「ボマー・ガール・フー・カーズス・ア・ストーム」

秋の大規模作戦の終わった鹿屋に、嵐がやってくる!
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Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「最初は人一倍頑張りたい子なのかと思いましたが…」神通が眉を顰め、言った。「どうも過剰に自主訓練を積んでるようでして」「過剰って言うと」「寝る間も惜しんで訓練に明け暮れているのをこの前目撃しました」「ふぅむ…」リカルドが顎を擦る。「その時は注意しましたが、聞いたかどうか」 12

2015-12-11 22:18:49
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「それで、直属の上司であるリカルド提督に相談しようかと」「成程な」リカルドが頷く。そしてふと気づいた。視界の端。嵐の姿を捉えているのを。「ちょっと行ってくるわ」リカルドは立ち上がり、嵐に近寄る。既に食事を終えたのか、嵐は食堂から退出しようとしていた。「嵐!」リカルドは呼ぶ。 13

2015-12-11 22:23:29
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「司令?」嵐が振り向いた。目の下に薄く隈ができていた。「嵐お前…」リカルドは察した。超人たる艦娘がこれほどの消耗。おそらく自分たちが想定している以上の無理をしている。「無理してねぇか」「…何だよ藪から棒に」嵐がそっぽを向く。図星か。「少しは休め」「大丈夫だよ」 14

2015-12-11 22:31:06
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

嵐が歩き去ろうとする。「おい嵐」「…俺は」「……?」「俺は強くならなきゃいけねぇんだ」嵐は決然とそう言った。「アイツが戦わなくてもいいように、俺が!」「嵐、お前…」何を思い詰めている。リカルドはそう問おうとした。「…近海哨戒の任務があるから」嵐は足早に去って行った。 15

2015-12-11 22:35:41
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「アイツ…」リカルドが嵐の背をただ見送った。「司令官」いつの間にか吹雪が傍にいた。「吹雪」「はい」「アイツについて行ってくれ。後で話をしたいが、任務中にぶっ倒れられると困る」「分かりました」吹雪はそう言い、嵐の後を追った。「全く」リカルドは溜息を吐き、天井を仰いだ。 16

2015-12-11 22:38:54
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「イヤーッ!」「AGRRRR!」嵐の主砲がイ級の頭部を粉砕し、爆発四散させる!「GRAAA!」背後から襲い掛かるロ級!「イヤーッ!」嵐は背後を僅かに確認すると、ベルトから爆雷を引き抜き、背後へと放り投げる。自らは側転回避!爆雷がロ級の口の中へと吸い込まれる。KABOOOM! 18

2015-12-11 22:46:28
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

嵐が指を鳴らすと同時に、爆雷が爆発!ロ級の頭部が吹き飛び、悲鳴も上げずに爆発四散する!「ハァーッ…ハァーッ…」膝をつき、荒く息を吐く。「まだだ」呟き、立ち上がる。ベルトに付けた爆雷を確認する。これは特別性だ。ブインに所属するとある技官提督が開発した火薬と信管を使用している。 19

2015-12-11 22:54:28
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

爆雷は本来の用途から、時限或いは水圧感知で爆発する。だが、嵐の爆雷は嵐自身がタイミングを計り爆発させることが可能である。嵐が艦娘となり得た新たな力だ。だが、「まだだ…まだ足りねぇ」嵐は拳を握り締める。己の無力感を。 20

2015-12-11 22:59:16
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

嵐の脳裏に過るのは、今朝の夢。そこにいた“はぎ”の姿。“はぎ”またの名を萩風。彼女の相棒。嵐と同じく船魂から生まれたオリジナル艦娘。嵐にとって萩風は愛しき友人だ。だが、彼女にはある致命的な問題があった。夜だ。彼女は夜が来るたびに錯乱し、暴れまわった。 21

2015-12-11 23:03:59
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

原因は分かり切っていた。彼女が艦であった時の最期。あの夜の惨劇。魚雷。爆炎。集中砲火。嵐の記憶にも苦々しく残るそれが、萩風を酷く苦しめているのだ。『戦う事は不可能だろう』彼女らを“造った”者はそう言った。 22

2015-12-11 23:08:16
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

守らねば。そう告げられた時、嵐は己にそう誓いを立てた。萩風は戦えぬ。だが敵は容赦なく襲い掛かる。その時、戦えぬ萩風を守るのは誰だ。己に他ならない。嵐はこの世に生まれ落ちたばかりであった。強くならねば。そんな時耳にしたのが、鹿屋の“死神”の噂であった。 23

2015-12-11 23:12:57
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

曰く、鹿屋の“死神”はカラテで以て深海棲艦を葬り去って行く。曰く、そのカラテは鬼や姫すらも手にかける。曰く、そのカラテは鹿屋で磨かれたものである。嵐は藁に縋る思いで鹿屋への転属を希望した。そして希望は通った。 24

2015-12-11 23:16:17
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

この数日で、嵐はメキメキと強くなった。艦の頃では考えられぬほどに爆雷の投擲精度が上がった。砲の命中率も。この人間の体の動かし方も。だが、まだ足りぬ。たかがソウル・エンハンスメントを纏わぬ雑兵を相手にできる程度ではまだ足りぬ。もっと力を。力を。力を! 25

2015-12-11 23:19:26
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

嵐が天を仰ぎ、決意を新たにしたその時。「全ク、モウ全滅カ」外洋側から聞こえるは超自然エコーボイス。嵐の肌が、ソウルが泡立つ。強烈な敵意に。「誰だ」嵐は水雷カラテを構え、向き直る。「誰ダ、カ」そこに居たのは深海棲艦と思わしき存在。全身を黒い深海装甲に覆われた人型。 26

2015-12-11 23:25:40
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

ハ級めいた仮面を被ったその深海棲艦は両手を合わせ、オジギをした。((アイサツ!?))嵐のニューロンに驚愕が電流めいて奔る。姫や鬼などの特異な深海棲艦を除き、基本的に深海棲艦はこちらとコミュニケーションを取らない。取る知性が無いとする説が一般的だ。 27

2015-12-11 23:37:11
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

深海棲艦はアイサツする。「ドーモ、初メマシテ。コールドレインデス」「……ドーモ」嵐もアイサツを返す。アイサツにはアイサツで以て返さねばならない。イクサにおける絶対の不文律である。「陽炎型駆逐艦16番艦・嵐です…何者だ、お前」嵐は直ぐ様水雷カラテを構え直す。「何者カ、カ?」 28

2015-12-11 23:41:36
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

コールドレインは漫然とカラテを構える。その手から水が滴る。「ゴ覧ノ通リ深海棲艦ダガ」「んなこと聞いてんじゃねぇよ!テメェがただの深海棲艦なわけねぇだろ!」「差シテ変ワランヨ。オ前ガ壊シタゴミクズト然程、ナ」コールドレインの手から白い蒸気が立ち上る。((蒸気?))嵐が訝しむ。 29

2015-12-11 23:45:51
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「ダガ仕事ハ仕事…悪ク思ウナヨ」((何か、拙い!))嵐は己の艦娘第六感に従い、咄嗟に側転回避した。「イヤーッ!」瞬きの後、コールドレインが両腕を振るう!手から飛び散った大量の水飛沫が嵐が居た位置に殺到。接触と同時に瞬く間に凍り付く!「凍った!?」嵐は驚愕する。 30

2015-12-11 23:49:56
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「液体窒素ヲ知ッテイルカ?」コールドレインが掌同士を合わせる様に構える。両掌の間に白い蒸気を吐く水が循環する。そして、体が赤いソウル・エンハンスメント光に覆われていく。「マイナス196度ノ冷却液体。コレヲ操ルノガ我ガジツ、コリ・スイトン・ジツ」 31

2015-12-11 23:56:21
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「くっ」嵐はコールドレインの動きに注視する。緊張から嵐の主観時間が鈍化する。((これは、チャンスではないか?))ニューロンの囁き声。((こんな特殊な深海棲艦を討ち取れれば、俺はますます強くなれるんじゃ…?))抗いがたき甘い囁き。嵐は己の内なる声に乗った。 32

2015-12-11 23:59:22
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「コリ・バルカン!」コールドレインが両掌を嵐に向け、機関銃連射めいて液体窒素の弾丸を間断無く降り注がせる!BRATATATATATA!「イヤーッ!」嵐は滑るように海面を駆ける!「イヤーッ!」コールドレイン追撃!液体窒素着弾点が次々に凍る! 33

2015-12-12 00:03:16
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「イヤーッ!」嵐は滑りながら魚雷発射管を起動する。「ヌ」コールドレインは片手を降ろす。「イヤーッ!」嵐は魚雷を4本発射!「イヤーッ!」コールドレインは海水に手を浸す。手の周囲の海水が瞬く間に凍って行く。魚雷が海中で巨大化した氷塊に命中する!KABOOOM! 34

2015-12-12 00:08:31
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

爆発が海水と氷塊を周囲にぶちまける。一瞬、視界が覆い隠される。「イヤーッ!」その瞬間、放物線を描き爆雷が4発投擲される!「爆雷?」コールドレインは訝しんだ。嵐はどう動く。コールドレインは左腕に液体窒素を集中させ、投網めいて空中に撒いた。「イヤーッ!」凍る爆雷! 35

2015-12-12 00:12:21
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「イヤーッ!」「何?」爆雷が凍ったその瞬間、既に嵐はコールドレインの側面を捉えていた。「ハヤイ」コールドレインが感嘆の声を漏らす。「イヤーッ!」嵐が砲を撃つ。撃つ。撃つ!撃ち続ける!一点へ!BLAM!BLAM!BLAM!BLAM!BLAM!「グワーッ!」 36

2015-12-12 00:15:54
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