東大話法の起源と「言霊」「言騙」の戦い

戦後日本では、詭弁を弄する東大話法は不思議でもなんでもない。しかし明治大正以前の日本では、詭弁がひどく嫌われていた。戦後日本でなぜ東大話法が市民権を得てしまったのか。その起源を考えてみた。
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shinshinohara @ShinShinohara

最近、「東大話法の起源」を考えている。東大話法とは、安冨歩氏が著作で指摘した、東大出身者が弄することの多い詭弁術。しかし戦前の日本人は詭弁を三百代言と呼んで、ひどく軽侮していたはず。なのになぜ、日本の英知が集まるはずのよりによって東大で、東大話法が発達したのだろうか?

2015-10-09 18:49:24
shinshinohara @ShinShinohara

東大話法とは異なるが、東大話法を生むきっかけになったと思われるのは、大本営発表。撤退を「転進」と呼び変えるなど、戦意喪失を恐れるあまり、現実を直視することから逃避するという顕著な特徴が、戦時中に強く現れた。「目的のためには言葉を虚飾しても構わない」という変なことが起きた。

2015-10-09 18:52:04
shinshinohara @ShinShinohara

東大話法が育まれ、成長させたのは戦後のGHQ支配だろう。敗戦を終戦と言い換えたり、アメリカが日本を占領しているという悪いイメージが持たれないように徹底的に情報を隠すとともに、言葉の言いかえを進めた。表現を柔らかくするのは、戦中の大本営発表で磨き上げた技術。

2015-10-09 18:54:09
shinshinohara @ShinShinohara

憲法でも厄介なことが起きた。憲法がアメリカから押し付けられた、という事実は、比較的最近まで公にされていなかった話。政府は慎重に、その事実を隠してきた。 日本人自身が進んで選び取った憲法。 そのストーリーを堅持しつつ、アメリカの命令に従うという矛盾が、東大話法を育んだ。

2015-10-09 18:56:42
shinshinohara @ShinShinohara

東大話法は「うそをつき始めたらうそをつき続けなければならない羽目になる」という嘘の構造で育まれた技術だと言ってよい。東大話法が産声を上げる羽目になったのはおそらく、今回の安保法案でもキーワードになっていた、砂川判決。

2015-10-09 18:59:13
shinshinohara @ShinShinohara

砂川判決についてはamazon.co.jp/%E6%97%A5%E6%9…に詳しいのでそちらを見ていただきたいが、アメリカからの要請で途中をすっ飛ばしていきなり最高裁にまで持っていくという、異常な判決だった。このときの「屁理屈」が東大話法を決定づけることになった。

2015-10-09 19:01:08
shinshinohara @ShinShinohara

「日本人が自ら選んだ」と当時信じられていた憲法は、明確に軍隊を否定しており、当然自衛隊のような存在を禁止していると多くの国民は理解していた。しかし「事情が変わった」アメリカは、自分が押し付けた憲法とはいえ、軍隊を日本に備えてもらう必要に迫られていた。

2015-10-09 19:02:47
shinshinohara @ShinShinohara

そこで、のちに憲法学の権威と呼ばれる人物が屁理屈を編み出した。憲法では自衛権を否定していない、だから自衛隊を設立してもよい、と。「日本人が自ら選んだ憲法」というストーリーを損なわず、アメリカからの強い要請に応えるという矛盾に回答をだすための、苦肉の策だった。

2015-10-09 19:05:26
shinshinohara @ShinShinohara

砂川判決が利用した詭弁は、その後、ウソにうそを塗り固める必要に迫られた。日本は日米地位協定によって、今も事実上占領されており、逆らうことができない。しかし自立した国だという美しいストーリーは損ないたくない。だけどアメリカの命令には従わなければならない。

2015-10-09 19:07:32
shinshinohara @ShinShinohara

「日本は独立国」というストーリーと、アメリカの命令には従わねばならない日占領国という現実との矛盾。この矛盾を解消する便法、方便として、東大話法は育まれた。おそらく東大話法を最初に使った人たちは、「いつかアメリカから独立するまで」という期限付きの詭弁だと自覚していたはず。

2015-10-09 19:09:27
shinshinohara @ShinShinohara

しかし戦後日本では深刻なことが起きた。東大話法を駆使する人間は出世を約束されたのだ。日本は独立国であるという美しいストーリーを損なわずにアメリカの命令に従う詭弁を弄すれば、覚えめでたく出世できる。国のトップである東大出身者が、その構造に気が付くのは早かった。

2015-10-09 19:11:27
shinshinohara @ShinShinohara

もちろん東大にも、詭弁を良しとせずという人間がたくさんいる。しかしそういう人は大した出世ができない。東大話法と言う詭弁を平気の平左で口にできる人間が出世し、国の枢要な地位を占めるようになると、何のために詭弁を始めざるを得なかったのかの理由を忘れ、出世を目的とし、詭弁を弄した。

2015-10-09 19:13:40
shinshinohara @ShinShinohara

東大話法と言う詭弁は、嘘で塗り固めた大本営発表が産み、アメリカに支配される構造の中で、詭弁を弄するものが出世するという日本政治・官僚構造が、育むことになったのだろう。この構造を破壊できない限り、日本人は「ことば」を取り戻すことができないのかもしれない。

2015-10-09 19:15:38
shinshinohara @ShinShinohara

日本は「言霊(ことだま)の幸交う国」と呼ばれていた。しかし日本の枢要な位置を占める人が発する東大話法は「言騙」、騙すための言葉と呼んだ方がよい。「言騙の跋扈する国」とでも呼んだ方がよかろう。

2015-10-09 19:18:16
shinshinohara @ShinShinohara

しかしあまり悲観ばかりしても仕方ない。東大話法はバブルが崩壊するまで、日本を完全に支配していたのだが、その構造が崩れ始めているのも事実。きっかけはカレル・ヴァン・ウォルフレンによる「説明責任(アカウンタビリティー)」の指摘だろう。

2015-10-09 19:19:47
shinshinohara @ShinShinohara

ウォルフレンは「日本権力構造の謎」「人間を幸福にしない日本と言うシステム」によって、日本の支配構造をかなりの部分まで解明した。そして東大話法によって民意が捻じ曲げられる奇天烈を打破するため、説明責任を求めるように提案した。

2015-10-09 19:21:00
shinshinohara @ShinShinohara

ちょうどそんな折、薬害エイズ事件が起きた。当時の厚生省は当初、東大話法的詭弁で事態をごまかそうとした。しかし厚生省を囲んだ声は、官僚や政治家たちの胸に強く響いた。「もうごまかすのは嫌だ」。日本の中央にいた人たちが、東大話法の欺瞞に我慢しきれなくなってきた。

2015-10-09 19:23:31
shinshinohara @ShinShinohara

説明責任のキーワードは、東大話法を弱体化させることに成功した。誤魔化しを続けず、まっすぐに向き合おう。「朝まで生テレビ」の田原総一朗氏が、手法に賛否はあれ、政治家から本音を引き出すことに成功したのも、東大話法を破壊することに寄与した。

2015-10-09 19:25:22
shinshinohara @ShinShinohara

東大話法は、民主党が政権を奪取しようかという頃に最も弱体化していた。詭弁を弄さず、素直な言葉を使うようにしよう。事実をごまかさず、現実を直視しよう。東大話法を嫌う気持ちは、民主党に期待する気持ちへと直結していた。

2015-10-09 19:30:38
shinshinohara @ShinShinohara

しかし不幸なことに、民主党は政権運営の能力が非常に低かった。初めてだから仕方がない面があるにしろ、国民の失望は深かった。これと同時に、正直ベースであっても実行力がない民主党より、ウソ・ごまかしがあっても政権を担ってきた実績のある自民党に戻した方がよいのでは?と風が変わった。

2015-10-09 19:32:23
shinshinohara @ShinShinohara

そして安倍政権は見事に東大話法を復活させた。どれだけ詭弁を弄しても、「決められる政治」であれば容認する、という気分になっていた国民。その波を巧みに生かし、東大話法を駆使して既成事実をたくさん作ってきた。副産物として、詭弁を弄するネトウヨも元気にした。

2015-10-09 19:34:10
shinshinohara @ShinShinohara

日本は東大話法が復活し「言騙の跋扈する国」に逆戻りした。もう望みは絶たれたのか?もう日本は「言霊の幸買う国」に戻ることはできないのか?そうあきらめムードが広がってきたときに、転機が起きた。罨法法案の是非を問う場で憲法学者3人が「違憲だ」と断じたのだ。

2015-10-09 19:36:16
shinshinohara @ShinShinohara

大変興味深いことに、憲法学者の多くは東大話法を脱し、素直な言葉で語ることを望んでいた。改憲議論が盛んになってきていたのもあるのだろう。もうウソ・ごまかしは嫌だ。ごまかすくらいならきちんと改憲した方がよい。真の立憲主義に基づきたいと願う人が増えていたのだ。

2015-10-09 19:38:09
shinshinohara @ShinShinohara

ここから「言霊」の逆襲が始まる。安保法案をきっかけに盛り上がった議論は、違憲か合憲か、国を守りたいのかそうでないのか、という表面上の議論のほかに、その背景には「言霊」と「言騙」の戦いが繰り広げられてきた、とも言えよう。

2015-10-09 19:40:12
shinshinohara @ShinShinohara

ここで「言霊」派に必要なのは、なぜ日本人は「言騙」派にふらつき、支持してしまったのか?という現実を見据えることだ。その理由ははっきりしている。金だ。アベノミクスは金をばらまくと約束してくれた。改革改革で疲れた日本人は、「ちょっと休憩させてくれ」と願っていた。

2015-10-09 19:42:12