宮崎駿とオリジナリティについての断片的考察

先日「天空の城ラピュタ」と「魔女の宅急便」がTV放映された時の、宮崎駿についての呟きです。
47
ブックストア ウディ本舗 @woody_honpo

若い頃の宮崎駿は、同じようなパターンやモチーフを(意識的に)何度も繰り返す人だった。初めて原作のない完全オリジナル長編として制作された「天空の城ラピュタ」は、それまでの宮崎駿の黄金パターンの総決算のような作品で、これを境に宮崎駿は2度と同じパターンの作品を作らない作風に転換した。

2016-01-16 16:30:41
ブックストア ウディ本舗 @woody_honpo

宮崎駿を「天空の城ラピュタ」を境に前期と後期に分ける評論が見当たらないのは不思議に感じる。こんなに明白な指標はないのに。若き日の宮崎駿はダイナミックなアクションと緻密な作劇を見せる日本人離れしたエンタテインメント作家として知られていた。しかしラピュタの後、その得意技は封印される。

2016-01-16 16:47:54
ブックストア ウディ本舗 @woody_honpo

「天空の城ラピュタ」の元ネタの一つは、ムー・ブックス(😄)の「人類は核戦争で一度滅んだ」だと思う。この指摘は見たことがないから、私が初めてかな?ナウシカを作る前の宮崎駿に、ラーマーヤナを題材にした合作アニメの話があり「断ったけれど、本だけ貰って読んだ」とインタビューで語っていた。

2016-01-17 16:39:11
ブックストア ウディ本舗 @woody_honpo

「人類は核戦争で一度滅んだ」は、古代インドの叙事詩「ラーマーヤナ」の記述は超古代文明の実在を示している、というトンデモ系の本だけれど、翻訳が南山宏だから、割とスジが良い。UFOや超古代文明の本を読むなら、南山宏は比較的信頼できるという常識(?)も、今の人は、もう知らないのかなぁ?

2016-01-17 16:51:33
ブックストア ウディ本舗 @woody_honpo

「魔女の宅急便」は、ナウシカやトトロのように「自然と人間」の本質に踏み込もうとはしない、ミニマリズム文学のような作品だったので、初見の時は少し物足りなかったのだけれど、今ではとても好きだ。キキの日常を描く、細やかなディテールが素晴らしい。宮崎駿作品の中で、一番好きかもしれない。

2016-01-23 00:11:10
ブックストア ウディ本舗 @woody_honpo

「魔女の宅急便」は、宮崎駿のイメージが余りにも強くなってしまったので、原作者の角野栄子は複雑な心境なのではないかと思う。宮崎駿は、原作に忠実というよりも、完全に自分に引き寄せてアレンジしてしまうタイプで、しばしば「原作への敬意が無いのではないか?」とすら感じさせる人だから。

2016-01-23 00:19:17
ブックストア ウディ本舗 @woody_honpo

自作のイメージが乗っ取られた感じがして複雑な心境、という意味では「耳をすませば」や「コクリコ坂から」の作者も同じかもしれない。他人の作品から「核」を貰って自分の世界を構築するというのは、宮崎駿の昔からの手法で、そこに罪悪感はない。と言うより罪悪ではなく「創作の宿命」と考えている。

2016-01-23 07:45:22
ブックストア ウディ本舗 @woody_honpo

身も蓋も無い言い方をすると、本人は決して口にしないが「乗っ取られてしまうのは、その程度の作品だからだ」と思っているのではないか?「その程度」というのは「光るモノはあるが思想的にも表現的にもレベルが低い」ということで「それじゃダメなのだ」という姿勢を今までの宮崎駿の発言から感じる。

2016-01-23 08:16:15
ブックストア ウディ本舗 @woody_honpo

この宮崎駿の「原作に対するスタンス」は、彼の創作の出発点が「世界の名作」を原作にアニメーション化していた東映動画にあるからなのかもしれない。ディズニーもそうだけれど、そこでは原作(多くは著作権のきれた名作)は、多くのスタッフから検証を受け、時には大胆に改変されるのが当然だからだ。

2016-01-23 08:38:42
ブックストア ウディ本舗 @woody_honpo

業界に宮崎駿の名を轟かせたのは「長靴をはいた猫」のクライマックスを手掛けたことで、いちスタッフだった宮崎駿は「こんな受け身の主人公にお姫様が惚れるハズがない」と言って、原作を書き変え自ら作画した。主人公が急にヒーローとなってしまう、このクライマックスの面白さに子供たちは熱狂した。

2016-01-23 09:02:19
ブックストア ウディ本舗 @woody_honpo

演出家としての宮崎駿は、同時に優れたアニメーターでもあった。彼は、アニメーターから上がってきた作画がダメな時は、リテイクに出さないで自分で直してしまう。これはアニメーターにとっては結構ショックなことでもあるようだ。この演出手法は、彼の「原作改変グセ」と、どこか通じるものがある。

2016-01-23 09:34:16
ブックストア ウディ本舗 @woody_honpo

「風の谷のナウシカ」に参加した、あるアニメーター(若手の実力派と言われていた)は、ナウシカでの仕事の感想を聞かれて、(自分の絵はほとんど残っていないので)「参加したという意識はあまりないです」と答えていた。

2016-01-23 09:37:32
ブックストア ウディ本舗 @woody_honpo

話しが逸れるけれど、絵を描かない演出家である高畑勲は、スケジュールも予算も無視してアニメーターに際限なく描き直しを命じた。「となりの山田君」の後に「千と千尋の神隠し」の制作に入ろうとするとスタッフはボロボロの状態で、宮崎駿は「高畑さんの通った後はぺんぺん草も生えない」と激怒した。

2016-01-23 11:07:16
ブックストア ウディ本舗 @woody_honpo

「じゃりん子チエ」の美術監督山本二三が大阪の街並みの絵を見せると、高畑勲は「山本さんよく観察してごらん。屋根瓦って一枚一枚色が違うんだよ?」と言った。「火垂るの墓」で米を米櫃にザーッといれるシーンでは、アニメーターに「米粒は一つ一つバラバラの方を向いている筈だ」とダメ出しをした。

2016-01-23 11:16:27
ブックストア ウディ本舗 @woody_honpo

東映動画初期の名アニメーターで高畑勲と宮崎駿の師匠でもある森やすじは、他のアニメーターと違って、演出家としては高畑勲の方が「やり易い」と語っていた。「高畑君には、最後には『そんなにゴチャゴチャ言うなら、お前が描いてみろ!』と言えるけど、宮崎君にそう言うと自分で描いちゃうからな」。

2016-01-23 12:41:29
ブックストア ウディ本舗 @woody_honpo

「風の帰る場所 ナウシカから千尋までの軌跡」 渋谷陽一によって12年間を費やして行われた、宮崎駿のロングインタビューを完全ノーカットで収録。創作の秘密を、宮崎駿自身の言葉で解き明かす。 store.south-sign.com/products/detai… pic.twitter.com/htvW7bjuBN

2016-01-16 17:07:25
拡大
ブックストア ウディ本舗 @woody_honpo

「宮崎駿の<世界> 増補決定版」切通理作 東映動画時代の「大陽の王子ホルスの大冒険」から「崖の上のポニョ」まで、宮崎駿の軌跡と全作品を解き明かした、宮崎駿研究の基本書にして決定版。 store.south-sign.com/products/detai… pic.twitter.com/snuo5621il

2016-01-16 17:14:43
拡大