[改稿版]『当たって砕けて不連年』#10~13

前回投稿分より挿絵追加・大幅改稿版のオリジナル小説『当たって砕けて不連年』まとめその③
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天界ボラヴル@4月ごろ再開 @vorrrrrrrra_e

「悪いのは全部────ボクだ」 地口は俺の前で初めて、自分のことをボクと呼んだ。 その呼び方は、わがままを我慢できない大人になりきれない子供のようで。 無邪気に事故を誘発しつづけてきた、俺たちと対立しているあの黒幕と、全く同じようだ。 地口は半泣きの顔で、俺に微笑みかけてきた。①

2015-08-01 20:04:11
天界ボラヴル@4月ごろ再開 @vorrrrrrrra_e

「・・・ごめん。まだ、ボクにはまだ、話をする勇気が出ないんだ。今は…ね、ごめん…」 と、地口は目を袖でこすりながら、教室の出口の方へ歩を進めた。 そして小さな声で、 「…わかりきってたことのはずなのに」 と呟いた。 地口のその後姿は、いつもより細く、いつもより小さく見えた。 ②

2015-08-01 20:05:13
天界ボラヴル@4月ごろ再開 @vorrrrrrrra_e

風見鶏が目覚めたのは地口が風呂から出た後だった。俺は二日続けて風呂を借りるのは遠慮して、風見鶏が起きるのを待っていた。 つーか風見鶏持って帰ったのねとお思いのことだろうが、前例より支配されているときも当人の記憶は残るという教訓から吹聴されちゃ困ると思ったのが、まあひとつ。④

2015-08-01 20:11:15
天界ボラヴル@4月ごろ再開 @vorrrrrrrra_e

それと単純に風見鶏を一人にすると危ないと思ったのだ。 風見鶏は普通に起きたのだが、地口がミイラっぽく寝てる状態からそのまま立ち上がると思ったのに、と口走ったため今現在、俺がモノローグをこうして執筆している中風見鶏は無い腹筋総動員して一生懸命寝た状態から立ち上がろうと頑張ってる。⑤

2015-08-01 20:14:26
天界ボラヴル@4月ごろ再開 @vorrrrrrrra_e

めっちゃプルプルしてるしたぶん無理だと思う。ちなみに地口はいたずらして起き上がる邪魔をしている。 しかし風見鶏が脳力を保有しているとはいえ、どうにも俺らと同じ匂いがしない。本当に脳力があるのか信頼してないわけじゃないが。 自分の提案だが風見鶏も仲間にしていいのか、少し憚られる。⑥

2015-08-01 20:17:07
天界ボラヴル@4月ごろ再開 @vorrrrrrrra_e

地口の脳力で相手の感情や思ったことや記憶など頭の中しか覘けないので、世界で起きたことを客観的に見る風見鶏の脳力は何が起きているのか把握する程度には良いかもしれないが、あまり重宝しないような気もする。 「そーでもないかもよー」 とここまでのモノローグを読破した地口が反論してきた。⑦

2015-08-01 20:30:06
天界ボラヴル@4月ごろ再開 @vorrrrrrrra_e

「何がそうでもないのだ?」 風見鶏が尋ねた。地口はそれを無視した。 「例えばそう…経歴を読む、ってのは物質でないと読めないこともないはずだから、横様くんを見ればいつ髪を切ったとか、どこで打ったあおたんかとか、把握できるかもじゃん?」⑧ pic.twitter.com/Z8Bdgpqgwt

2015-08-01 20:33:07
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天界ボラヴル@4月ごろ再開 @vorrrrrrrra_e

「別にそんなの把握してもなあ…」 「ああ、もしかして私の話か?」 風見鶏が空気読めてない。 これはこれで面白いので俺も風見鶏を無視してみた。 「黒幕と対面すれば、俺達が把握している以外に起こしてる事故とか知れるかもな」 「…君が提案したんでしょ」 俺の投げやりな態度に呆れ顔だ。⑨

2015-08-01 20:35:44
天界ボラヴル@4月ごろ再開 @vorrrrrrrra_e

「案ずるな!私はどのような悪にさえ屈しない、正義がある!私が現れればええ貴様」 「風見鶏の脳力、地口が推測する限り…物の動き方、部品の長さ、汗のかきかたみたいな情報かき集めてこんなことあったんじゃないかって計算することができるってことじゃないかな」 「しかし私は数学が苦手だ!」⑩

2015-08-01 20:39:36
天界ボラヴル@4月ごろ再開 @vorrrrrrrra_e

「地口、さっきみたいに、「ボク」でも良いんだぜ?何気遣ってるのか知らないけど」 「横様くん。何気遣っているのか知らないけど、横様くんは」 俺の言葉を聞いて、地口は卓袱台にだらしなく頭を乗せていつもの愛想のよい笑みをこちらに向けてきた。 「ボクが「ボク」って言ってるほうが好み?」⑪

2015-08-01 20:40:57
天界ボラヴル@4月ごろ再開 @vorrrrrrrra_e

「ああ、好みだな」 適当に出任せを言った。 風見鶏がさりげなく「愛だな」とか言った気がしたがコイツ自分がスルーされてるとわかると一気に合いの手が適当だ。 しばらく地口はキョトンとしてたがしばらくすると呆れたように笑った。 「じゃあ横様くんの前では極力、ボクって言うようにするね」⑫

2015-08-01 20:42:09
天界ボラヴル@4月ごろ再開 @vorrrrrrrra_e

とりあえず「よろしくな」とか訳わかんないこと言っといた。 まあいいか。 俺子供好きだし、ボクって呼び方子供っぽくて可愛いし。 「というか先程から思ってたのだが」 と、不意に風見鶏が口を割ってきた。今度はスルーされまいと右腕をぴしっと伸ばし手刀のように地口と俺の間に入刀してきた。⑬

2015-08-01 20:44:04
天界ボラヴル@4月ごろ再開 @vorrrrrrrra_e

地口がめちゃくちゃ嫌そうな顔で睨む。 「貴様らの会話には言葉が少ないな。特に横様のほうだ。俺には横様が何を言っているのかわからない。しかし、寸志はすべてを把握しているように会話に応じている。これはなにか、貴様らはテレパシーでもできるのか?」 「つーか、カザミドリはいつ帰るの?」⑭

2015-08-01 20:46:03
天界ボラヴル@4月ごろ再開 @vorrrrrrrra_e

「おやおや?貴様らが私を連れてきたのではないか。何か釈明があるものと思って地味に楽しみにしてた私に対してひどくない?」 「何の話だよ殺すぞ」 「ひどくない!?」 俺も見たこと無い地口の冷えきった態度に、思わず震えた。 なかなか新鮮だ。風見鶏が仲間になるとこんな地口が見れるのか。⑮

2015-08-01 20:48:10
天界ボラヴル@4月ごろ再開 @vorrrrrrrra_e

「冗談じゃないよ横様くん!」 どうやらコイツは相当風見鶏が嫌いらしい。当の風見鶏は地口の脳力を知らないので、「なんだ?何が冗談ではないのだ?」とすごく空気読めてない。だんだん風見鶏が可愛く見えてきた。 というか風見鶏がかわいそうに見えてきた。 「こりゃ地口の真の天敵は風見鶏か」⑯

2015-08-01 20:49:50
天界ボラヴル@4月ごろ再開 @vorrrrrrrra_e

「何を見当違いなことをほざいとるのだ横様!私と寸志は一蓮托生!常に心が通いあい今でも何を考えてるのか手に取るようにわかるほどの強い絆がある!」 「絆なんて1カロリーもないよ!」 「まあ落ち着け。風見鶏もお前と友達になりたいみたいだしさ」 その一言に地口はシリアスな表情に変わる。⑰

2015-08-01 20:51:46
天界ボラヴル@4月ごろ再開 @vorrrrrrrra_e

「そうは言っても横様くん、その…絆なんて、横様くんですら」 「俺ですら?」 何でここで俺が出てくるんだ。 学校でもこの話題のとき地口は言葉を濁していたな。俺は思わず、俺が何だよと催促してしまった。 ここは風呂場ではないからのぼせる心配もなかったのに。 「…察せないのか、横様よ」⑱

2015-08-01 20:53:43
天界ボラヴル@4月ごろ再開 @vorrrrrrrra_e

と、口籠る地口の返答を待っていると風見鶏が大仰に手を開き傲岸不遜に向き合った。 いつにも増して鋭いヤツの三白眼が俺に突き刺さる。 「寸志は悩んでおるのだ。貴様との関係を。何か踏ん切りがつかなくて貴様とこれ以上仲良くは────ぶっ!」 地口がコップに水を注いで風見鶏にぶっかけた。⑲

2015-08-01 20:56:19
天界ボラヴル@4月ごろ再開 @vorrrrrrrra_e

あれだけ緩衝材のように穏やかだった地口でも嫌いな相手にはとことん残酷になれるのな、と俺は驚いたが風見鶏の言いかけた地口の悩みとやらの方が気になった。 地口が俺との関係を悩んでいる? 何故、一体何を悩むというんだ。 俺はむしろ地口と仲良くなれて、自分の新しい魅力に気付けたのに。⑳

2015-08-01 20:58:12
天界ボラヴル@4月ごろ再開 @vorrrrrrrra_e

俺は日和っているわけではないが、地口の全てを理解してるかといえばそうでもない。 現に、さっきの地口の戸惑いの裏に何があるのかもよくわかってない。しかし、地口には何度も危機を助けられてきたから負荷をかけたくない。それだけの気持ちで、俺は何より地口が嫌がったことを口走った。(21)

2015-08-01 21:00:13
天界ボラヴル@4月ごろ再開 @vorrrrrrrra_e

「風見鶏」 と、地口にかけられた水を地口に拭かれている風見鶏に声をかける。 それを受けて「なんだ!」と偉そうに胸を張りながら返事をしてきた。 「お前を連れてきたのは…だな」 風見鶏は地口の心を見抜いた。 その洞察力に、賭けよう。 「お前の脳力、試させてもらいたい」 (22)

2015-08-01 21:04:02
天界ボラヴル@4月ごろ再開 @vorrrrrrrra_e

『当たって砕けて不連年』 #13-2

2015-08-08 20:17:46
天界ボラヴル@4月ごろ再開 @vorrrrrrrra_e

「この地口の家にお前を連れてきたのは他でもねえ。お前の脳力の優秀さをテストしたいのさ」 「テスト、だと?」 「横様くん」 かつてないほど嫌そうな黒瞳を向けられたが、無視した。 お前が何を悩んでるかは知らないがその杞憂が俺の所為なら、俺はお前の嫌がることでもお前のために尽くすぞ。①

2015-08-08 20:18:45
天界ボラヴル@4月ごろ再開 @vorrrrrrrra_e

俺は「ここに」、とあるものを取り出した。 「一本のナイフがある」 それは放課後俺が学校に走り、一階にて発見した五本のナイフのうちの一本だ。何かの手がかりになるかと考え一応一本だけ回収しておいた。 どうやらこのナイフは元々風見鶏の所有だったようで、「私のナイフだな」と頷いていた。②

2015-08-08 20:20:09
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