「響け!ユーフォニアム」キャラの生理表現に見る新しい芝居の作り方

「響け!ユーフォニアム」の映像表現に関してのメ之助さん@japanoffの感想ツイートをまとめさせていただきました。 この作品について改めて考える/楽しむきっかけになればと思います。 前回語り分のまとめはこちら 「響け!ユーフォニアム」主人公・久美子の心情描写に寄り添う京アニの本気 続きを読む
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さかいこうすけ @Lens_eye

"黄前久美子(cv黄前久美子)" すこくわかる。

2015-10-22 07:55:12
メ之助 @japanoff

インタビュー記事を未読の上、声に特化した演技論は専門外なのですが、例によって生理という観点に絞ってみた場合、キャラの生理を正確に捉え、それに添って演じることに最も自覚的だった声優は、やはり黒沢さんその人でしょう。本作に限っていえば、他の共演者と比較しても明らかにズバ抜けています。

2015-10-18 22:56:40
メ之助 @japanoff

むろんそれは、緻密な計算に基づく(としか思えない)彼女の冷静な熱演に耐え得るだけのシーンがしっかり用意されているからこそです。その意味で、声優の演技とシーンの設計は不可分といえる。車の両輪と同様、どちらが欠けてもこれらの芝居は成り立たない。では、どのように設計されているのか。

2015-10-18 23:01:04

③ シーンの設計について

メ之助 @japanoff

ユーフォの芝居作りでとりわけ顕著なのは、その「セリフの外し方」です。例えば8話のお祭り回で、サファイアから妹を紹介された葉月の「うひゃー、やばいね」というセリフ。内容的には「琥珀が可愛い」という程度の意味ですが、セリフがきちんと彼女の身体を通って出てきているのがわかります。

2015-10-18 23:05:56
メ之助 @japanoff

あるいは13話の冒頭、起床直後の久美子が鏡を見て「よし!」と気合を入れるシーン。並のアニメ作品ならば、ここで「今日は絶対に成功するんだ」などと言わせてしまいそうな場面ですが、ユーフォでは「歯磨こ」と絶妙に外してくる。ここでもキャラの生理に添って芝居が組み立てられています。

2015-10-18 23:10:11
kj30D@XEA10™ @kj30D

ふむ、キャラの生理現象で、いわばお話が組み立てられてるんだって話をきくと、 たしかに、あそこで「歯磨こう....」は、なるほど自然な流れのセリフだねって。

2015-10-18 23:13:12
メ之助 @japanoff

ユーフォは久美子と麗奈の距離感のドラマ(変化)でもありますが、有名な8話のシーンを筆頭に、後半から相手の身体に触れる場面が増えていきます。いわば心理的な距離感が、そのまま生理的に視覚化されている。セックスを思わせる指と唇の官能的な接触など、象徴的な描き方で強く印象づけてくれます。

2015-10-18 23:17:34
メ之助 @japanoff

ここで重要なのは、それが百合かどうかということではなく、明らかに麗奈との友情が、葉月やサファイアとのそれと差別化されて描かれているということです。友情というものを極端化すると、表現としては限りなく同性愛に近くなる。友情を官能的に表現することで、それがいかに特別なのかを強調できる。

2015-10-18 23:21:56
メ之助 @japanoff

次の9話で「音が良くなった」と指摘されるシーンがありますが、まるで初めて男を知った女優の演技が垢抜けたかのような褒め方で面白い。放送当時も8話を精神的なセックス回と評しましたが、二人の美しい音色の交接が、次の回で彼女の音色に変化を与えるという展開には、生理的な説得力があります。

2015-10-18 23:28:40
TigRig@趣味アカウント @Tig_nico

メ之助さんのツイート、当然内容が素晴らしいんだけどそれだけじゃなくてその表現力にも感銘を受ける。

2015-10-18 23:44:09
メ之助 @japanoff

個人的にお気に入りのシーンが、11話で再オーディションを控えた香織が、どちらがソロに相応しいかをあすかに問う場面。あすかは「我が思考を読む能力者か」とおどけたポーズで答えをはぐらかしますが、香織はそれに取り合わず、沈黙に徹する。あすかが立ち去るまでの間が実にサディスティックです。

2015-10-18 23:37:39
メ之助 @japanoff

この場面にはあすかの思想がとてもよく出ていますが、直截には語られません。しかしその居心地の悪い間によって、二人の距離感のみならず、場のエモーションが匂い立つ。それだけで我々には「あの感じ」がパッと掴めてしまう。ユーフォはこういう痒いところに手が届いた虚数的な芝居作りが実に上手い。

2015-10-18 23:40:50
メ之助 @japanoff

たくさんのリプライありがとうございます。返信は落ち着いた頃にお返しします。

2015-10-18 23:43:06
メ之助 @japanoff

11話に触れてしまったので、少しだけ再オーディションに言及しますが、やはり滝の描き方がとても上手い。本当の目的はソロ奏者を決めること自体ではなく、香織自身に納得してもらうことですが、判決を彼女自身に委ねることで、それをごく自然に描いています。しかも返す刀で麗奈に覚悟を問うている。

2015-10-18 23:46:48
メ之助 @japanoff

生徒たちにその決定権がありながら、場の空気で自ら放棄してしまうという「芝居の外し方」も上手い。そのように一つの状況に複数の芝居を掛け算することで、見る者を飽きさせないようにシーンが設計されている。が、ここはいくらでも語れてしまうので、最後に13話の演奏場面について触れておきます。

2015-10-18 23:51:59
メ之助 @japanoff

ここでは会場外の挿入カットや久美子のモノローグを除けば、セリフは一切ありません。しかし部員の挙動や表情芝居、視線の対話、譜面の書き込みを見せるだけで、そのバックストーリーが一目で喚起される。演奏シーン自体の迫力は改めて語るまでもないでしょう。サファイアの後ろ姿の何という頼もしさ!

2015-10-18 23:54:50
メ之助 @japanoff

演奏シーンの目玉は、やはりソロパートのくだりでしょう。むろん麗奈の堂々たる独奏自体も感動的ですが、ここでの対比的なキャラ配置がまた素晴らしい。後半のドラマの中心を担った二人の先輩に挟まれている。特に見目麗しいファゴット奏者が吹いた直後、ペット奏者の三人が並んだカットは泣かせます。

2015-10-19 00:03:45
メ之助 @japanoff

このたった数十秒の演奏を巡って、あれだけのドラマが費やされたことを我々は既に予習しています。その三人が今こうして並んでいる。この美しい音色を生み出したのは、他でもないこの三人なのだ、とでも言うように。そういった諸々を含めたドラマの全てが、このカットに止揚されている。感動的です。

2015-10-19 00:08:46
メ之助 @japanoff

他にも例えば、3話ラストで久美子が麗奈の音色に気づけた理由や、12話の夜の学校から去る際の久美子の振り返り方や、13話の会場入り直前の滝のセリフの飛躍のさせ方など、言及したいシーンが山ほどあったのですが、これだけ長尺になってしまったので、また別の機会に譲りたいと思います。

2015-10-19 00:16:05
メ之助 @japanoff

まとまりに欠ける挙げ方になりましたが、このように本作では芝居を深く掘り下げるための様々な仕掛けが施されています。だからユーフォはネタバレに強い。ネタバレはストーリーを追うことにしか興味がない人には厳しいものですが、ユーフォの場合、それで芝居の面白さが損なわれることはほとんどない。

2015-10-19 00:20:17
AkissA @eupho_fan

ユーフォがネタバレしても全く構わないってスタンスだったのはOP見ればよく分かるし、一部のモノローグにも現れてると思います

2015-10-19 00:41:09

失敗点について

メ之助 @japanoff

ここまでベタ褒めしてきましたが、前回触れておきながら言及できなかったので、個人的に感じた失敗点についても簡単に。やはり一番気になってしまったのはモノローグの多さです。映像だけで理解できる場面でも言葉を重ねている。パントマイムの最中に自ら解説してしまうかのような自己矛盾を感じます。

2015-10-19 00:26:50
メ之助 @japanoff

モノローグの多用によって、せっかくのエモーショナルな光景や、細やかな演出の積み重ねで見せていた芝居の奥行きが、単調な「筋」に還元されてしまっている。商業作品ゆえの視聴者への配慮なのかもしれませんが、その「優しさ」がちょっとくどい。ところどころで映像本来のリズムを殺しています。

2015-10-19 00:30:15