近接航空支援の話-例:ガタルカナル島の戦い-

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Bunzo @Kominebunzo

日本陸海軍の戦闘機は空中戦第一主義、米軍は爆撃、偵察を兼ねた万能主義といった話がある。戦訓を読んだらそう書いてあったとしても戦時中の戦訓はは相手が見えていない。友軍の話ならば事実かもしれないけれども米軍は本当に爆撃、すなわち地上支援に注力していたのかは日本側からは見えない。

2015-12-07 18:12:55
Bunzo @Kominebunzo

ガダルカナル上陸を控えて米海軍は航空支援を「上陸から3日間のみ行う」と決めていた。3日で占領できればそれで済むけれども、あくまでも戦闘機隊は艦隊防空が第一の任務で、SBD等の爆撃機は地上支援には脆弱で危険と判断されていた。そして海軍航空隊に地上支援ドクトリンは存在しない。

2015-12-07 18:16:33
Bunzo @Kominebunzo

近接航空支援の必要が生まれたらどうするか、も決められていた。地上部隊が危機に瀕したら大隊本部に連絡し、大隊本部から順を追って師団司令部に連絡する。師団司令部は艦隊旗艦に連絡し旗艦の司令部の判断で空母に連絡を取りそこで初めて攻撃隊が編成され、燃料弾薬を搭載して出撃するという段取り。

2015-12-07 18:20:11
Bunzo @Kominebunzo

どうにも迂遠な経路で航空支援要求が伝わる時間も暢気なら情報の伝言ゲームは危険な誤爆を招きかねない。第一海兵師団はガダルカナル上陸にあたりタイムオンターゲットの支援はとても望めない状況だったということで、近接航空支援は事実上不可能だった。やり方とやる気の両方が無い。

2015-12-07 18:29:37
Bunzo @Kominebunzo

第一海兵師団にとって幸運だったのはガ島の日本軍飛行場がほぼ完成しており、殆ど抵抗なく占領できたことだった。本来なら多少の攻防戦があると予想されていたのに無抵抗で手に落ちた飛行場に海兵隊の飛行隊が早速呼び込まれたものの、海兵隊航空隊の規模は極めて貧弱。動員と練成が遅れていた。

2015-12-07 18:40:42
Bunzo @Kominebunzo

そんな具合で一木支隊の攻撃に対して反撃に飛び立ったのは無爆装のF4Fが4機のみ。滑走路から3km先の砂洲にいる日本軍を自己の判断で銃撃せよとの単純な命令で飛び立っている。この攻撃は効果抜群とも無効とも言われるけれども要は「すぐそこだから、すぐわかるから」と地上銃撃が命じられた。

2015-12-07 18:53:38
Bunzo @Kominebunzo

一木支隊の攻撃から20日以上経っても状況は改善していない。ガ島飛行場の誘導路の外周近くで戦われた川口支隊の攻撃に間に合ったのはP--400が3機、これも銃声の下で「すぐそこ、わかるから」と命じられて飛んでいる。一木支隊より火力の充実した川口支隊をそんな調子で銃撃したらどうなるか。

2015-12-07 19:02:23
Bunzo @Kominebunzo

川口支隊のアッセンブリーエリア(と思われる)地点を銃撃したP-400 3機のうち2機は地上からの返り討ちに遭って緊急着陸し、反復攻撃したのは1機のみ。第一次大戦での塹壕銃撃機と同じように撃退されてしまう。この攻撃も賞賛されるものの効果はあくまで不明瞭。誤射が無いだけ幸運だった。

2015-12-07 19:18:30
Bunzo @Kominebunzo

ガ島の近接航空支援が多少なりともまともになったのは最後の最後。ではそれで問題が解決したのかといえば全く違う。1943年11月のタラワ島では今までに無い組織の進歩があり、上陸部隊には搭乗員出身の航空連絡将校が付き添い、上陸海岸火力管制班も同行した。飛行機も新型、組織もできたけれど。

2015-12-07 19:27:42
Bunzo @Kominebunzo

目標を確認した連絡将校が海岸火力管制班と協議して旗艦メリーランドに報告、司令部が判断して空母に連絡、飛行機が飛ぶ、という手続きはガ島とあんまり変わらない。改善点はもし飛行中の隊があれば旗艦から直接連絡を取ることもできた点。でも上陸地点の無線機が使い物にならない。陸軍とも通じない。

2015-12-07 19:34:29
Bunzo @Kominebunzo

そして飛行機隊は近接航空支援の訓練を受けていなかった。それだけではなくタラワ上陸作戦の演習にも飛行機隊は参加していない。理由は第一の任務が艦隊防空にあったから。ガ島からこれだけ時間が経過しているのに進歩はこの程度でしかなかった。この時期でさえ地上支援は米軍でも余技でしかなかった。

2015-12-07 19:40:38
Bunzo @Kominebunzo

最前線を表示するパネルは見えない、グリッド分けしても地面には升目が描かれていない、とにかく見えない、と悪条件だらけの近接航空支援の有様を知るとコリンズ少将が実行した野砲の直接射撃で目標に白燐弾を打ち込むやり方のメリットが腑に落ちる。友軍が何処にいても「目標はココ」と指し示せる。

2015-12-08 18:54:03
Bunzo @Kominebunzo

白燐弾が炸裂したポイントに爆弾を落とせばよく、友軍の位置や敵軍を探す必要が無いということは飛行機側の負担を大きく減らす。野砲でつついて目標を示し、そこに空から爆弾を落とすなら砲兵の悩みの種でもある弾薬も節約できる。砲兵と航空を射程距離で棲み分けさせるのとは違うやり方がそこにある。

2015-12-08 18:59:55
Bunzo @Kominebunzo

野砲から直接射撃で白燐弾を撃ち込んで目標を示して爆撃させるやり方は艦砲射撃よりも合理的だった。水上艦艇からの艦砲射撃は元々精度が低いばかりか艦からの直接照準か観測機による間接射撃となり、直接照準は当てにならず、観測射撃で試射弾が友軍に降り注ぐリスクがある。しかもレスポンスが悪い。

2015-12-08 20:13:42