◆5月某日 狭間と天雄 彼女の死について

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狭間 駿 @c_yu_n

@TIS_lam 狭間】「………、」 目を正面に戻して、黙って背を丸めて聞いている。ことばに、続きがあるかをしずかに、待つ。目の前には住宅地の、休日の公園ののどかさ。

2015-10-03 14:54:42
チョロ松 @_choro_m_

@c_yu_n 天雄】「会う度にいろんな表情を見せる。君にちょっと似ていると思ったこともありましたね、どこが、とは言葉に表すのが難しいですが」 率直に感想を述べた。少年が欲しい答えは判らないが、自分なりに正直な言葉を並べた。横目でそっと、様子を盗み見る。

2015-10-03 14:54:20
狭間 駿 @c_yu_n

@TIS_lam 狭間】「…ああ、」 ちょっと似ている、という言葉に、頬の内側にふくむように笑う。 「ですね、」 うん、と頷く。べつにそれ以上の詳細を求めるわけでも拒むわけでもなく。 そうしてちょっとの間、ただ黙る。遊ぶ子どもの声がする。

2015-10-03 14:56:46
チョロ松 @_choro_m_

@c_yu_n 天雄】似ている、という部分に同意が返ってきたことにゆっくり瞬きをした。思うところがあるようで、だったらそれはどんなところかと、尋ねてみたい気持ちもある。だが今はそうじゃないなと、暫しの沈黙が物語る。この木漏れ日だけ少し遠くにあるような気がした。

2015-10-03 15:00:43
狭間 駿 @c_yu_n

@TIS_lam 狭間】「……。」 しばらく、黙っている。自分でも、タイミングを計っているのかどうかも、よく定かではない。ただ、今の沈黙は、それなりに心地いいとは、自分は感じている。…話題を始めたのだから、きちんと結をださなくては、相手は気持ち悪いだろう。そうは思うが、まだ黙る。

2015-10-03 15:05:27
チョロ松 @_choro_m_

@c_yu_n 天雄】風の流れを待つかのような沈黙が降りてきた。今聞かせた彼女への印象が少年にどう働きかけたのか。聞いた余韻を噛み締めているのか、話題を切り出せずに居るのだろう。無理に聞き出すつもりもない。こうして並んでベンチに座っていると、春先を思い出す。

2015-10-03 15:12:59
狭間 駿 @c_yu_n

狭間】ちち、と、上の方から雀かなにかの声が降るのを聞く。目を上げる。すうい、と、高いところをつばめが飛ぶ。

2015-10-03 15:13:47
狭間 駿 @c_yu_n

@TIS_lam 狭間】「……アナタは、ヒトが死ぬとこは、いっぱい、見てきたんですっけ」 ぽつん、と、関係ない話題であるかのように、ふと思いついたように訊く。こちらにも事象としてのそれは分かっているはずなのに、確定形では聞かない。ぼんやりしたような形で、あいまいに訊く。

2015-10-03 15:15:56
チョロ松 @_choro_m_

@c_yu_n 天雄】「…殺してばかり、きましたから」 話題の流れには一貫性があるのかと勘繰ってしまう。それでも安直に結びつけるのは軽率だと諌めては、疑問のような呟きを肯定した。見てきた死の殆どは自分の手によるもので、その他の理由では少数だ。異能に殺された人も見たことはあるが。

2015-10-03 15:19:15
チョロ松 @_choro_m_

天雄】彼女は、死んだのだろうか。 梅雨の雲間、陽光がちらちらと木漏れ日の縁をつつく。

2015-10-03 15:20:50
狭間 駿 @c_yu_n

@TIS_lam 狭間】「知ったヒトが、死んだことは…」 言いかけて、彼の最初の殺人が、その知人の青年だったと聞いたことを思い出す。思い出すというか、覚えているので言葉がただしくないかなと思っていちど噤む。 「…あったんでしたっけ。ええと、…そうだな…」 ちらと横目を向けて戻し、

2015-10-03 15:23:19
狭間 駿 @c_yu_n

@TIS_lam 狭間】(あなたが殺したわけじゃない、ひとの死を、…、…ううん) それを経験したことはありますか、と、訊こうとして、やめる。そしてもう、ここまで言ったら、この相手だと察されているかな、とも思う。光景はのどかで、自分の方も、それなりに落ち着いた気持ちではある。黙る。

2015-10-03 15:25:44
狭間 駿 @c_yu_n

@TIS_lam 狭間】落ちて降ってくる木漏れ日のゆらめきやちらつきを感じながら、すこし目を細めて、目の前にひろがる他愛ない風景をながめて、ただ黙る。

2015-10-03 15:27:05
チョロ松 @_choro_m_

@c_yu_n 天雄】「……大学の同級生に、バイク事故で亡くなった人が居ます。専攻も違いますし、顔を合わせるのは年に数回程度で。活発な人でした。いつも楽しそうで」 自分とは生きている世界が違う人だった。異能という言葉も知らずに死んだだろう。 「その時は……、」

2015-10-03 15:30:45
狭間 駿 @c_yu_n

@TIS_lam 狭間】「……」 知らなかったことだ。ちょっと目をまたたくような気持ちで、こころもち顔を上げて、やはり黙って聞く。

2015-10-03 15:31:52
チョロ松 @_choro_m_

@c_yu_n 天雄】最近の話ではないので、思い出すようにゆっくりと言葉を紡いだ。語尾が少しだけ吐息に滲んだ。 「その時は、悲しんだとも無関心とも違いました。親しかったわけでもなく。ただ友人はずっと泣いてましたし、悲しみでその場が満ちているのが自分には届かなくて、」

2015-10-03 15:33:21
チョロ松 @_choro_m_

@c_yu_n 天雄】「僕は、もう彼の笑顔が見れないのか、と。彼の笑顔で笑う人も居なくなるのかと、ただそう思ってました」

2015-10-03 15:34:19
狭間 駿 @c_yu_n

@TIS_lam 狭間】「………。」 それは話を終わる、完了した過去の過去形なのか、それともまだ続く過去形なのか、漠然と考えながら、まだ黙っている。ちらちらと陽射しが降る。

2015-10-03 15:36:59
チョロ松 @_choro_m_

@c_yu_n 天雄】口を閉じて深呼吸する。これ以上は続かない。ただの昔話を語っただけのようで、少年にとっては「だから?」と言いたくなるような話だったかもしれない。だからと言って、どうということもないが。

2015-10-03 15:41:18
チョロ松 @_choro_m_

天雄】遠くを見つめる。見詰めればそこに、同級生の通夜が映し出される気がした。知人が、教授が、見慣れないスーツ姿に身を包む。悲しみと涙と焼香の匂い。木魚と夜の虫の声。棺の中の同級生からは、生前の匂いの断片だけが匂っていた。

2015-10-03 15:38:21
狭間 駿 @c_yu_n

狭間】彼の語った感覚に、近いかもしれない覚えがあって、自分もやはり黙る。過去の感慨に自分もふける。今回の話題とは別で、だいぶ昔の話。むかしの同級生。早すぎる葬儀だった。病死で、女子だった。やっぱりあまり仲が良かったわけではなくて、ただ、何かの折に聞いた笑い声だけまだ、覚えている。

2015-10-03 15:42:31
狭間 駿 @c_yu_n

@TIS_lam 狭間】言葉が終わっている、と分かるだけの沈黙を聞いてから、「…そっか、」とだけ呟く。もとから静かな今日の時間が、よりいっそう、どこか遠くの静かさにたゆたっている気がする。そしてまた、長い沈黙。指先にぶらさげている珈琲の、缶の中身は空になっている。

2015-10-03 15:44:42
チョロ松 @_choro_m_

天雄】彼は言うだろうか。言わなければ、彼女はシュレディンガーの猫としてあり続けることも可能だけれど。もしも言葉にされたなら、自分は悲しむだろうか。人の死に涙することもできようか。それほど彼女を知っていないが、知らないわけでもないのだ。

2015-10-03 15:43:04
チョロ松 @_choro_m_

@c_yu_n 天雄】囁くような声には返事も必要ないだろう。話しの終わりを納得してもらえば自分には良い。視線の先にはもう通夜は無く、遠い笑い声と笑顔を零す子ども達が飛び跳ねている。屈託の無い、あの笑顔は、いつだって唐突に消えていくのだ。指の間から零れ落ちて行く。 「…狭間君」

2015-10-03 15:47:37
狭間 駿 @c_yu_n

@TIS_lam 狭間】「……、」 呼ばれて、横目だけ向ける。目が合うかどうかは、その瞬間、わからないなとふと考える。けれどすくなくとも、相手の横顔を見る。

2015-10-03 15:48:55