黄昏町(柊)五十三日目

柊 @hiiragi_r_t_d

埃を拭うと、そこには二人の男女。 陽気な笑顔を浮かべた、丸々と太った男性。そして彼に肩を抱かれて困ったように、だがとても嬉しそうに笑う女性。 二人の後ろには、この家が青空に照らされて輝いていた。 私はそっと写真立てを元の場所に戻し、ソファに深く座り直した。 24 #hollytk

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「パスタ、お待ちどうさま！って、お客さん勝手にロイヤルグロウ淹れたね？」 「ヨタカさんの分も淹れたので、勘弁して下さい」 「それじゃあ、遠慮なく。」 ヨタカさんはテーブルに一皿のパスタを置き、私の向かいにかけるとコーヒーを一口飲む。 25 #hollytk

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「お客さん、結構上手に淹れるねえ」 「ありがとうございます。…ヨタカさんはパスタ、食べないのですか」 「アタシは味見してるから大丈夫だ。おかわりもあるから気軽に言いな」 ヨタカさんは軽く笑う。その顔がどことなく先程までと違って見えるのは、気のせいだろうか？ 26 #hollytk

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まあいい。まずは目の前のパスタだ。 艷めく麺に、煌めくホワイトソース。 上がる湯気さえ輝いて見える。 「いただきます」 「召し上がれ」 27 #hollytk

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もちもちの麺に絡みつく、極上のホワイトソース。 口の中で風味が弾け、麺が踊る。 いつの間にか、皿は空になっていた。 私は一息ついて、ヨタカさんに皿を突き出す。 「……おかわり、頂けますか」 「よっしゃ！いい食いっぷりだなお客さん！」 28 #hollytk

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ヨタカさんは皿を受け取り、くぐもった鼻歌を歌いながら厨房へと駆けていった。 29 #hollytk

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「ご馳走様でした」 「お粗末さま。よく食べたねえ」 かんらかんらと笑うヨタカさんは、奥の扉を開ける。 「さ、そろそろ日が沈む。ベッドを使うといいよ」 扉の向こうは、広々とした寝室だった。 「それでは、遠慮なく」 私は躊躇なくふかふかのベッドに飛び込んだ。 31 #hollytk

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思えば、この時私はもう少し考えるべきだったのだ。 ずいぶん久しぶりの食事、それも極上の料理を堪能した直後にそのような注意力を求めるのも、いささか酷な話だが… 大きなベッド。それはいわゆるダブルベッド。 当然、二人で使う事を想定されて作られた物だ。 32 #hollytk

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「それじゃあ、アタシも寝ようかな」 ギシ、と音を鳴らし、ヨタカさんが私の隣に寝転がる。 「あ、私ソファで…」 「別にいいじゃん。それにもう、日が沈むよ？」 「あー……そうですね。って、わっ」 ベッドの端に逃げようとした私を、ヨタカさんの腕が掴んで引き戻す。 33 #hollytk

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「あの……これは流石に」 私はヨタカさんに頭を抱かれていた。人間の暖かさが頭を包み、背中を撫でる。頭に猪の顎が当たるザラザラとした感触と、顔に押し付けられる二つの柔らかさを感じながら私がもう一度抗議の声を上げようとした瞬間、日が沈みきったのだろう。 34 #hollytk

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私とヨタカさんは、至極あっさりと眠りに落ちた。 35 #hollytk

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──────── 【五十三日目】 【生存】 【魂+2】 【魂15/力13/探索4】 【異形】複口(力+2、探索+1)、長指(力+1、探索+2)、鬼腕(力+5)、竜尾(力+5)、火玉(火耐性、探索+1) 36 #hollytk

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[町]スーツ姿の猪は「情報屋」と名乗った。「アンタのこれまでの話を聞かせてほしい。お代にマトモな飯、食わせてやるからさ」《君が頷くならあたたかい食事を得る【魂+2】》 #黄昏町の怪物 shindanmaker.com/541547 #hollytk