近侍部屋当直日誌VI
長谷「これがお前の今日の衣装だ」 みつ「出かけるって今? もう?? まだ夜中じゃないよ???」 長谷「背中がまだ濡れているぞ。きちんと拭け。風邪を引く」 みつ「ねえおとーさ」 長谷「ふむ。……紅と紺と藤色、どれがいい」 みつ「いつもの浴衣と違うの?」 長谷「ああ違う」
2015-10-04 18:05:37長谷「まずいな、裸でくっつく感触を楽しんでいたらこんな時間だ。こっちへ来い、着つけてやる」 みつ「本当に出かけるの??」 長谷「言っただろう、新しい刀を見つけよとの主命を果たした褒美に、お前と21世紀あたりへ遊びに行っても良いとの許可をいただいたんだ」 みつ「へうう!」
2015-10-04 18:09:23長谷「……できた」 みつ「男の子用の浴衣だよね?」 長谷「一瞬女児用のものを着せて連れ歩こうとしたことがなぜ分かった」 みつ「……」 長谷「ほら、行くぞ」 みつ「はせべくんもいつも寝るときと違うね?」 長谷「デートだからな」 みつ「デート!」 長谷「ああ。夏……秋祭りデートだ」
2015-10-04 18:34:20みつ「…………ここ」 長谷「大昔の町だ」 みつ「………………こわい」 長谷「おい、手を離すな。迷子にはさせんぞ」 みつ「……この時代、はせべくんはいたの?」 長谷「大切に保管されていた。……そう考えると不思議なものだな。出陣先の時代にも、今この時代にも、俺はいたのか」
2015-10-04 18:57:37みつ「く、暗いし、」 長谷「夜だからな」 みつ「なんかきこえるっ」 長谷「囃子だ。祭りだといったろう」 みつ「な、なんかこわい……ぐすっ」 長谷「しがみつくな、歩けん」 みつ「だって、……だって、……ひっ」 長谷「?」 みつ「だ、誰か来る、」 長谷「近所の人間だろうが」
2015-10-04 18:58:43みつ「やだ、……やだ、こわい……こわいよ、」 長谷「そんなにか。……ああ、……お前今まで、」 みつ「ぐすっ……う、……やだ、」 長谷「……帰るか?」 みつ「う、……うう……か、帰りたい、」 長谷「……」 みつ「お外こわい、……」 長谷「…………ふー……。早く泣きやめ(ぽんぽん)」
2015-10-04 19:01:53みつ「ひっく、……おへやに帰ろ? ね?? ぐすっ」 長谷「怖いなら怖くなくなるまで泣け」 みつ「なんで、なんでっ、そんなのかっこわるいよ、デートでちょー泣いてるの。やだよ。ね、帰ろうよ、ね?」 長谷「お前との初めての外デートなんだ。途中で泣いて帰すなどできるか。ほら泣け、」
2015-10-04 19:06:14みつ「……」 長谷「泣かんのか」 みつ「泣けっていわれたら……涙ひっこんだ……」 長谷「ハッ」 みつ「う、うう」 長谷「手のかかる子どもを何ヵ月育ててきたと思っている。……行くぞ」 みつ「怖いからゆっくり! ゆっくり歩いて!!」 長谷「はいはいお姫さま。手を離さないでくださいね」
2015-10-04 19:09:11長谷「まずい、隠れろ。正面からこの時代の検非違使(おまわりさん)が来る」 みつ「倒す? 倒す??」 長谷「奴らには勝てん。回り道をして祭りへ向かう」 みつ「っていうかなんで逃げるの?」 長谷「……」 みつ「ねえ??」 長谷「…………いい子だ(ちゅ)」 みつ「ごまかしたーっ!!!」
2015-10-04 19:12:20みつ「音大きくなってきた……」(ぎゅぅ) 長谷「あれは太鼓と笛だ」 みつ「ぴひょーーーっていうの、お庭で聞いたことあるかも」 長谷「笛だな。今剣あたりが吹いていた気がしなくもない」 みつ「ひとの声だ……めっちゃひといる……」(ぎゅうぅぅぅぅ)」 長谷「……怖くなくなるまで待つか」
2015-10-04 19:20:57みつ「……ひと、いっぱい来るね」 長谷「小さい祭りを選んだつもりなんだがな」 みつ「みんな階段のぼってく……」 長谷「祭りはあっちでやっているんだ」 みつ「……楽しい?」 長谷「ああ、おそらくな」 みつ「……」 長谷「少なくとも俺はお前といる」 みつ「……行く」
2015-10-04 19:24:57みつ「おとーさん歳だね? おいてっちゃうよ??」 長谷「……二段以上先をのぼるな」 みつ「えー……っていうか手放してくれないと階段さきいけないー。そんなにゆっくり上ることなくない?」 長谷「二段下を上るのが階段でのレディの正式なエスコートなんだ」 みつ「えすこ??」 長谷「……」
2015-10-04 19:27:49長谷「(……やはり浴衣はくるぶしのためにあるといっても過言ではない装束だな。俺の仮説は正しかった。しかし今までなにか物足りなかったのは部屋の中だったからだ。活発に歩き回ってこそ、子どもの細い脚とそのくるぶしのすばらしさは際立つんだ。特に階段。裾から覗くアキレス腱の伸び方がなお)」
2015-10-04 19:29:15みつ「……階段の上、めっちゃひといる……。灯りとか……。階段ってすごいね。上るの楽しかったし!!」 長谷「(本丸には階段はなかったな……)」 みつ「ねえねえ、あの建物じゃないけど建物みたいなのなに?」 長谷「出店だ。……あー、店だ」 みつ「お買い物するとこ?」 長谷「そうだ」
2015-10-04 19:35:46長谷「まずは挨拶に行く」 みつ「えう?」 長谷「その後店を見よう。人が多いからはぐれるなよ」 みつ「手ぎゅっ」 長谷「それでいい」 みつ「(笑った……!!)」 長谷「まずい隠れろ検非違使がいる」 みつ「……」
2015-10-04 19:36:36長谷「いいか。二礼二拍手でご挨拶だ。最後に一礼」 みつ「あいさつって、おかえりなさいのちゅーとか??」 長谷「……。……こんばんはお邪魔しますくらいでいい」 みつ「ちゅーは?」 長谷「俺以外にする必要はない。ほら、鈴、鳴らしてみろ」 みつ「ぶらーん」 長谷「ぶら下がるな。揺らせ」
2015-10-04 19:51:43みつ「……はせべくんちょー長いことお祈りしてたね??」 長谷「早々に粗相をした詫びもしていたからな。……まあ、断りを入れたんだ、楽しませてもらってこよう」 みつ「お店?」 長谷「ああ、なにが食べたい」 みつ「お店見えないー」 長谷「ほら、肩車でいいか」 みつ「!!」
2015-10-04 19:56:23みつ「……あのね、おとーさんの頭ぎゅーってしてると落ち着く……」 長谷「しかし話しにくいな。……何が食べたい」 みつ「見たことないのばっかでわかんない……いいにおいだけど……」 長谷「……分かった。全部食べるぞ」 みつ「えええ」 長谷「お前にいろんなものを味わわせたいんだ」
2015-10-04 19:59:16長谷「ふー……こんなものか。人の少ない場所で夕飯だ」 みつ「……、」 長谷「どうした、固まって。肩から落ちそうなのか?」 みつ「……ちが、……えっと、下ろして」 長谷「迷子になるだろう」 みつ「うう……」 長谷「分かった分かった。食料を半分持てるか。そうすれば手を繋げる」
2015-10-04 20:21:56みつ「手……」 長谷「どうした、顔が赤いぞ。人酔いしたか? 風邪の様子はなかったが……。ふむ。遠足前に熱を出す子どもというのはよくいるものだな。それか?」 みつ「ち、ちが……」 長谷「調子が悪いのか?」 みつ「ちがうの、……ちが、……くて……はせべくんのこと好きだなって思ったの」
2015-10-04 20:25:06みつ「僕のこと見上げてにって笑って、そのとき、ぼくははせべくんのことが好きなんだって思ったんだ」 長谷「何を今さら……愛まで散々囁き交わしておきながら……」 みつ「でもね、もしもはせべくんが、僕を使ったり、部屋でお世話したりしなかったとしても好きって思ったのは初めてだったんだよ」
2015-10-04 20:28:03みつ「好きだなあって思ったら、なんか恥ずかしくなっちゃって、……顔、また笑ったとこ見たいのに、うまく見られなくて……手とか……」 長谷「……。…………ああ、……ははっ、……」 みつ「なんで笑うの!!」 長谷「それは恋だ、光忠。俺たちはやっと同じところへ来たんだな」
2015-10-04 20:29:26みつ「こい……」 長谷「ああ、まごうことなき恋だ。恋で、愛だ。お前は恋を知ったんだ、光忠」 みつ「うう、笑うの反則だよ……まないたの上のこい……」 長谷「料理されたいのか?」 みつ「う、ううう」 長谷「冗談だ。今夜は祭りデートだからな」 みつ「デート……」 長谷「ああ、楽しむぞ」
2015-10-04 20:32:34長谷「それで、手は繋いでくれるのか、お姫さま」 みつ「ゆ、ゆるす……」 長谷「それは重畳。他に何か欲しいものは?」 みつ「……」 長谷「先にこれを食べた方が遊べるか。……ん」 みつ「あの赤くてきれーなの、なあに?」 長谷「林檎飴だな。忘れていた」 みつ「……あれ」
2015-10-04 20:35:43