黄昏町(柊)十日目

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@hiiragi_r_t_d

「し、しかし御身にもしもの事があれば…」 なおも食い下がろうとする側近に、[王]は剣を抜き放つ。 「我があのようなバケモノ風情に遅れを取ると?」 「いえ、そのような事は決して!」 「我が聞いてやろうと言っているのだ。下がれ」 「はっ!」 25 #hollytk

2015-08-04 22:59:17
@hiiragi_r_t_d

側近は並々ならぬ敵意を込めて私を睨みつけながら数歩距離を置いた。 皆が手出ししないのを確認した[王]は私の目の前まで歩み寄ると、 「頭が高いぞ下郎」 無造作に私の膝から下を切り落とした。 26 #hollytk

2015-08-04 23:00:14
@hiiragi_r_t_d

「がっ…………ぐっ…」 突然支えを失った私は、受身すら取れずに地面に背中から叩きつけられた。 しかし私は悲鳴を押し殺し、両手を広げて無抵抗を示す。 「ほう、まだ話し合う気か」 27 #hollytk

2015-08-04 23:01:16
@hiiragi_r_t_d

「当然……です。こうなるだろうな、とは思って…いました」 「物の怪にしては良い根性をしている。良かろう。話せ」 そう言うと[王]は夕焼け空を背に、私の顔を覗き込んだ。 28 #hollytk

2015-08-04 23:02:18
@hiiragi_r_t_d

私は逆光で影にしか見えない[王]の顔を見据えながら語り出した。 「貴方の言う物の怪は皆、殺されても死にません。それどころか新しい異形を得て蘇ります」 「うむ」 「私達は人の心を持っています。しかし人に殺されることで憎しみ、争うのです」 「うむ。知っている」 29 #hollytk

2015-08-04 23:03:39
@hiiragi_r_t_d

……知っている? 「知っておられたのですか!?なら何故!!」 私の問いかけに[王]は答えず、静かに語り始めた。 「我が国の敵は何か分かるか、客人よ」 敵………人間にとってそれは即ちバケモノの事ではないのか? 30 #hollytk

2015-08-04 23:04:40
@hiiragi_r_t_d

私の返答を待たず、[王]は語る。 「我と我が国は武力と有用性を周囲に示さねばならない。さもなくば略奪の暴威が我が民を襲うであろう」 略奪………人が、人から、奪う。 「そのような事が……あるのですか?」 「それを起こさせぬ為の我だ」 31 #hollytk

2015-08-04 23:05:49
@hiiragi_r_t_d

そう言い切ると[王]はどっかと座り込み、私にしか聞こえぬ声量で語り始めた。 「若く未熟な者が物の怪に毛皮や鱗を与え、それを熟練した者が狩り、武威を示す。そのようにして我が国は回っている。 物の怪が人であったとしても、そうする以外に既に道は無いのだ。」 32 #hollytk

2015-08-04 23:06:24
@hiiragi_r_t_d

私はその声に[王]の顔を仰ぎ見る。 [王]は………彼は、悲しんでいた。悔いていた。思っていたよりも若いその顔が、悔恨に僅かに歪んでいた。 知らず知らずのうちに、私の口から問いが零れた。 「どうして……」 33 #hollytk

2015-08-04 23:07:27
@hiiragi_r_t_d

どうして、貴方はそこまでして彼らを守るのか?他者と自分を犠牲にしてまで、ここには守る価値があるのか? 言葉にならなかった問いを察したのだろう。彼は僅かに困ったような顔をして答えた。 34 #hollytk

2015-08-04 23:08:15
@hiiragi_r_t_d

「確かに君達から見れば彼らは愚かで、浅はかで、狂っているように見えるかもしれない。」 「でも、そんな彼らに私は救われたんだ。」 「ここにしか、我の居場所はない。」 「我にここを託してくれた先人の為にも。」 「我は、この国の王であり続けよう。」 35 #hollytk

2015-08-04 23:09:04
@hiiragi_r_t_d

それだけ言い終えると、彼は[王]に戻った。 「言いたかった事はそれだけか、客人」 「最後に一つ」 「申してみよ」 「私がここに近づくなと……物の怪達に伝えたら、貴方は私を恨みますか?」 ここの情報が広く行き渡れば、狩りの成果は減るだろう。 36 #hollytk

2015-08-04 23:10:22
@hiiragi_r_t_d

しかし[王]はニヤリと笑うと、告げた。 「面白い。人と物の怪の領域を分ける、と申すか。この逢魔の町で」 「人は人と………物の怪は物の怪と争い、分かり合う。それがあるべき姿ではないかと」 「よかろう。出来るものならやってみよ。」 37 #hollytk

2015-08-04 23:11:10
@hiiragi_r_t_d

それだけ告げると[王]は立ち上がった。周囲を取り囲む群衆は静まり返り、主の言葉を待っている。 38 #hollytk

2015-08-04 23:11:52
@hiiragi_r_t_d

「我は正義である」[王]は宣言する。 「我が国は正義である」我々は正しい。 「貴君等は正義である」君達は正しい。 「……物の怪は、悪である!」 [王]は拳を天へと突き上げた。群衆もそれに倣う。 39 #hollytk

2015-08-04 23:12:22
@hiiragi_r_t_d

そして[王]は告げる。ここに一つの悪を絶つ、と。 群衆は賛同する。門が閉じられる。 [王]が私の首に剣を突き立てる。神経が断ち切られ、感覚が消滅する。 40 #hollytk

2015-08-04 23:13:16
@hiiragi_r_t_d

私が最期に見たものは、私を見下ろす[王]の顔。 口の動きだけで何かを伝えようとしている。 「あ」「り」「が」 そこまで読み取ったところで、過積載気味な鉄の門が私の頭をすり潰した。 41 #hollytk

2015-08-04 23:13:43
@hiiragi_r_t_d

──────── 【十日目】 【死亡】 【魂-2、異形『石肌』を入手】 【魂9/力5/探索3】 【異形】複口(力+2、探索+1)、長指(力+1、探索+2)、鱗(水耐性、力+1)、石肌(火耐性、力+1) 42 #hollytk

2015-08-04 23:14:12
@hiiragi_r_t_d

[町]役場の横開きの鉄柵門が開いている。君が入ろうとすると、住人たちが門を一気に閉めにかかった。《異形2つ以下なら許される【魂+1】、異形3つ以上で圧死【魂-2/『石肌(火耐性、力+1)』を入手】》 #黄昏町の怪物 shindanmaker.com/541547 #hollytk

2015-08-04 23:14:48