◆5月某日 狭間と天雄 彼女の死について

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チョロ松 @_choro_m_

天雄】春の日差しがまだ残りかけ、夏の前準備が進む頃。近所の公園に改めて足を運べば親子連れの姿がちらほらと見える。平和そのものの陽気だと、木漏れ日のベンチに座りながら感じられた。

2015-10-03 13:43:49
狭間 駿 @c_yu_n

@TIS_lam 狭間】「……こんにちは、」 先に座っていたそのまま、ちら、と窺うように目を上げる。そのひとを見上げて、わずかに会釈するように挨拶する。背をかがめて、膝のあいだには両手で缶コーヒーをもっている。隣に彼が腰を下ろすのを、みるともなく横目で眺めてみる。

2015-10-03 13:57:11
狭間 駿 @c_yu_n

狭間】ちらちらと木漏れ日が揺れる。うららかな、穏やかな天気だ。雲も広がっているけれど、見える空は、清冽にとまではいわないが、すがすがしく蒼い。

2015-10-03 13:58:38
チョロ松 @_choro_m_

@c_yu_n 天雄】「こんにちは。良い天気ですね」 当たり障りの無い話題をふるのはまるで他人行儀だろうか。隣に座るも距離は近過ぎず、不自然に離れもしない。こちらを見てくる視線にはこちらもちらりと視線を向け、両手を足に乗せつつ指を絡めた。

2015-10-03 14:02:37
狭間 駿 @c_yu_n

@TIS_lam 狭間】「そうですね、いい天気…。…天雄さんコーヒーの匂いとかって、ダイジョブでしたっけ?」 受けて答え、ふと自分の手元に気付いて尋ねる。座った距離感に、おそらくはじめて会話をしたといえるときのことを思い出す。ずいぶん昔のようにも、つい最近のことにも感じられる。

2015-10-03 14:05:34
チョロ松 @_choro_m_

@c_yu_n 天雄】「大丈夫ですよ。これまでも色々と飲み食いしたじゃないですか」 改めて気遣う気持ちに感謝しつつ、缶珈琲の香ばしい風味を嗅ぐ。彼とは食事も何度かしているが、その中で匂いに過敏な面を見せたことがあったろうかと記憶を辿る。つい先日だって食事をしたばかりなのに。

2015-10-03 14:11:35
狭間 駿 @c_yu_n

@TIS_lam 狭間】「ココアとか、抹茶オレとか…は、まろやかだから大丈夫だったりすんのかな、って思って。ちょっと今ふと気になったんです…ならこんなん飲んでんなよってカンジですけど、」 肩を竦めるように苦笑する。買ったときには気ィ回んなくて、と言いたし、 「…いい天気ですねぇ」

2015-10-03 14:15:39
狭間 駿 @c_yu_n

@TIS_lam 狭間】正面上方、建物たちの上にみえる空に目を向けて、しみじみと言い足す。

2015-10-03 14:16:23
狭間 駿 @c_yu_n

狭間】「………、」 コーヒーをひとくち啜る。 まだ、この相手を呼び出した用件の、本題には触れていかない。話すつもりで来たけれど、実際にちゃんと話すかどうかも、微妙にまだ、考えているところがある。会話の中で、相手の反応を見て決めよう、と、やはりそう思っている部分もある。

2015-10-03 14:19:08
チョロ松 @_choro_m_

@c_yu_n 天雄】「珈琲の香り、好きですよ」 苦笑しているのが見なくとも伝わってくる。声の調子はいつもより重たげな、今の梅雨に入りかけている時期にぴったりな気がする。珈琲のことをそこまで重大視してないのは判っているが、ではなんだろうか。本当に話したいことだろうか。

2015-10-03 14:25:19
狭間 駿 @c_yu_n

@TIS_lam 狭間】「ならよかった、」 へへ、と笑う。やはりこちらも、隣の表情は見ずに、声だけ聞いたまま。

2015-10-03 14:27:20
狭間 駿 @c_yu_n

@TIS_lam 狭間】それから、しばしの間を置いて、 「……今日は、まだ、こないだのお詫び…抹茶オレ、ないですけど。それはまた今度、」 そう声をかける。目の前でぱらぱらと、遊具で遊ぶ他人の姿をみながら。

2015-10-03 14:25:07
チョロ松 @_choro_m_

@c_yu_n 天雄】「また改めて、頂戴しますよ」 緩慢に頷いて合意する。この前は少年にまんまとはめられてしまった。もののついでに、というよりも、きちんと場を設ける方が良いだろう。自分としても、相手にしても。

2015-10-03 14:27:57
狭間 駿 @c_yu_n

@TIS_lam 狭間】「ぜひ、ね」 その機会を貰えていることを、実際に、とてもありがたく思う。こころもち強く、ぜひ、と発音する。それからまた、数拍の間をおいて、 「……あの子、覚えてます?」 唐突にぽつんと、そう言う。むろんそれでは、『どの子』のことなのか、分からないだろうが。

2015-10-03 14:30:37
チョロ松 @_choro_m_

@c_yu_n 天雄】是非、の声に実感が籠っている。そのつもりだと再び頷く。一通りの会話を終わらせて、ここからどう繋がるかと様子を窺う。少年との間で会話は必要不可欠ではなく、沈黙も居心地良いものだ。待とうと思えば飽きるまで待てるだろうと思った。突然の問い。 「……どの子、ですか」

2015-10-03 14:36:12
チョロ松 @_choro_m_

@c_yu_n 天雄】思わず横を、少年を向いて尋ねてしまった。面喰らうほどでもないが唐突すぎて、すぐには出てこなかった。少年由来の年下である知り合いはいるが、どれも少年が「あの子」と呼ぶような人物に思い至らない。忘れているのだろうかと、首を傾げる。

2015-10-03 14:38:24
狭間 駿 @c_yu_n

@TIS_lam 狭間】「前に、会ったって、言ってた、」 一度ことばを切って、顔をすこし相手の方向に向ける。完全には見ない。ただ目線は顔の傾きよりももっと相手に向け、そちらから視線を向けられて目は合うだろう。ちょっと笑う。 「女の子。金髪の。光と影の。」 短くキーワードを出す。

2015-10-03 14:40:04
狭間 駿 @c_yu_n

狭間】彼女の名前を、たぶん彼は、知らなかったんじゃないかな、と思う。いや、知っているかもしれないけれど、自分からは教えていない。彼女は、教えただろうか。隣の相手と彼女とが、どういう関わりだったのか、たぶん自分は深くは知らない。突っ込んでは聞かなかった。

2015-10-03 14:41:51
狭間 駿 @c_yu_n

@TIS_lam 狭間】この単語で分かるかな、というように、どこかすこし笑いを滲ませるような気持ちの目で、横目で相手を見ている。

2015-10-03 14:43:44
チョロ松 @_choro_m_

@c_yu_n 天雄】「……ああ、あの」 ヒントを出してもらって漸く思い出した。三人で会ったことはないけれど、確かに彼女も少年由来の人物であるのに間違いない。少年に少し似ていて、数回しか会ってないけれど、印象的な。変な匂いにつけ回されたのも同時に思い出す。 「彼女が、なにか」

2015-10-03 14:43:31
チョロ松 @_choro_m_

天雄】特に深い関係でもなかった。切りつけられて、チョコレートに少し浮かれたいたか、それでいて変な匂いも纏わせて。表情も雰囲気もよく変わる子だった。片手で足りる程度しか顔も見ていないし、そもそも名前も知らない。最近はすっかり気配も匂いも感じなくなっていた。

2015-10-03 14:46:01
狭間 駿 @c_yu_n

@TIS_lam 狭間】「…あの子のこと、どう思ってました?」 どうもなにも、と面食らう問いだろうが、あまり構わず訊く。過去形で聞く。僅かな笑みのような、半笑いのような、けれど泣くものではない、自分でもよくわからない表情が声に滲んでいるかもしれない。どう思っていたのかを知りたい。

2015-10-03 14:47:18
チョロ松 @_choro_m_

@c_yu_n 天雄】話がある、とは彼女のことかとほぼ確信する。問いには少々の違和感を覚えるも、その声と表情はうまく作れずに歪んでいる。視線を横から正面に戻した。残った記憶を掘り起こす。 「…不思議な子、でした。自分が傷つくのを厭わないようで、なのに大事なものがあるようで…」

2015-10-03 14:51:35
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