以上はin vitroでのウイルス粒子による感染の話。すでに述べた通り、in vivoではHTLV-1は主として細胞接着により感染し、その効率は、ウイルス粒子による感染に比べて10,000倍高いとのこと。これに対して、HIV-1では2倍程度の差しかないことがわかっている。
2016-01-25 19:25:10ここで重要なのは次の2つ。1つ目は、HAM/TSPの患者さんに逆転写酵素阻害剤を投与しても、その後のHTLV-1のプロウイルス(逆転写されて宿主に組み込まれたDNA)量があまり変化しないこと。
2016-01-25 19:32:022つ目は、HTLV-1感染直後に逆転写酵素阻害剤を投与しても、その後のプロウイルス量の増加にあまり変化がないこと。これらから分かるのは、ウイルス複製を阻害しても、HTLV-1の生体内での感染状態の成立と維持には、あまり影響がないということ。
2016-01-25 19:37:36これもすでに述べた通り、HTLV-1キャリアの血液中には、遊離のウイルス粒子はごく少数しか存在しない。HIVでは、ウイルス粒子が宿主のCD4+Tリンパ球を破壊するほどつくられ、次々と未感染リンパ球に感染してその数を増やすのに対し、HTLV-1は全く異なる戦略をとっている。
2016-01-25 19:42:56HTLV-1は、ウイルス粒子の複製と新たなリンパ球への感染よりも、プロウイルスとして潜んだ感染細胞に働きかけてクローナルに細胞自体を増殖させることで、自身の生き残りと感染状態の維持を図っていると考えられるのです。
2016-01-25 19:46:25そもそもの出発点となったこの疑問、まだきちんとした答えは見つかりません。ただ、HTLV-1が初感染時にウイルス血症を伴う爆発的な感染細胞の増加をきたさないので、急性感染症の症状を呈する免疫応答が起こらないのかな、という推測はできます。twitter.com/loquat_priest/…
2016-01-25 22:47:10そういや、HTLV-Iの急性感染症ってなんでないんだろ。乳児期の不顕性感染はわかるけど、成人してからのヒト–ヒト感染ってもしかしてないのか??
2016-01-06 16:53:52さて話を進める前に、ちょこっとだけ免疫のお話。「制御性T細胞(Treg)」と「CCR4」という2つのキーワードを知らないと、なんのこっちゃ??になるので。まずこちらをお読みください。 制御性T細胞は何をつたえているのか osaka-u.ac.jp/ja/news/snapsh…
2016-01-25 23:07:54CCR4とは「CCケモカイン受容体4」といい、細胞同士の信号のやりとりに使われるケモカインというタンパク質の受容体です。ケモカインはCCとCXCの2種類に大きく分けられますが、ここではあまり関係ないので割愛。
2016-01-25 23:16:14なんでこんな話をしたかというと、臨床的にATLの細胞のほとんどがCD4+CD25+というTregの性質を有していて、さらにそのほとんどがCCR4陽性で、Tregのマスター遺伝子と言われるFoxP3を発現しているからです。まるで、ATL細胞がTregそのものかのように。
2016-01-25 23:19:04ちなみに蛇足ですが、ATLLの診断をつけるとき、HTLV-1がモノクローナルに組み込まれていることで確定診断としますが、ATLLだろうと当たりをつけるには、CD4+CD25+を確認すればほぼそれで決まりに近かったりします。
2016-01-25 23:22:06これから、現時点で枇杷が理解できた範囲で、HTLV-1がどうやってATLLを引き起こすか?の話をします。まず、HTLV-1の遺伝子の構造と、つくられるタンパク質の一覧を図で。 pic.twitter.com/T7j56q9BLy
2016-01-25 23:25:51