ケンペイ天狗「ファントム・オブ・ザ・ソロモン」

アナ・イゴール @KNPITNG

戦艦すら切り裂く赤熱ダガーがレ級に迫る！だが直前、レ級の尾がヘビめいて自在に動き夕立の腹部を強烈に打ち据えた！「イヤーッ！」「ンアーッ！」海面へ叩きつけられた夕立にレ級はさらに魚雷発射管を向ける！「アハハハ！」「イヤーッ！」だが矢矧がトビゲリによりインタラプト！6 #ケンペイ天狗

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「イヤーッ！」続く矢矧のフック軌道の暗黒カラテ目潰しをレ級は容易くスウェーで回避する。矢矧は更に左貫手で追撃！だがレ級の右チョップの方が速い！「イヤーッ！」「ンアーッ！」肩を抉る、視界が真っ白になるほどの衝撃。さらに追撃の左膝が鳩尾にめり込む！「ンアーッ！？」7 #ケンペイ天狗

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「ゲホーッ！」ワイヤーアクションめいて矢矧が吹き飛ぶ！空中で身動きが取れぬ矢矧に対し、レ級は龍の頭めいた尾から主砲を向けた！絶対のカイシャクの構えに矢矧は歯を食いしばる。だが次の瞬間、「ズイウン！」強烈なカラテシャウトに弾かれたようにレ級が飛び退く！8 #ケンペイ天狗

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瞬間、レ級を掠めて戦場を貫いたのは日向の４１サンチ連装砲である！その間に矢矧は海面を転がるようなウケミで着地！「シィィ……」レ級は忌々しげな視線を日向に向け、オーケストラ指揮者めいて右手を空中で揺らした。同時に無数の爆撃機が日向へと殺到する！「ム……！」9 #ケンペイ天狗

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「イヒヒアハハイヒアハハ！イヤーッ！」KBAM！KBAMKBAMKBAM！レ級が大きく両腕を広げると共に、空から雨とばかりに爆撃が降り注ぐ！なんたるマッポーポカリプスめいた爆撃か！日向であろうと回避しきれるものではない！「ヌゥーッ！」徐々に艤装が灼かれていく！10 #ケンペイ天狗

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「アハハヒヘハハハ！」海を燃やすかのような炎の中でレ級が哄笑する。「オマエタチ！イマスグワタシヲ前線ニ連レテイケ！」海面に膝をついた矢矧達を見下ろす目が妄執と狂気に光る。「戦争ハマダ終ワッテナイ！ワタシガイレバ、アメリカニモ勝テルッ！」「こいつ何を言って……」11 #ケンペイ天狗

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「「ゲホーッ！」」夕立と矢矧は揃えたように血混じった痰を吐き出した。共にダメージは浅くない。一瞬視線を交わし、同時にレ級へ跳ぶ！「「イヤーッ！」」ハサミめいた左右両方向からのダガーとチョップだ！だがレ級はそれぞれ片手でガード！「レンゴウノ弱敵共メ！」ALAS！12 #ケンペイ天狗

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なんというおぞましいカラテか！矢矧、夕立、いずれも百戦の高練度艦娘による高速カラテをレ級はベイビーサブミッションじみて捌いていく！夕立の二本の赤熱ダガーが、矢矧の高速暗黒カラテが当たらぬ！「イヤーッ！」「イヤーッ！」「イヤーッ！」「イヤーッ！」「アヘヘハハ！」13 #ケンペイ天狗

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「「イヤーッ！」」頸動脈切断を狙った矢矧の貫手がレ級のスウェーバックにより空を切る。そのほぼ同時、頚椎破壊を狙った夕立の赤熱ダガーがレ級の尾により跳ね上げられる。「「なっ……！」」向かい合うような形で空を泳いだ両者の身体を、レ級の左右の掌打が貫く！「シズメ！」14 #ケンペイ天狗

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「「ンアーッ！」」胴体を背骨ごとへし折る勢いの一撃！「イヒヒアハハハハ！」レ級はそのまま身体を縮こまらせた矢矧と夕立の顔を掴むと夕立を日向に、矢矧をヒラヅへ向かって投げつけた！「イヤーッ！」「「ンアーッ！」」ワイヤーアクションめいて宙を舞う！更に爆撃機が追う！15 #ケンペイ天狗

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「ンアーッ！」日向がアメフトボールめいて投げ飛ばされた夕立を受け止める。「大丈夫か？」「っぽい！ゲホッ」夕立が吐血する。折れた肋骨が肺を圧迫し呼吸困難を引き起こしているのだ。「艦娘で良かったな、人間なら死んでる」冷徹に言う日向の背中は度重なる爆撃で重度の火傷。16 #ケンペイ天狗

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「イヒヒヒアハハハ！」KBAM！深海爆撃機が恐るべき量の爆弾を降らす。「イヤーッ！」日向は夕立をプリンセスめいて抱えたまま機敏なステップによって回避！だが、物量に圧されその肩に爆撃が着弾する！「グワーッ！」歯を食いしばり、ズイウン呼吸でダメージを軽減する！17 #ケンペイ天狗

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「夕立が足手まといなら捨てるっぽい！」「いいから呼吸を整えておけ」夕立を左脇に抱え直しながら、日向はカタナで爆撃を切り払った。「お前が落ちたらいよいよ勝ち目が無い」「日向さん……。あ、３時方向！」夕立が目を見開いた。「！」爆撃の水柱を目眩ましにレ級の本体！18 #ケンペイ天狗

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「イヤーッ！」レ級の地獄めいた掌打を日向は膝で支えたカタナで受け止めた！名刀ズイウンが恐るべき圧力にミシミシと音を立てる。「助かったぞ」日向は夕立をレ級の視界外に押しやると、カタナを切り返しレ級へ振るう！「イヤーッ！」レ級は硬質化したチョップで受け止める！19 #ケンペイ天狗

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「イヤーッ！」「イヤーッ！」「イヤーッ！」「イヤーッ！」夜戦距離で日向とレ級がカラテ応酬を開始する！「ポイヤーッ！」更に夕立もそれに加わる。再び二対一！だが所詮は怪我人二人、レ級と爆撃の雨の前では「シズメ！」「グワーッ！」カイシャクまでの時間稼ぎに過ぎぬ！20 #ケンペイ天狗

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「……ンアーッ！」「アバー……」ほぼ同時、吹き飛んだ矢矧もラグビーボールめいてヒラヅにより受け止められていた。「……お前、ゲホッ」矢矧はヒラヅの腕を振り払うい海面に立つと、何度も血を海面に向かってぶちまける。「ゲホッ！ゲホーッ！」目が霞む、消化器が破れたか。21 #ケンペイ天狗

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口の端を拭いながら矢矧は高角砲を起動させると、先ほど自分を受け止めた半死人の姿を見た。相変わらず焦点の定まらない目。「ヒラヅ＝サン。爆撃機が来る、構えなさい」矢矧はダメ元で話しかける。「アバー……」ヒラヅが矢矧へと振り返る。「お嬢さんは……艦娘かい……？」22 #ケンペイ天狗

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「アバー……お嬢さん、ここはどこだ？うちの鎮守府を知らないか？」ヒラヅは濁った死人の目のまま矢矧を振り返った。「初春、利根、アバー……みんな優しい子なんだ、私が帰ってやらなくては……」矢矧は目を見開く。ヒラヅが意味のある言葉を発するとは思っていなかったからだ。23 #ケンペイ天狗

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「貴方……？」「イマ、沈んでいった艦娘……隼鷹＝サン……か」ヒラヅの目に深海棲艦と同じ青い光が灯る。邪悪な外科手術によって刷り込まれた化学反応作用に従い、ヒラヅの生前記憶は眼前の状況と混線した。「ヒラヅ鎮守府の……大切ナ艦娘、シズメられた……守らなくては……」24 #ケンペイ天狗

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ヒラヅ青い瞳はまず上空の深海爆撃機を見た。そしてその主であるレ級を。死体めいて白い肌に黒い血管が波打つ。「おお……敵……。アバ……おいで、五十鈴＝サン。ワタシの隣は窮屈かもしれないが、手伝ってほしい……」魂内に無理やり封ぜられた艦霊へと語りかける。25 #ケンペイ天狗

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「何を訳の分からない……！」矢矧はそこでヒラヅに見切りを付け、襲い来る爆撃機に向けて高角砲を構えた。数にしておよそ60。「オーバーキルもいいところね……」だが、爆撃を抜けて日向達と合流できれば、あるいは。舌打ちし、缶を一層に燃やす。その時、背後の空気が揺れた。26 #ケンペイ天狗

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「オオ……オオオオオ……！！」それは雄叫びだった。それも、レ級の哄笑と同類の妄執を孕んだ。矢矧は振り返り、跳ね上がった自分の心臓の脈拍を聞いた。そこにいたのは人と深海棲艦の融合物。黒い血管が絡み合った巨大な深海艤装に頭部と両腕を包み込んだ怪物！「オオオオオ！」27 #ケンペイ天狗

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「イヤーッ！」ヒラヅがヒビ割れた男とも女ともつかぬカラテシャウトを叫ぶ。瞬間、両腕に深海高角砲が浮き上がり対空射撃を開始した。焼けた空を無数の火線が貫き、上空で死の花を咲かせていく。ヒラヅの目はレーダーめいて空を巡る。瞬く間に空は巨大な串刺し処刑台と化した！28 #ケンペイ天狗

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ヒラヅはセンコを焚かれた蚊めいて落ちる深海爆撃機を虚ろな目が眺める。「アバー……今です初春。初春……いないんですか……？」「！」一瞬呆気にとられていた矢矧はレ級へと振り返る。レ級は日向と夕立を嬲っておりこちらに気づいていない。一瞬の隙。魚雷発射管を起動する。29 #ケンペイ天狗

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「イヤーッ！」矢矧が魚雷をレ級へと発射する。コンマの後、異常事態に気づいたレ級は首だけ曲げ、矢矧とヒラヅを見た。まずは処刑台と化した空を、そして魚雷航跡が残る海を。その僅かな差が、魚雷をレ級まで送り届けた。レ級の足元が膨れ上がり、爆発する！「グワーッ！？」30 #ケンペイ天狗