空想の街・ハンツピィの宴2015 1日目

twitter上の創作企画「空想の街」のまとめです。 漏れや不備等あれば公式までご連絡ください。 編集可能にしてありますが、手動による編集を入れていますので時間順ボタンはご遠慮ください。
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不可村 @nowhere_7

戸がないぶん空気も早く入れ替わる筈だ。相手が何を話しに来たのかは知らないが、この分ではそこそこ長くなるのだろう、それならばこんな些事で機嫌を損ねられても厄介だ。一文字は、睡眠中もかけていた伊達眼鏡を自由な腕でずらし、眉間を揉む。 #赤風車 #空想の街

2015-10-24 00:35:53
不可村 @nowhere_7

何しろ今日から三日、空想の街は祭りの予定である。不思議な音を出す手製の風車を一文字は歩き売りするつもりだ。書き入れ時を逃すわけにはいかない上、実華とて客には違いない。風車を買うにしろ違うにしろ立ち去る時は気分よくあってほしいものだった。 #赤風車 #空想の街

2015-10-24 00:40:11
不可村 @nowhere_7

改めてひたひた流れ込む濃い外気に鼻孔奥をくすぐられた一文字が、色素の薄い目を眇め、口火を切る。「好きにしたまえよお客人。お主が酒や煙草を好んでいることは知っている。此処はこんな廃屋だがね、住めば都だ。茶は出せぬがお気の済むまで寛いでくれ」 #赤風車 #空想の街

2015-10-24 00:43:23
不可村 @nowhere_7

「ふむ、有難いな。何だ中々分かる奴じゃないか! では遠慮なく」 ふたりが息を潜める中、ち、と音を立てて燐寸が擦れる。外箱にはなんと書かれているのやら、もうこの街に来て一年弱になろうとしているのに、街独特の言語にはまだ疎い一文字の前髪が秋の空気に揺れていた。 #赤風車 #空想の街

2015-10-24 00:59:06
さることながら @sarukotonagara

さぁーてと。 看板出したばっかりだけど、今日は引き上げようかな。 明日はどんな日になるんだろう。 ふぁーあ。とんとんとん、階段を上がって自室に引き上げる。 みんなおやすみ、良い夢を。 #空想の街 #さるカフェ

2015-10-24 00:47:58
さることながら @sarukotonagara

セルフサービスのお品はいつでも置いてあります。何時でもどうぞ。なんなら寝ていってもいいですよ。 時期はハンツピィ。寒くなってきてるもの。 #空想の街 #さるカフェ

2015-10-24 00:50:19
さることながら @sarukotonagara

セルフサービスのお品はこちら。 ●『混血の麗し』のハーブティー ●『月夜の漆黒』の深煎り珈琲 ●『満面の笑み』の瓶入りサイダー ●『素朴な吐息』パンを使った『陽射しの恵み』の野菜サンド ●『踏み出す一歩の爽快感』のクッキー #空想の街 #さるカフェ

2015-10-24 00:52:11
佐和島ゆら@星月堂へようこそ(新作)販売中 @sawajimayura227

晴れの日のことである。 ある国で作家と暮らす女房がいた。 年若くもしっかり者の彼女は、作家を助け、作家もまた女房のことを気にかけていた。女房は元は作家の熱心な読者だった。作家の作る物語は読んでいると何かしたいと思うような、情熱的な作品が多かった。 #空想の街 #作家と女房

2015-10-24 00:25:47
佐和島ゆら@星月堂へようこそ(新作)販売中 @sawajimayura227

しかし女房と作家が以前住んでいた国で、言論弾圧が吹き荒れた時、作家は筆を折られ、一時的に拘束された。 その後、今住んでいる国に二人は移り住んだのだが、彼はそれ以来小説を書いていない。ただ食べることが好きなので、それを読み物として売って生計を立てている。#空想の街 #作家と女房

2015-10-24 00:26:23
佐和島ゆら@星月堂へようこそ(新作)販売中 @sawajimayura227

これは女房にとって由々しき事態であった。何故、小説を書かないのか。 彼の新作を読みたかった。彼女は女房になっても、少女時代と変わらず、熱心な読者だったのだ。 しかし弾圧された時の、その言葉に尽くせぬ哀しみを味わった作家のことを考えると、女房は何も言えない。#空想の街 #作家と女房

2015-10-24 00:27:02
佐和島ゆら@星月堂へようこそ(新作)販売中 @sawajimayura227

本当にひどい時代だった。女房はかつてを振り返ると背中が引きつるように痛む。傷痕が泣くのだ。 さて……語り部の前説はここまでにして、物語をはじめよう。 焦れったい話だ。 言えばいい話を二人は言えない、不器用な話だ。それでもよければ、少し時間をお借りしたい。#空想の街 #作家と女房

2015-10-24 00:28:08
和伊啓太 @waikeita

#空想の街#ルグッグ蜜蜂の巣箱 の設定を把握してなくても絡んで大丈夫ですよ! といふか、絡んでくださいw その設定は、前回・前々回・前々々回とほぼ同じですので、とりあへず、こちら( togetter.com/li/688780 )をご覧ください。 #空想覚書

2015-10-24 00:32:08
佐和島ゆら@星月堂へようこそ(新作)販売中 @sawajimayura227

「時計塔のある街ですか?」 女房が目を丸くしてそう言うと、不惑も過ぎて、髪の毛にぽつぽつと白髪が見え出した作家が頷いた。 「そう、今度行こうと思う。どうだ、花月。君も行かないか?」 #空想の街 #作家と女房

2015-10-24 00:29:16
佐和島ゆら@星月堂へようこそ(新作)販売中 @sawajimayura227

作家が女房を旅行に誘うなど珍しいことだ。作家は不思議なことが好きだった。きっと、その街には彼の興味の引くような「不思議」があるに違いない。 「わかりました。荷物を用意しますので、待っていてください」 「そうか、行ってくれるのかい」 #空想の街 #作家と女房

2015-10-24 00:30:29
佐和島ゆら@星月堂へようこそ(新作)販売中 @sawajimayura227

「行くも行かないも、聞かれるまでもありません。行きますよ。それに……」 「それに?」 女房は少し拗ねて、唇をとがらせた。 「あなたの帰りを待って、あなたのお土産話を聞かされてばかりで、少し癪でしたから」 そう言って、女房は襖をしめた。作家は思った。#空想の街 #作家と女房

2015-10-24 00:31:20
佐和島ゆら@星月堂へようこそ(新作)販売中 @sawajimayura227

ひどく自分は、花月に寂しい思いをさせていたらしい。 取材であちこちに行く日々は女房はたまらなかったのか。 懐から作家は蝶の髪飾りを取り出した。紅の飾り紐がついた細工の細やかな髪飾りを、作家は持て余した。 女房によく似合うと思うけれど。 #空想の街 #作家と女房

2015-10-24 00:32:17
佐和島ゆら@星月堂へようこそ(新作)販売中 @sawajimayura227

あの様子では素直に受け取るまい。 作家は卓袱台の上に置かれたみかんを見る。甘い芳香を漂わせていた。一つ剥いて歯を立てて齧る。口の中に爽やかな酸味と果実の甘みがまぜこぜになって、狂騒する。 髪飾りの蝶をみかんに置いた。蝶がみかんと戯れているように見える。#空想の街 #作家と女房

2015-10-24 00:34:27
佐和島ゆら@星月堂へようこそ(新作)販売中 @sawajimayura227

みかんを無造作に食べてしまったので、手は果汁でべたべたになった。作家は腰を重たげに立ち上がり、台所に向かった。 その頃女房は化粧して、着慣れている服から、外行きの服に着替えた。さらに化粧をして小さい薔薇の髪飾りをつけると。 鏡台に淑女が現れる。#空想の街 #作家と女房

2015-10-24 00:37:00
咲良 潤 #言の葉の点綴 @sakura77_sosaku

この街の門をくぐるのは何回目かや。もう数え切れないほどじゃ。最初は生き別れた姉さまを探すためじゃった。でもそのうちに知り合いも増えた。思い出の場所もできた。今では姉さまのことを抜きにしても、来たい街じゃ。しかし、わっちはやっぱり姉さまを見つけたいんじゃ。#空想の街 #黒猫

2015-10-24 00:46:13
咲良 潤 #言の葉の点綴 @sakura77_sosaku

前回は人のナリでこの街に来た。そのときは連れも一緒じゃったな。たしか……あさ……たき……?……そうそう、あずきじゃ。もちろん本名じゃないが、まぁ本名は忘れた。でも今回は一人。じゃからいつもの黒猫の姿でこの街に来た。この方が気楽じゃからな。#空想の街 #黒猫

2015-10-24 00:52:08
咲良 潤 #言の葉の点綴 @sakura77_sosaku

今回のこの街の祭りは、動物が人間の姿に変わって人間と交流を楽しむ祭りじゃとか。じゃから人間も獣耳を生やして、お互い気兼ねなく祭りを楽しんでおる。自由に人間の姿に変われるわっちとしては、さほど珍しくはないがな。でも必要とあれば、この祭りのしきたりに合わせるか。#空想の街 #黒猫

2015-10-24 00:54:29
咲良 潤 #言の葉の点綴 @sakura77_sosaku

でも同じ黒猫の姉さまを探すとなれば、やはり黒猫の姿のままでいる方が見つけやすいのもまた事実。しかしこの祭りの間は姉さまも人の姿でいるかもしれぬ。まぁ仮にこの街に来ていればの話じゃがな。可能性は薄いか?それでもいいじゃろう。猫とはその瞬間を生きるものじゃからな。#空想の街 #黒猫

2015-10-24 00:57:43
佐和島ゆら@星月堂へようこそ(新作)販売中 @sawajimayura227

素直になれないだけで、女房は作家に誘われて嬉しかったのだ。女房は服にシワがないか確認すると、胸に手を置く。 自分はどうして素直になれないのか。自分の感情には素直だが、作家の前では可愛くなれない。作家との付き合いはそれなりになるのに。#作家と女房 #空想の街

2015-10-24 00:38:12
佐和島ゆら@星月堂へようこそ(新作)販売中 @sawajimayura227

作家は一回り以上も若い妻の、感情の波の大きさに嫌気を差さないのか、不安になる。けれどそれを口にすれば、作家はきっと困ったように眉を下げるに違いない。作家は口下手で、説明足らずだ。けれど優しい。根は優しくて、悲しくなる性を持つ男だ。女房は作家を好きだった。#作家と女房 #空想の街

2015-10-24 00:41:11
佐和島ゆら@星月堂へようこそ(新作)販売中 @sawajimayura227

愛想をつかすなんて想像できない。だけど作家から見て、自分は果たして可愛いのか。嫌にならないのか。分からなかった。 作家がいるはずの居間に行く。作家はいなかった。みかんが少なくなっている。置かれたみかんの皮にため息をつく。 ふと見慣れない物に気がついた。#作家と女房 #空想の街

2015-10-24 00:42:02
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