First Love(中編)

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りえぷぅ @riem124blue

410 **「忠義はいつも傍にいてくれて、お父さんなんかより全然私のこと解ってくれてるよ!!」 父親「そんなん関係あるか!!おまえは俺の娘で、今は跡取りなんやで、勝手は許されへんねん!!」 **「勝手って…!!」 大倉「…座りぃ?」 彼が私の手を優しく引いた。

2015-08-19 00:44:02
りえぷぅ @riem124blue

411 促されるまま隣に座る。 大倉「僕は彼女と別れる気はありません。別れられません。一生守るて約束したんです。」 父親「そんなん今ここでキャンセルや。安心せぇ、幾田がその約束引き継ぐからな。」 大倉「キャンセルなんてする気ありません。俺が守らな意味ないんです!」

2015-08-19 23:07:19
りえぷぅ @riem124blue

412 父親「わからんヤツやなっ!!」 お父さんが目の前にあったグラスを床に叩きつけた。 バシャーンていう音と共に、砕けたグラスから飛び出した水が一面に広がった。 お父さんの顔は怒りに震え、真っ赤。 父親「恩を仇で返すってのは、こういうことやな…!」

2015-08-19 23:07:24
りえぷぅ @riem124blue

413 忠義がテーブルの下で、私の手をそっと握った。 父親「おまえ…光子と一緒に、すぐ出て行け!すぐや!幾田!」 幾田「はい。」 父親「分かるな?」 幾田「はい。」 お父さんは立ち上がって、お母さんを引きずるように連れて、部屋を出て行った。

2015-08-19 23:07:28
りえぷぅ @riem124blue

414 その時、お母さんの頬が赤く腫れてるのが見えた。 お母さん…! まさか、お父さんに…! 頭にパッとお兄ちゃんが出て行った時の顔が思い浮かんだ。 なんで私のことでお母さんが…。 お父さん…こわい…。 大倉「…大丈夫?」 さっき握られた手がギュッとされた。

2015-08-19 23:07:33
りえぷぅ @riem124blue

415 幾田「…お送りいたします…。」 幾田さんが部屋のドアを開けて私たちが出るのを待ってる。 そういえば荷物は幾田さんの車の中に置いたままだ…。 大倉が私の手を握ったまま立ち上がって、私もそれに続く。 会社の中なのに…幾田さんの前だというのに…繋いだ手を離さない彼。

2015-08-19 23:07:37
りえぷぅ @riem124blue

416 それは、車に乗ってからも変わらず。 乗り込む時に離した手をすぐ捕まえられて…。 幾田さんは気付いてるのかな? 気付かないフリしてるのかな? というか、お父さんはどうやって私たちのこと知ったのかな? まさか幾田さんが…? 勝手に疑っちゃダメだね…。

2015-08-19 23:07:41
りえぷぅ @riem124blue

417 家の前に車が停ると、幾田さんがドアを開けてくれる。 大倉に引かれて降りると、荷物は幾田さんが運んでくれた。 それが終わると静かに一礼して、帰って行った。 大倉「なーんか…何考えてるんか分からへん…ちょっと気味悪いわ…。」 確かに何を考えてるのか…。

2015-08-19 23:07:45
りえぷぅ @riem124blue

418 光子「忠義っ…!」 幾田さんが見えなくなったその時、玄関の方から光子さんが息子の名を呼んだ。 振り返ったら、私たちの前にゆっくり近付いてきた光子さん。 そっと両手を伸ばして、忠義と私の背中に手を回した。 光子「…ごめんなさいね…守ってあげられなくて…!」

2015-08-20 23:48:52
りえぷぅ @riem124blue

419 やっぱり…光子さんは解ってたんだ…。 そうだよね…いちばん近くで2人を見ていたのはお父さんでもお母さんでもない…光子さんだ…。 下を向いて泣き出した光子さん。 光子「私が…私がここで働かなかったら…2人は普通に出会って…普通の幸せに…なれたかもしれなかったのに…。」

2015-08-20 23:48:57
りえぷぅ @riem124blue

420 大倉「…そんなことあらへんよ…。どのみち相手が俺やったら、あの人は反対する…。せやから…泣かんといてや………おかん…。」 光子さんが最後の言葉にパッと顔を上げる。 なんか…私も泣けちゃう…。 忠義は私だけじゃなくて、光子さんも守りたいんだよね。

2015-08-20 23:49:08
りえぷぅ @riem124blue

421 そして、光子さんは忠義を…いや、忠義と私を守りたいと思ってくれていた。 大倉「なぁ…3人でここ出て行かへん…?」 **「えっ…?」 光子「なっ、何言ってるの!そんなこと…!」 大倉「俺大学辞めて働くから、何とかなる思うねん。な?そうしよ?」

2015-08-20 23:49:17
りえぷぅ @riem124blue

422 光子「なにっ…!もうすぐ卒業なのに…!」 大倉「それはそーやけど、もーここに住まれへんやん…大学も…。」 **「私が頼むから…!大学は…、」 大倉「あかんよ。もぉ、あの人に頼らへん…頼らずにおまえ守ったんねん…。」 彼の目はとてもしっかりしてて。

2015-08-20 23:49:32
りえぷぅ @riem124blue

423 強い意思を感じた。 大倉「早よ準備しよ!あの人らが帰ってくる前に…!」 その言葉を聞いて、2人は離れへ、私は自分の部屋に走った。 大切なものだけ…このキャリーバッグに入るだけ…そう思いながら急いで物を詰めていく。 あと少し…!ってとこで部屋のドアが開く音。

2015-08-20 23:49:40
りえぷぅ @riem124blue

424 **「忠義ごめん!あと少…」 母親「何してるの…?」 彼じゃない! パッと振り返り、真っ青な顔のお母さんの姿を捉える。 **「お、おかあさん…。」 母親「まさか…まさか…出て行かないわよね…?」 お母さんがゆっくり近付いてくる。 そして、両肩を掴まれる。

2015-08-20 23:49:48
りえぷぅ @riem124blue

425 母親「お母さん置いて…出て行ったりしないわよね…?ね?大丈夫よね?」 赤く腫れ上がった右頬が痛々しい。 その腫れたところを流れ落ちる涙が、胸をキュッと締め付ける。 母親「あなたまで…出て行かないわよね…?お母さん1人になんかしないわよね…?」

2015-08-22 22:34:00
りえぷぅ @riem124blue

426 お兄ちゃんが出て行く時に泣きわめいていたお母さんの顔を…まさか目の前で見ようとは…。 そうか…私が出て行ったら、この人は…1人になっちゃうのか…。 その時、開けっ放しのドアから、忠義の顔が見えた。 私たちを黙って見つめてる…。 泣きそうな顔…。

2015-08-22 22:34:05
りえぷぅ @riem124blue

427 お母さんが私の視線を辿って彼を見た。 母親「忠義くん…ごめんなさい!!私から…この子を奪わないで…お願い…!!」 泣き崩れて、そのまま土下座をするお母さん。 小さい声で、「ごめんなさい」と「お願いします」って交互で言ってる。

2015-08-22 22:34:09
りえぷぅ @riem124blue

428 そんなお母さんを見つめてから、私と目を合わせる。 **「忠義…ごめん…ごめんなさい…。」 この人を…置いて行けない…。 涙でそれ以上言葉が出てこなかった。 彼は黙ってそこから離れて行った…。 イヤだ…離れたくない…。 離れたくないよぉ………。

2015-08-22 22:34:14
りえぷぅ @riem124blue

429 泣き崩れたお母さんは、彼が去ってからもしばらくそのままだった。 私はとても複雑な気持ちで…お母さんに大丈夫だよ、って慰めてあげたい気持ちもあるけど、やっぱり彼と離れるのが辛くて、それができない。 未練がましく窓の外を見る。 振り返ってこちらを見た彼と目が合った。

2015-08-22 22:34:18
りえぷぅ @riem124blue

430 さっきと同じ泣きそうな顔。 横には大きな荷物。 しばらく見つめ合って、それから彼が手を耳元に当てた。 “電話する!” そうだよね…ここを出て行ったとしても、別に会えなくなるわけじゃない…。 私たちの気持ちは変わらない…。 がんばって笑って、うん、と頷いた。

2015-08-22 22:34:25
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