「オタクの集合的人権」についてのつぶやき
実際問題として、オタクの集団的人権が危機に瀕するのは二つの場合が考えられる。一つは、仮に、「オタクは認知症」というような差別的な発言があった場合。ここで発言者の観念において「オタク」とされる実在の人々の全てに対して「認知症」という判断がなされている。(続)
2011-01-23 01:49:09それを受け、「オタク」であることを自認する人は、不当に差別されると思うかもしれないし、そうでないかもしれない。ここで、問題発言の発言者が想定していた「オタク」と「オタク」であることを自認する人々の範囲は一致しないかもしれないが、この問題はおくとして・・(続)
2011-01-23 01:49:51重要なのは、「オタクは認知症」という場合に、発言者は現実に存在するオタクたちを念頭において、その発言を発話しているということだ。名指されているのは、直接的に明白に、実在するオタクたちである。(続)
2011-01-23 01:50:14もう一つ、「オタクの集団的人権」が問題になりうるのは、次のような場合。すなわち「漫画などの虚構表現において、登場人物の一人であるオタクが、オタクであることを理由として、不当に差別される」そういう表現においてである。(続)
2011-01-23 01:50:37虚構の表現の中で、登場人物のオタクの人権が侵害されていたとして、それは実在するオタクたちの人権を侵害してるのだろうか?(これが、漫画の中で少女が犯されるのは少女一般に対する人権侵害とする発想であってぼくが問題視しているのはこちらだ)(続)
2011-01-23 01:51:47当然、虚構の中のオタクと、実在のオタクたちは全くの別人であるから、直接的な人権侵害は起こらない。ここで人権の侵害を主張するには、一種の橋渡しが必要になる。(続)
2011-01-23 01:52:01橋渡しは、たとえば次のように行われるだろう。この虚構表現はオタクに対する差別的なイデオロギーを含んでいる。そのような表現が流布することによってそのイデオロギーは社会に行き渡り、いずれ実在するオタクたちを差別するに違いない。(続)
2011-01-23 01:52:23あるいは、虚構表現を読者が読み取りそれを享受する過程において、すでにオタクに対する差別を実践しているのである。つまり表現を享受することそのものが差別である。そういう橋渡しも可能である。(続)
2011-01-23 01:53:29これらは、実情に即しているのだろうか?本当のことなのだろうか?ぼくには、はっきりとはわからないけれども、しかし、表現の自由、また知る権利を守るためには、そのような「差別的な」表現が公になること自体は認めなければならないということだ。(続)
2011-01-23 01:54:08その上で、反論し、議論し、落としどころを見つけ、あるいはちゃぶ台をひっくり返して、より高みの次元での合意を模索すべきなのだと思う。(終わり)
2011-01-23 01:54:37しかし、集団的人権って本当にわかりにくいのだな。この考え方に統計的指標は関係ない。要は、漫画で女性が犯されていた場合に、とある実在の女性が、「私も女性なので、私が犯されたのも同然だ」と、主張するような発想だ。
2011-01-23 21:58:01これは非常に奇妙な発想に見えるかもしれない。だけど、たとえばかつての日本人の戦争責任を、現代を生きる若者が、ただ「日本人である」という理由によって、負う必要がある、というのに通じる考え方ではある。
2011-01-23 22:00:11つまり、個人の主体性、意志、責任を重んずるリベラルな立場では、「集団的人権」はお話にならない。しかし、コミュニティや集団また社会構造を重視する立場では、ある程度の説得力を持つ。
2011-01-23 22:02:48ところで、日本の現代の若者は、過去の戦争の責任を負う必要があるという論調は、戦争被害を受けた国の若者には、日本に過去の戦争の償いを要求できる権利があることを完全に認めるのだろうか。これにはぼくは違和感をおぼえるのだが、その正体がわからない。
2011-01-23 22:26:30集団的人権論に話を戻せば、これは、実在であれ非実在であれ、個が受けた人権侵害を、女性や子どもなど、同じ本質を持つ集団に拡張できるのかという議論だ。だから、「労働者の人権」など一般的な集団の人権は認められないのかという議論ではない。
2011-01-23 22:55:23ガンダムWでヒイロ・ユイはリリーナ・ドーリアンに向かって言った。「お前を殺す」と。この言説が、少女の集団的人権を侵害しているとする見解に説得力がないとしたら、それはリリーナが「ヒイロがガンダムパイロットである」という極秘事項を知ってしまったという文脈があるからだ。
2011-02-12 00:01:51虚構の表現において、登場するキャラに個別的な人格を認めることができれば、「集団的な人権を侵害している」という発想は基本的に生じない。それは実在する我々とは独立した「個人」の問題だからだ。
2011-02-12 00:02:47東京で老人が殺害された。それが老人の集団的人権を侵害していると見なされないのは、老人であることが、その本質的な動機であるかどうかわからないからだ。老人だから、そのことを理由に殺害されたとは思われないからだ。
2011-02-12 00:03:04都条例改正を推進した言説の一種に、表現に接した子どもが性虐待を受け入れなければならないと思い込む、と言うのがあったが、これは虚構の表現においてキャラと自分の存在を混同する、つまり、キャラが自分の存在と独立であると認められないというのが、前提である。
2011-02-12 00:03:30虚構表現の中で、キャラがどんなひどい仕打ちをうけ、それを喜んで受け入れていたとしても、それは読み手である自分とは関係がない。そのように読み手が思っているのであれば、問題は生じない。
2011-02-12 00:04:02表現の受け手が、虚構を虚構として認識して楽しむことができるかぎりにおいて、問題は生じ得ない、ということである。しかし、虚構を虚構として楽しむためには、一種のリテラシーが必要である。
2011-02-12 00:04:18