【ミイラレ!第八話:三本足の人形のこと】(原文のみ)

怪異に好かれる少年と退魔師の少女がなんやかんやするお話。一難去ってまた一難。 こちらは原文のみになります。実況つきはこちら→ http://togetter.com/li/851085
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鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「君たちは、学校に魔女の噂が立ってから出てきた怪異でしょ?ナナからそう聞いてる」自分の肩に腰掛けた小さな怪異を横目で見ながら、四季は質問を続ける。「だとすると、やっぱり関係あるのかなって思うじゃない。あるんだったら、まずその……人?と話をすればいいわけだし」24 #4215tk

2015-07-24 20:54:02
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

『そもそもだ、その学校の魔女っつーのは何様なんだよ』ナナがさらに質問を投げかける。『そいつの名前と居場所も知ってんだろお前?教えろよ、直接話つけに行くからよ』「じょ、冗談じゃないわ!」メリーが悲鳴を上げた。その過剰な反応に、四季は首を傾げる。25 #4215tk

2015-07-24 20:57:06
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「お母様の正体を口外するだなんて!そんな恐ろしいこと、できるわけがない!」「……なるほど、お母様っていうのは『学校の魔女』のことでいいんだね」黙って話を聞いていた怜が呟く。「つまり、その怪異は自分の手足となる怪異を作れるくらいには力があるわけだ」26 #4215tk

2015-07-24 21:00:07
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

退魔師の言葉に、四季は驚いて振り向いた。「作る?そんなことができるの?」「ある程度の力と技術があれば」怜は答え、青い鬼女を一瞥した。「そこの……巡さんだって小さな蜘蛛の怪異を作ってたでしょ?その延長線上だよ。退魔師にも似たことをしている人はいるしね」27 #4215tk

2015-07-24 21:03:08
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

『つまり、なにか?どっからか流れてきたんじゃなくて、その魔女が作ったってことかよ』ナナが顔をしかめる。『実質、そいつ一人に俺たちは追い出されたわけか。……ふざけんなよな』「けど、ずいぶん厳しい怪異なんだね?正体を喋ったら、その……ひどい目に合わせるなんて」28 #4215tk

2015-07-24 21:06:06
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「無礼者」メリーにぴしゃりと言葉を叩きつけられ、四季は目を丸くする。「お母様は優しい方よ。おそらく私が秘密を喋っても、笑って許してくださるでしょう。間違っても手をかけるようなことはしない」「……じゃあ、なににビビってんだテメエはよ」花子が訝しみ、眉根を寄せる。29 #4215tk

2015-07-24 21:09:07
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「お母様に慈悲があっても、その近しいものにまで慈悲があるとは限らないわ」「あン?ああ、仲間にいんのか。風紀委員みたいのがよ」花子の言葉に、メリーは首を振った。声を潜めて言う。「あれを仲間と呼んでいいものか……私が生まれる前から、『あれ』はお母様の側にいた」30 #4215tk

2015-07-24 21:12:07
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

『あれ』。なんとなく四季は胸騒ぎを覚える。「魔女のほかに、もう一人怪異がいるの?」「貴方は。なぜお母様が魔女を自称するか知っている?」唐突な質問に、彼は首を横に振る。メリーが暗い声で答えを言った。「『あれ』の力を借りているからよ。『あれ』はとても横暴で、強大」31 #4215tk

2015-07-24 21:15:04
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「ずいぶんもったいぶるじゃねえか」花子が鼻を鳴らした。「なんだよ、『あれ』っつーのは」「悪魔よ」メリーが低い声で言う。その言葉には、畏怖と怯えの色が濃い。「文字どおりの。あれは優しくない。私が秘密を漏らしたら……考えたくもない!は、灰にされるに違いないわ!」32 #4215tk

2015-07-24 21:18:28
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「悪魔?」その言葉に、四季は少なからず面食らう。「そういうのもいるんだ……なんだかすごいんだな」『つっても、アレじゃねえのか?合わせ鏡から出てきて人間に捕まるようなドジな奴なんじゃねえの』「『あれ』はそんな低級な怪異じゃないわよ」メリーがナナを睨みつける。33 #4215tk

2015-07-25 13:06:07
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「本当に怖いんだから!……今日はなんだか機嫌が特に悪いみたいで、ああもう……」その言葉に怜が眉をひそめた。「まさかと思うけど。その悪魔、トリル・クロスロードって名前?」「しーっ!」その名前が出された途端、メリーが明らかに狼狽する。「名前を出さないで!」34 #4215tk

2015-07-25 13:09:22
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「ど、どこで聞かれてるかわかったものじゃないんだから!……だいたい、人間がなんであれの名前を!?」「いろいろあって。そうだ、四季。聞いておかなきゃいけないことがあるの」四季は小首を傾げ、怜へと振り返る。「なに?」「さっき言った名前に、覚えはない?」35 #4215tk

2015-07-25 13:12:04
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「さっき?……ああ、悪魔の?」「そう。そいつ、学校前まで来てた。どうも四季に会いに来たらしいんだけど」「俺に?」彼はより深く首を傾げた。「いや。というか、怪異に悪魔がいるっていうのも初耳だよ」「え?そうなの?おかしいな……」怜もまた眉根を寄せる。36 #4215tk

2015-07-25 13:15:06
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

『その悪魔って、どんな怪異なんです?』小夜子が退魔師に問いかける。怜は少しだけ考えてから言った。「……とりあえず炎を使う。他の怪異と比べても霊気が段違いで」『いえ、そういう情報はいらないです。見た目ですよ、見た目』幽霊がぱたぱたと手を振って修正した。37 #4215tk

2015-07-25 13:18:12
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「あ、ああ、そっち?えっと、そうだね……男か女かぱっと見ではわからなかったけど、三田目は子供。髪が赤い。コウモリみたいな羽を出し入れできる……くらい、かな」怜が列挙する特徴に、四季は頭を悩ませる。が、赤い髪のところでようやく思い当たる相手を見つけた。38 #4215tk

2015-07-25 13:21:10
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「……名前は初めて聞いたけど。会ってた、かも、しれない」「本当?いつ頃のことか覚えてる?」身を乗り出して聞いてくる怜に、四季は過去の記憶をなんとか捻り出す。「……怜がいなくなってすぐの頃だから、十年くらい前じゃないかなあ。うん、あの子くらいしかいないはず」39 #4215tk

2015-07-25 13:24:05
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「けど……悪魔?本当に?」四季は自分がいくらか情けない表情になっているのを自覚していた。「そっか、マジか……なんだかなぁ……」「ど、どうしたの?」「いや、あの子が怪異とは思ってもなかったんだ。昔は見た目も俺と同じくらいでさ。外国から遊びに来たって言ってて」40 #4215tk

2015-07-25 13:27:03
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「あのときはみんな離れていったとこだったし、人間の友達ができて嬉しかったんだけど……そっか、悪魔か……」物思いに沈んでいた彼は、不意に気づく。部屋の中にいたたまれない空気が広がっていることに。「その…………ごめん」怜がひどく申し訳なさそうな声で誤った。41 #4215tk

2015-07-25 13:30:04
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「うん、まあ、そうだよな。昔はいろいろ寂しい想いとかしたもんな」花子が視線を逸らしつつ言う。「なんというか……あれがいなかったら、お母様に会わせたいくらいにかわいそうな事情があったのね、貴方」メリーもまた憐れみの視線を向けている。ほぼ初対面だというのに。42 #4215tk

2015-07-25 13:33:08
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「ああ、いや!そういうつもりで言ったわけじゃ……!」四季は慌てて場を取りなす。「とにかく!えーと、なんだっけ?そのトリルって悪魔とはたぶん面識あるよ。すぐにいなくなっちゃったから、どんな相手だったかまでは覚えてないけど」「なるほど、わかったよ」怜が頷く。43 #4215tk

2015-07-25 13:36:08
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「とにかく、四季と会いたがってた悪魔と『学校の魔女』に繋がりがあるとするなら……やっぱり向こうからなにか仕掛けてきそうな気はするね。巡さんはどう……あれ?」意見を求めようとした怜が声を上げる。あの鬼女の姿がない。いつの間にいなくなったのだろう?44 #4215tk

2015-07-25 13:39:06
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

四季もこのときになって巡の不在に気づき、首を傾げた。「……おかしいな。巡さん、どこ行っちゃったんだろ」『お買い物に行くって言ってましたよ』のんびりとした声を上げたのは小夜子。『今日のお夕飯の食材を買いに行くそうです。よくできた方ですよねぇ』45 #4215tk

2015-07-26 16:00:10
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「そ、そっか……一声かけてくれればいいのに」思わず四季は苦い顔をする。というより、あの風体で買い物に行っても大丈夫なものなのだろうか。そもそも買い物ができるのか?『鬼の姐さんの話はいいだろ、今は』ナナが口を出す。『そこの人形をどうするか考えようぜ』46 #4215tk

2015-07-26 16:03:08
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

びくりと震えたメリーが、わたわたともがき始める。「な、なにかするっていうのなら徹底抗戦するわ!私とて魔女の子、そう簡単に屈したりするものですか!」「捕まってるこの状況でどうにかできんのかァ、おい?」花子が嘲笑する。そして彼女は四季に視線を送った。47 #4215tk

2015-07-26 16:06:17
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「まあ、こういうときは親分の判断に委ねるとするか。どうするよ、四季」「えっ?うーん」四季は困ったようにメリーを見、横目でナナを見、再びメリーを見た。「……とりあえず捕まえておけばいいんじゃない。壊すとか、そういうのはなしにしようよ」『えぇー!』48 #4215tk

2015-07-26 16:09:04