【ミイラレ!第十二話:古椿の小槌のこと】(実況付き)
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思わず四季は目の前の小さな怪異をまじまじと見つめる。そういえば彼女はあの小槌の付喪神。怪異を呼び出す力も当然備わっているのだろう。「しかし……今のザマでは、若旦那の力なしで呼び戻すのは一苦労ですな。申し訳ありませんが、後であたいも霊気の補給をお願いします」69 #4215tk
2015-08-23 20:21:06「それはいい、けど」上の空に答えながら、四季は小雨を見やる。右半身が石のように固まってしまっている。これも霊気の補給で治るのだろうか?……と。「ううー……」小雨が身じろぎし、左目を開ける。そして、四季を見た。「ああ……四季。無事だったんだね?よかった」70 #4215tk
2015-08-23 20:24:06四季は一瞬だけ言葉に詰まる。「小雨……」「よいしょっと」何か言おうとした四季は、不意に引き寄せられた。見ると小雨の左腕が彼を掴み上げている。いつも通りの早業。油断した隙に、四季はまた小雨に抱きしめられていた。「あたしにも霊気を分けて。ちょっと消耗しちゃった」71 #4215tk
2015-08-23 20:27:25巡が腕組みをし、難しい顔をしている。「本当は山ン本組以外に若旦那の霊気を分けたくはないんですが……ま、昔からの若旦那の知り合い。大目にみるとしましょう」「四季はあなたのものじゃないでしょ」ぴしゃり、と小雨が言う。「はじめまして、だね。御伽 巡さん」72 #4215tk
2015-08-23 20:30:15「どうも、八尺 小雨殿。僧正坊殿からお噂はかねがね。……しかし」巡がわずかに目を細める。「お二人の力を持ってしても、あの悪魔には太刀打ちできませんでしたか」「あれはちょっと無理だったね……目を合わせるだけで石にされるなんて、ちょっと反則だよ」73 #4215tk
2015-08-23 20:33:21小雨の言葉に鬼女が眉根を寄せる。「……邪眼の類?石にされるとくれば、西洋のメドゥーサ、ないしはバジリスクか。そうした類の伝説を取り込みやすい本体……?」「……あの、ちょっといい?」四季が声を上げる。その顔は青ざめていた。「その……怜たちは、無事なの?」74 #4215tk
2015-08-23 20:36:30四季の言葉に、しかし巡と春はただ顔を見合わせただけだった。「さすがに奴らは連れてこられなかったんでしょう?」「そうだな。……そういやいたんだっけか、退魔師の奴ら」春が首を傾げて言う。「まあうちの連中は全員無事だ。それで充分だろ」あっさりと言い放つ。75 #4215tk
2015-08-24 20:06:18「充分って……!それじゃなに、見捨てるって言うの!?」「お言葉ですが、若」振り向いた春が眉をひそめる。「あたいも奴ら全員を助けられるほどの霊気がまだ戻っておりません。それにあの赤髪は相当の手練れ。組員全員でかかったところで足止めが関の山といったところでしょう」76 #4215tk
2015-08-24 20:09:12四季は言葉を失い、俯く。自分でも血の気が引いているのがわかる。ながれたちをあそこまで追い詰めた悪魔が、果たして怜たちになにをするか……考えるだけでも恐ろしい。「め、巡さん!なんとか助けに行けない!?」「あたしがですか?」答える巡は大いに不服そうだ。77 #4215tk
2015-08-24 20:12:04「なんであたしが……いいですか若旦那。今はともかく、奴らはいずれ敵に回ります。捨て駒としてお考えに」「できるわけないだろそんなこと!」その叫びが巡の言葉を上塗りした。目を丸くした鬼女を見つめ、荒くなった息を整えながらも彼は言う。「……頭領の命令は聞くんでしょ」78 #4215tk
2015-08-24 20:15:18息詰まるような沈黙。腕組みをした春が、黙って巡を見据える。鬼女は……ややあってから溜息をつき、肩を竦めた。「今から行ったところで、間に合わないかもしれませんがね」「……まだわからないだろ、そんなこと」睨みつける四季を一瞥し、巡は寝室を出て行った。79 #4215tk
2015-08-24 20:18:06