【詩小説レッズ・エララ神話体系】病んだ血と、継がれる熱(前半部)
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【更新】スタカンスタカン!スタカン!(se)詩小説・レッズ・エララ神話体系、久々に更新いたします。実況ヘイト感想ブチマケタグは #レッズエララ でどうぞよろしくおねがいします。
2015-11-17 07:25:36押し殺すほどの熱量、しかしもはや止まらん! 駆ける、駆ける、意識は駆ける! ニューロンのスパーク、シナプスは爆ぜる。思考に亀裂が走る。ひび割れるかのように。だがそれを気にしていてどうする。駆ける、駆ける、ただひたすらに! 思考さえなくして!0
2015-11-17 07:26:50詩小説、レッズ・エララ神話体系、ほうき星町シリーズ、月読老師の昔話 「病んだ血と、継がれる熱」第一夜
2015-11-17 07:28:17異変がおこったのはいつからだったか。あの戦時中か、それとも戦後処理のごたごたか。もしくは戦前の異様な緊張感の時点ですでに母体はばらまかれていたか、それとも……。1
2015-11-17 07:29:32だが世界は常に史的に混乱している。ひとりのカオスが別のひとのカオスにバタフライ効果的に伝播し、電波し、この世はまさしく脳内めいて、うごめいて。2
2015-11-17 07:31:06それに、いつから、を検討してもしょうがないのかもしれない。今、の混乱をどうにかして沈めぬことには、どうにもならないのだから。そう、ことは対処療法におなじ。 ――月読の精神は、混乱していた。3
2015-11-17 07:32:33月読は、凪ぐことの秀才であった。それを技巧と呼ぶなかれ。そして今彼は、雑踏の中、宿への帰り道。まるで古代都市めいてざわざわついた雑踏は、衆愚の吐息と倦怠でざわざわ。鈍色のうごめき、重い足取り、侮蔑してしかるべき民衆、侮蔑してしかるべき街。4
2015-11-17 07:34:28手に持っているトートバックには、水とコメ。東洋系魔術師である月読は、実際それくらいあれば腹は結構どうにかなる。節制は美である。このようなときはとくに。精神の混乱のときにぁ、オチツキが大事だかんね。6
2015-11-17 07:39:59そうはいうても、このキツさはかなり初めて級であった。言外の思考に「死にたい」が混じることについて、実は月読はそのヤバさに気づいていねえ。無意識ていうのはこわい。7
2015-11-17 07:41:54ともかく、帰る。帰ってどーなるもんでもないが、宿に帰る。そして……寝る。とりたてて、クンフーをするわけでなく。しなくちゃならんのはわかっとうが、できん。8
2015-11-17 07:43:371日2日、あるいは一週間程度、クンフーを休んでいても、いまや相当な高みにある月読にとっては、その程度の休みはすぐに取り戻せるぜ、といわんばかりのアレであるが。それでも3週間というのは、ねじれてきとるのではないか。9
2015-11-17 07:44:55それは儂がよくわかっとるのだ……と月読はぼんやり。真昼の月を思うかのようなぼんやりさで思う。今の手前がいかんのはわかっている。ただ、壊れかけたキャタピラめいて、ねばっこい動きしかできんのである あるいは、飯を求めて動くという時点で、既に御の字かもしれんがね。11
2015-11-17 07:46:19詩小説、レッズ・エララ神話体系、ほうき星町シリーズ、月読老師の昔話 「病んだ血と、継がれる熱」第二夜
2015-11-22 06:01:03世界はつねに混乱しとるが、常に英雄ありけり。天に羽の生えた虎が舞い、地に落下するはかつて的な龍。キリモミキリモミ、龍が落ちる。そうして時代は変わっていく。これは魔法的戦争のメタファーであり、人類戦争のメタファーでもある。ま、ていうか、実際虎も龍も落ちてるような世界なんだけどさ。1
2015-11-22 06:03:05実際シリアスな戦争モヨウなんだが、それを大局マクロから眺めてみると、実際はコメディめいてみえるっちゅうことは、よくある話で。とはいうても、結局はミクロは悲惨であるのにも代わりはなく、所詮ミクロの総体がマクロなんだっちゅうはなしで。2
2015-11-22 06:06:03しかしまあ、人間ひとりに世界が扱いきれるわけもなく。扱いきれないからこそ、世界っちゅう概念があるともいえて。砂山のように、自分が管理できる範囲であればよかったものの……。3
2015-11-22 06:09:07可能性とは、とどのつまり、そのような「管理できねえ、他の砂山が無数」がぶつかりあって、セックスしあって、時に幻惑されて、友達になって、なんだかんだで、あーだこうだで、そんにゃもんにゃで。4
2015-11-22 06:12:06感じだけわかってくれや。ひとことでいえたら苦労はしねえよ。 ――苦労はしねえよ。このあたりに、月読の「はぁ……」的沈鬱はあったのだった。5
2015-11-22 06:15:05実際、当代的英雄のひとりだった。いましょぼくれてる月読は。天高く魔術を駆使し、ありとあらゆる困難をバーっとはねのけ、人を救い、悪しき魔獣をけちらし、混乱をしずめ……。6
2015-11-22 06:18:02それに疲れた、というのが、まあ大体のところである。どんなに救っても、次に救うべきもんがでてきて。倒したもんにうらまれて。うらまれてはそいつをまた助けようとして。……うん、このあたりでちょいとおかしいな? どうして倒したもんを助ける? 7
2015-11-22 06:21:05それを偽善とよぶんだろうが、と仰るあなたは正統。別に月読だって、超公正だっちゅう話でもねえ。ただ、相手の言い分にも、一理はあって。フォローをしておこうとはじめに思うたのがいかんかったか。8
2015-11-22 06:24:06そうしてひとは、身動きとれんくなっていくのだ。かくして、月読の魔術は荒くなっていく。実際苦難をそれでもぶちのめしていけるものの、疲れは彼自身のなかで、かなりヒートしていく。ヒートしていくっちゅうのは、熱がこもるということだ。9
2015-11-22 06:27:04その熱が、どこへもいかねえ。いづれ……体を苛む。 理屈としては、だいたいこんなとこであった。10
2015-11-22 06:30:15