東方翻訳SS「宇佐見蓮子の告白」

蓮子のメリーへの想いの行方は?全四章翻訳完了しました。後日pixivに改訂版をアップします。ほんのりだけどRー18閲覧注意。 原文「The Confession of Usami Renko」 http://archiveofourown.org/works/1692059/chapters/3599168
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Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

@Taiyakisoba2014 さんの「The Confession of Usami Renko」を翻訳しようと思ってる。長いのでまだ全貌把握し切れていないが、傑作の予感がする。準備不足なので続けられるか不安だが、断続的にやるくらいの気持ちで開始しようか…。

2015-11-08 20:23:22
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「宇佐見蓮子の告白」 (あらすじ) 超統一物理学を専攻する宇佐見蓮子だが、もはや無視できない事実。親友マエリベリー・ハーンに恋してしまったこと。現実と夢、主観と客観、あまりにも異なる二人の世界が衝突した時、二人の友情は何らかの実を結ぶのか、それとも全ては空虚な夢でしかないのか。

2015-11-08 20:33:44
Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

第一章 Needless to say, the dream is the essence of human. (言うまでもなく、ヴァーチャルが人間の本質なのだ。) Smart girls are cool. (頭の良い女の子は格好良い。) -ZUN 1

2015-11-08 21:30:17
Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

私の名前は、宇佐見蓮子。 私は親友に恋をした。 2

2015-11-08 21:30:59
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始めて出会った時は、そうじゃなかった。メリーと出会ったのは京大に入学して間もなくの頃だった。私は超統一物理学を専攻する学生で、ひも理論にも手を出していた。それが後に私達二人の冒険で起きた様々な結果をもたらす事になるわけだが、たぶん当時の私は傍若無人に突っ走ってたのだ。 3

2015-11-08 21:42:22
Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

メリーはカフェテリアの前の中庭で、新入生ガイドを手にして茫然と立ちすくんでいた。ラボに行く途中、視界の隅にその姿を捉えて私は足を停めた。今どき外国人留学生なんて京大ではたくさんいるが、でもメリーは… 4

2015-11-08 21:53:20
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そう、すらりと背が高くて、長いブロンドをなびかせ、琺瑯の人形のように繊細な美貌、とにかくメリーはひときわ目立っていた。はっきり言えば、メリーは綺麗だったの。美しいって形容詞はメリーのためにだけ存在するんじゃないかって何度も思ったわ。 5

2015-11-08 22:01:07
Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

その菫色の瞳に不安を浮かべながら、メリーは新入生ガイドから視線を上げて、通りがかった学生に何か訊いていた。その女子学生は日本人だったが、首を横に振ると、軽く申し訳なさげに会釈すると立ち去ってしまった。 6

2015-11-08 22:10:45
Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

同じ事を二度繰り返して狼狽するメリーの顔を見ると、いつもはそんな気を起こすこともない私が何とかしなきゃならないという衝動に駆られた。 私は彼女に歩み寄った。 7

2015-11-08 22:13:06
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当時の私の英語も少々危なっかしかったが、他の学生たちがメリーを敬遠する理由も分かる。日本人は外国人から質問されるほど苦手なことは無い。もちろん誰もが英語の教育を受けてはいるが、習った英語を話そうとすると、それがただの道具に過ぎない事を思い知る。会話はそれとは全く別物なのだ。 8

2015-11-08 22:23:50
Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

「どうかしましたか?」と、私は自分の語学力全開の英語で話しかけた。 9

2015-11-08 22:26:31
Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

「あ、英語が話せるんですね」と流暢な日本語が返ってきて、私は面食らった。妙な訛りも無くて、むしろ生粋の京言葉に近い日本語だったものだから、メリーが私と同じ言葉で返事をした事を理解するのにちょっと時間がかかってしまった。 10

2015-11-08 22:34:58
Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

それで合点がいった。たぶんメリーは同じように流暢な日本語で学生たちに話しかけたものの、私があっけにとられてすぐ反応できなかったのと同じように、みんなびっくりしてしまったのだろう。 11

2015-11-08 22:42:26
Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

私はすぐに、彼女がマエリベリー・ハーンという名で、相対性心理学を専攻している事を知った。メリーが探していたのは学生事務局だった。ラボにはとっくに遅刻だったが、私は道案内を申し出た。行き先を教えるだけでも良かったが、私は早くもメリーに何か好意を感じていたのだった。 12

2015-11-08 22:49:34
Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

ただし、私が外見に惹かれただけだとは思わないでほしい。確かにメリーは美人だけれど、最初に惹かれたのはそこじゃなかった。私が惹かれるのは常に非日常と神秘であり、メリーにはそのオーラがあった。非現実的とでも言えばいいのだろうか。 13

2015-11-08 23:06:01
Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

それは当を得ていないかもしれない。なぜならメリーはその神秘的な能力で本当に地上に舞い降りた存在だったのだから。 なのに私はまた突っ走ってしまった。 14

2015-11-08 23:07:56
Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

一緒に歩きながら、今度は私が自己紹介する番になった。メリーは私の専攻に興味を抱いたらしく、しかも物理学について大いに造詣が深い様子だったので、私は驚くやら嬉しいやら。 15

2015-11-09 23:06:31
Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

日本語の上手さについて触れると、メリーは赤面しながら、別に自慢するようなものじゃなくて、実際は、日本で育ったからだと言った。メリーの家族は元々英国に住んでいたが、子供の頃に両親が日本に移住したんだそうだ。両親は英国に戻ってしまったが、メリーは留まって学問を続けているという。 16

2015-11-09 23:10:56
Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

などなど、それは初対面の他の学生たちにも同じように貴女が話す決まりきった事柄。メリーがこれまでずっと京都で過ごしてきたと言った時、元々退屈で古臭い田舎でしかない東京出身の私は、メリーより自分の方がよっぽど異邦人だ、と冗談を言った。 17

2015-11-09 23:23:02
Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

そんなつまらない冗談に、それでもメリーは笑ってくれた。その笑みは驚くほど大らかで、顔いっぱいに生気が満ちていた。無垢な子供にしか見られないような、そんな笑顔。世界をちょっと明るくさせるような喜びが詰まっていた。 18

2015-11-09 23:28:49
Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

学生事務局に案内した私に、メリーはペコリと会釈してありがとうと言った。私は茫然とした頭でふらふらとラボへと去っていった。 19

2015-11-09 23:32:06
Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

最初の出会いからしばらくはメリーに会えなかった。もっとも自分から会おうという気が無かったわけじゃなかった。何となくカフェテリアをうろうろするようになったのは、また何かに困ってる乙女のような彼女と再び出くわすのを期待してたのかもしれなかった。 20

2015-11-09 23:39:50
Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

さらには講義室からラボに行く途中に無意味な回り道をして心理学部棟のそばを通ったりすつようにもなった。メリーに会って何を期待してるのか、その時の私には何もわからなかった。 21

2015-11-09 23:44:36
Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

メリーとようやく再会できたのは、一週間後だった。 22

2015-11-09 23:45:21
Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

メリーは大学のカフェテラスのテーブルに座っていた。通りがかった私の視野にあの太陽のようなブロンドがよぎった瞬間、私は初めてメリーを目にした時のように凍りついた。 23

2015-11-10 21:32:20
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