange_shake_

【ヒロイン・24】 「はい、横山くん!」 ある日の帰り道に突然渡されたノート。 『え、何これ』 「ふふふふぅ♡見てからのお楽しみ!」 楽しそうな彼女を不思議に思いながら、家に帰ってノートを開くと。

2015-02-09 07:35:57
かおり @orange_shake_

【ヒロイン・25】 11月20日 晴れ 今日のお弁当は、お好み焼きでした! ご飯と一緒にお腹いっぱい食べたら、午後の英語の授業が眠くてたまりませんでした。 でも窓の外を見たら、体育の授業でサッカーしてる横山くんが見えたので目が覚めて、それからはずっと起きてました♡

2015-02-09 07:36:06
1 ・・ 4 次へ