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ベトナムの「ホーおじさん教」についてメモ。

ベトナムの「ホーおじさん教」関連の論文のメモ。モンゴルの話付き。
人文 ホーチミン ベトナム 宗教 ベトナム戦争
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☆今井昭夫「「ホーおじさん教」と戦争の記憶」(武内房司編『戦争・災害と近代東アジアの民衆宗教』有志舎、2014)

猫の泉 @nekonoizumi
ベトナムの「ホーおじさん教」に関する論文を読んだ。非常に面白い。 元々、統合の象徴としてホー・チ・ミンが掲げられたこともあり、ホー・チ・ミン崇拝が民間信仰やカオダイ教等の宗教で行われていたが、今世紀に入ると、さらに進んだ、ホー・チ・ミンを本尊とする宗教教団が出現し始めた。
猫の泉 @nekonoizumi
こうした教団出現の背景には、ベトナムで1990年代から「新宗教」が大挙して出現したことと、死者と交信でき、招魂・降筆を行う霊能者「外感」たちの存在があるという。2
猫の泉 @nekonoizumi
ベトナムの葬送では墓・遺骨の存在が極めて重要なものの、ベトナム戦争で大量の行方不明戦没者が存在し大きな社会問題となっている。そこでなんと、92年頃から一部の政府機関が外感たちを通じて、墓・遺骨の捜索を始め、97年には公に是認された。そのため、心霊への関心が高まり公然化した。3
猫の泉 @nekonoizumi
こうした新宗教の勃興、外感の活躍、ソ連崩壊後の共産党のホー・チ・ミン思想の推し出しと崇拝の高まりなどの流れが合流し、「ホーおじさん教」教団が複数出現したという。この論文では、そうしたいくつもある「ホーおじさん教」教団のうち、規模の大きい「平和廟」をとりあげている。4
猫の泉 @nekonoizumi
平和廟の経典は教祖が天から聞き取った降筆の詩らしいがかなり大量らしい。その教義では、ホー・チ・ミンは死後も心霊界で最高指導者となったとされ、そもそも、ホー・チ・ミンは玉仏かつ玉皇上帝でベトナム民族の始祖・貉龍君の生まれ変わりなのだという。また、かなりのベトナム中心史観で、5
猫の泉 @nekonoizumi
人類の起源がベトナムであり、そこから人類は世界に散らばったわけで、ベトナムは世界の長たる国であるとする。従来の中国とも関係するベトナム民族の歴史は捏造であり、ベトナム民族の歴史は輝かしき民族の建国と侵略者の闘争の歴史で、始祖・貉龍君は何度も指導者として生まれ変わってきたのだとか6
猫の泉 @nekonoizumi
さらに平和廟の特徴的な教義として、「悪霊」とは、昔ベトナムを侵略してきた敵の死霊であるという定義があり、国・民族及び個人に降りかかる災厄はその悪霊が原因であり、それを国内から駆逐しなければならないという。このように国粋色がかなり強く、戦死者たる烈士供養も重要な儀礼になっている。7
猫の泉 @nekonoizumi
「心霊革命」というのも唱導していて、ホー・チ・ミンは今、ベトナムと世界の神々の先頭に立っており、心霊革命を指導する立場にある。まず、それをベトナムから始めるため、邪教の淘汰や外来宗教信仰をやめ、悪霊を駆逐する国・民族の救済が必要であり、これであの世での民族独立も果たされるという8
猫の泉 @nekonoizumi
国粋色が強く、災厄をもたらす「悪霊」はベトナム侵略者の死霊というように、個人の厄払いと民族の厄払いが地続きという、特異な教義は教祖など教団の中心層の民族解放戦争の体験が色濃く反映されているのではないかという。これは平和廟の話だが、他の「ホーおじさん教」でも先鋭化が見られるとか。9
猫の泉 @nekonoizumi
読んだのは、今井昭夫「「ホーおじさん教」と戦争の記憶」(武内房司編『戦争・災害と近代東アジアの民衆宗教』有志舎、2014). 論文では教祖のライフ・ヒストリーとか信者への入信動機インタビュー等もあるので興味があったら読んでみてね!10 hanmoto.com/bd/ISBN978-4-9…
猫の泉 @nekonoizumi
ホーおじさん教の話も面白いのだけど、ベトナム政府自身が霊能者使って、墓と遺骨を探させたという話が興味深い。
猫の泉 @nekonoizumi
「ホーおじさん教」ほどではないけど、毛沢東信仰とかの話もあるし、(近)現代の「政治指導者」への宗教的信仰についての比較研究とかどっかでやってくれないかなあ。実態はどうかわからないけど、トルクメニスタンのニヤゾフとかベネズエラのチャベスとか、北朝鮮も関係するかな。

☆ショウン・マラーニー「戦死者とともに生きる―現代ベトナムにおける遺骨と凶事、そして収束する物語―」
☆今井昭夫「ベトナム戦争のコメモレーションに関する研究について」
『クアドランテ』第10号(2008)
http://www.tufs.ac.jp/common/fs/ifa/publication.html

猫の泉 @nekonoizumi
ショウン・キングスレイ・マラーニー「戦死者とともに生きる 現代ベトナムにおける遺骨と凶事、そして収束する物語」を読んだ。ベトナムにおける戦死者顕彰/供養、戦死者の範囲の定義の問題、それらとベトナムの葬送文化の問題、そして、戦死者の墓・遺骨捜索での霊能者の活躍について扱われている1
猫の泉 @nekonoizumi
霊能者の活躍というのは、ベトナムの葬送では墓・遺骨の存在(どこにあるかが分かること)が極めて重要であるのに、ベトナム戦争で大量の行方不明戦没者が発生し長年の社会問題となっていて、そのために死者と交信することができるという霊能者「外感」が捜索に活躍するようになったという話である。2
猫の泉 @nekonoizumi
92年から一部の政府機関が外感たちを通じて、墓・遺骨の捜索を始め、97年には公に是認された。2007年には「特別な能力を用いた、革命に殉じた者の遺骨探し」という政府公式式典で10人の外感、10年で1万5000以上の革命に殉じた者の墓を探し当てた功で表彰された。3
猫の泉 @nekonoizumi
ベトナムでは応用情報学工芸科学連合会・公安省刑事科学研究所など多数の機関が外感に関する科学的研究を積極的に行っている。霊能者たる外感になる経緯はいくつかのタイプがあるが、その中には「特別な能力」を持つ人々に対し、墓を特定するための訓練を科学者が施す場合もある。4
猫の泉 @nekonoizumi
元々、政府は迷信異端に弾圧を加える立場だったが、90年代以降変化し、このように、外感には公式に政府の強力な支援が与えられている。活動は政府に認可され、その科学的研究に政府資金も投入されている。これは外感の殉死者発見への貢献が殉死者顕彰という政府の思惑と一致するからであるという。5
猫の泉 @nekonoizumi
また、論文では外感が能力を得たとされる経緯の例などにも触れられている。霊能者以外では、ベトナムでの戦死者顕彰の歴史や、一例として、ある村での顕彰式典の様子を取り上げていたり、きちんと葬送をしないと死者があの世に行けず亡霊になるとされる葬送文化についても触れられていて興味深い。6
猫の泉 @nekonoizumi
今回読んだのは、ショウン・マラーニー「戦死者とともに生きる―現代ベトナムにおける遺骨と凶事、そして収束する物語―」&今井昭夫「ベトナム戦争のコメモレーションに関する研究について」『クアドランテ』第10号(2008)。PDFあり。7 tufs.ac.jp/common/fs/ifa/…
猫の泉 @nekonoizumi
ベトナムの宗教状況、とても面白いな。
猫の泉 @nekonoizumi
ちなみに、この2つの論文は昨日読んだ、今井昭夫「「ホーおじさん教」と戦争の記憶」の参考文献にあがっていたもの。

☆おまけ(モンゴル)

猫の泉 @nekonoizumi
「社会主義体制の崩壊後、急激な変化に晒されたモンゴル国で教線を急拡大していった福音派キリスト教。…」 ⇒滝澤克彦『越境する宗教 モンゴルの福音派 ポスト社会主義モンゴルにおける宗教復興と福音派キリスト教の台頭』新泉社bookportal.jp/product/035972…
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