むやみに教えないこと、見守ること・・・センス・オブ・ワンダーの重要性

子どもにむやみに教えようとしない方がよい。しかしそばに一人、大人が寄り添う必要がある。そのことに気づかせてくれた3冊の本を紹介する。
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shinshinohara @ShinShinohara

そんなハイジが石造りの都会に連れてこられた。山の姿も見えず、子ヤギもおらず、草も生えない、空も見えない無味乾燥な空間。家庭教師が押し付ける無味乾燥な文字の山。ハイジは自然の不思議に飢えた。飢えたからこそ、家政婦のロッテンマイヤが驚愕するほどの奇矯な行動にも出た。

2015-09-09 18:12:12
shinshinohara @ShinShinohara

クララの祖母は、そんなハイジに寄り添った。ハイジに与えた本は、アルプスの景色を思い起こさせる挿絵があった。自然の不思議に飢えていたハイジは、文字の向こうからアルプスの匂いを必死にかぎ取ろうとした。だからそれまでとはうってかわって、本にかぶりついたのだ。

2015-09-09 18:13:09
shinshinohara @ShinShinohara

ハイジはだから、本から文字情報だけを読み取ったのではない。文字の向こう側にある、アルプスで感じた匂いを嗅ぎ取ろうと必死になった。センス・オブ・ワンダーがあったからこそ、文字の向こうの世界の魅力に気づくことができたのだ。

2015-09-09 18:14:03
shinshinohara @ShinShinohara

それでもしょせん、文字は文字でしかなかった。ハイジはやがて精神を病むようになる。元気を取り戻すにはアルプスに戻るしかない、という医者の診断もあり、ハイジはアルプスに戻された。もう一度「センス・オブ・ワンダー」が息づく世界に戻ることができた。

2015-09-09 18:14:53
shinshinohara @ShinShinohara

しかしクララの祖母が教えてくれた本の魅力も、ハイジは忘れなかった。本の文字の向こう側には、素晴らしい世界が広がっている。文字はただのアルファベットの羅列ではなく、向こうの世界へと連れて行ってくれる案内人なのだ。ハイジはアルプスに戻ってからも、学ぶ楽しさを忘れなかった。

2015-09-09 18:15:58
shinshinohara @ShinShinohara

ハイジは「センス・オブ・ワンダー」があったから、文字の向こう側の世界の魅力に気づくことができた。もし自然の不思議さ、神秘を知らずに文字情報だけに囲まれていたら、ハイジは文字の向こうの世界に気づくことができただろうか?不可能だったろう。

2015-09-09 18:17:21
shinshinohara @ShinShinohara

他方、クララの祖母がハイジに寄り添い、ともに文字の向こうの世界の美しさに感激してくれなければ、文字が素晴らしい案内人であることに気づくこともできなかっただろう。クララの祖母も「センス・オブ・ワンダー」の持ち主だったからこそ、ハイジの苦しみに気づくことができた。

2015-09-09 18:18:45
shinshinohara @ShinShinohara

そして、そんなクララの祖母がハイジのそばに寄り添ったからこそ、ハイジは学ぶことの喜びに気づくことができた。ハイジはアルプスで自然の不思議を知り、クララの祖母のおかげで文字の向こう側に自然の不思議が匂い立つことを知ることができた。

2015-09-09 18:20:36
shinshinohara @ShinShinohara

「センス・オブ・ワンダー」、「荘子」のあとがき、「アルプスの山の娘」。この3冊は、むやみに無味乾燥な文字情報を教えようとしすぎることは、感性を損なうものだと教えてくれる。しかし同時に、自然の不思議に目を瞠り驚く感性が育つには、そばで一緒に感動する大人が一人、必要だとも教える。

2015-09-09 18:22:02
shinshinohara @ShinShinohara

そのことは実は、中国の古典「大学」にまとめられている。四書五経の一書として有名なこの本は、17文字でその内容を表せると言われている。 「格物致知誠意正心修身斉家治国平天下」。 ここで重要なのは最初の4文字(格物致知)だが、後ろからこの言葉を解説してみる。

2015-09-09 18:22:44
shinshinohara @ShinShinohara

世界を平和にしたければ(平天下)まず自分の国を治めなさい(治国)。国を治めるにはまず身の回りの人を治めなさい(斉家)。身の回りの人を治めるにはまず自分の身を修めなさい(修身)。身を修めるには心をまっすぐにしなさい(正心)。心をまっすぐにするには心の動きを素直にしなさい(誠意)。

2015-09-09 18:23:24
shinshinohara @ShinShinohara

心の動きを素直に(しても問題が起きないように)するには、徹底して知識を身に付けなさい(致知)。知識を徹底して身に付けたければ、森羅万象を体験的に感じ取りなさい(格物)。 そう、文字情報を学ぶ「致知」の前に、自然や生命の不思議に目を瞠り驚く感性、「格物」が必要なのだと指摘する。

2015-09-09 18:23:58
shinshinohara @ShinShinohara

「センス・オブ・ワンダー」も、「荘子」のあとがきにあるエピソードも、ハイジも、いずれも文字情報を知るその前に、自然や生命の不思議に目を瞠り驚く感性が育まれることが必要、つまり「格物致知」の順だということを教えてくれる。文字の向こうに豊かな情景と匂いが感じ取れる感性が重要なのだ。

2015-09-09 18:24:50
shinshinohara @ShinShinohara

文字が呼び水になって、魅力的な世界が向こうに広がっていることに気づくことができるならば、学習すればするほど学習意欲は高まるだろう。それでいて、豊かな自然体験は、文字の記述する世界がおかしい場合、それに気づき、うのみにしない感性も育むだろう。

2015-09-09 18:27:12
shinshinohara @ShinShinohara

この世界が美しく、驚きに満ちていること。その世界に生を受けた奇跡。そのことを気づかせてくれる、一緒に感動してくれる大人が一人いれば、子供はこの世界を是認するだろう。そして世界を知ることの喜びを知るだろう。それがあれば、その子は学習意欲のカタマリであることをやめようとはしない。

2015-09-09 18:27:57
shinshinohara @ShinShinohara

教育とは何だろう。難しい問いだが、もし私が答えるなら、そう答える。君の生まれたこの世界は驚きに満ちている。そして世界も君が生まれた奇跡に驚いている。自然と生命の不思議に共に目を瞠り、驚きの声を上げよう。子どもはきっと、自分の生を肯定し、この世界を肯定できるようになるだろう。

2015-09-09 18:28:49