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デイドリーム・ネイション #5

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

監視カメラ映像をあらためる。「避難が終わってきているな」アイザワは言った。「そろそろお前もオイトマだ。ローニン・リーグについてけ。そうすりゃ多少は長生きできるさ。次に逮捕されるまでの間」「バカ」タネコは呟いた。アイザワを繋ぎ止めているのはタネコのタイピングだ。それがわかる。

2016-03-03 23:48:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「見ろ。お迎えがきたぞ」二人はタネコ側UNIXルームの映像を見た。クロマと女のニンジャが突入してきた。女のニンジャは壁、机、天井を蹴り渡りながらカタナをふるい、一息のうちに室内のクローンヤクザ係官を全滅させた。クロマがタネコの身体を揺さぶる。「じゃあな」アイザワはウインクした。

2016-03-03 23:52:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

タネコは頷いた。アイザワはニヤリと笑い、キツネ・サインした。タネコはログアウト処理を開始した……その肩越し、白い神が彼らに焦点をあわせた。タネコは訝しんだ。喉に魚の小骨が刺さったような痛痒を覚えた。Y200工兵がアケガに有線で外部ネットワークとのバイパスを物理接続0100101

2016-03-03 23:55:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

0010011「ンアーッ!」タネコは飛び起きた。クロマは後ろで受け止めた。「タネコ=サン。無事ですか。退避を……」「待て……ダメだ。ダメ。ダメだ」クロマを振り返り、鼻血を拭う。「ダメだ。これじゃダメなんだ。それに、アイザワが」「アイザワ=サンは、もう」「わかってる!だけどダメだ」

2016-03-03 23:57:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「逃げンだよ!」女がイライラとタバコに火をつけた。「迎えに来たンだぞ」「逃がす」タネコはかぶせるように言った。「状況が変わった。もう一回やる」「え」クロマは瞬きした。「しかし」「大丈夫。責任を果たす。それに」タネコは呟いた。「やっぱり好きなんだ。アイツの事」彼女は再び直結した。

2016-03-04 00:00:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

0101011「バカ野郎!」アイザワは狼狽し、タネコを怒鳴った。「あとコンマ何秒で消えるとこだった?首根っこ掴んでやった恩人に対してご挨拶だね」「恩を着せるんじゃねえ!状況わかってンのか!」二人の周囲にはネオサイタマの全景が可視化されている。外部ネットワークとの接続が確立された。

2016-03-04 00:05:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

そして白い月の神……今は名前がわかる……アルゴスが……身をもたげる。情報がニューロンを駆ける。アルゴスの注意のかなりの割合が、アケガ・ターミナルから脱出した存在に向いている。アルゴスが認識するその者の名は「ニンジャスレイヤー」だ。アルゴスに……アマクダリにとって好ましくない相手。

2016-03-04 00:07:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アルゴスは瞬時にその座標情報を巨大な山に送る。その区域のセキュリティ密度の濃さはさながらブラックホールの一歩手前。そこに何らかの存在が浮かび上がる。放電を繰り返し、ゆっくりと上昇してゆく。人間……ニンジャ……「アガメムノン」……「何だありゃア」アイザワは思わず呟いた。

2016-03-04 00:10:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「市民の皆様。ご協力を感謝致します」リラグゼーション音楽と停電通知放送が周辺地域に響き渡った。カスミガセキが闇に包まれた。「アガメムノン」だけが光り輝いていた。彼は吸い上げた光を放出した。稲妻のエネルギーが空に跳ね返り、放射状のパルスが拡散し、逃げる「ニンジャスレイヤー」を射た。

2016-03-04 00:18:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

何が起きた?だがそれを確かめる時間はない。アルゴスが行動を開始する。「一発でやられる」タネコがアイザワに言った。「せめてもうほんの少し持ちこたえないと、努力が無駄になる。まだ全員逃げきれてない。掴まって、辿られて、一網打尽になる。だから戻った」「俺一人でやってみせるッてのによ」

2016-03-04 00:19:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「嘘つけ!消えかけてた死に損ない!」「だいたい、せっかく俺が助けたのに、むざむざ戻ってきやがって!」「アンタだって同じだろ!」タネコは言い返した。アイザワは答えを失った。「オーケイ、俺の負けだ」彼は手を差し伸べた。タネコは物理世界を振り返り、切断した。そしてアイザワの手を取った。

2016-03-04 00:20:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

UNIXルームでタネコは心停止した。クロマと女ニンジャ、レッドハッグは、少しの躊躇ののち、その場を後にし、脱出に向かった。それでいい。タネコはアイザワと共に飛翔した。アルゴスが見咎めた。アケガにのばしかけていた手を戻し、二人をめがけた。「行くぜ」アイザワが呟く。「3.2.1!」

2016-03-04 00:23:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ゴウ。電子轟音がコトダマ空間に風を唸らせ、01の分子を散らす巨腕が遅い来た。二人は速度を一瞬緩め、それから急加速した。……共に無事だ。だが逆の腕が迫って来た。「コトダマと共にあれ」タネコはハッカークランのチャントを口にした。「コトダマと共にあれ」アイザワも応じた。

2016-03-04 00:28:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

情報消滅の運命が彼らを捉える。通常であればその筈だった。0と1の気流の隙間に、何らかの道が、確かに見えた。彼らは喰らいついた。速度が数倍に加速した。アルゴスは再び捕らえ損ねた。二人は何者かがアリアドネの糸めいて彼らを引き上げようとしている事に気づいた。必死にそれに応えた……。

2016-03-04 00:31:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

0101001001010「グワーッ!」「ンアーッ!」二人は白い床に衝突し、跳ね返り、数十メートル浮き上がって、再び落下した。その時には白いソファが無事、生成されており、二人はそこへすっぽりと収まった。「チャをどうぞ」アルビノの男が歩いてくる。片手で杖を突き、片手にポットを持ち。

2016-03-04 00:33:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何だ。アンタは」アイザワは電子的に柔らかいソファから身を起こそうとした。アルビノの男はそれを制した。「おもてなしを受けてください。どのみち、貴方がたはもはや現世に干渉する事ができない」「ハ……まるでサンズ・リバーだ」タネコは肩をすくめようとした。

2016-03-04 00:37:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アルビノの男は言葉を吟味しているようだった。やがて首を振った。「私の事はエシオとお呼びください。よろしければ、お名前を」「……タネコ」「アイザワだ」「成る程」エシオは頷いた。そしてポットのチャを白い茶器に淹れた。「なにか……私が貴方がたの自殺の邪魔をしたのであれば、お詫びします」

2016-03-04 00:41:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

KRA-TOOOOOM!ニンジャスレイヤーは雷撃で生じた球状の白色パルス爆発を背後数インチに、前転して手を突き、再び走り出す。当然ヘヴィレインの追跡など出来はしない。これが「活動限界」……アガメムノンによる制裁の始まりだ。インフラを制し、電子ネットワークを制した現人神の力だ。

2016-03-04 00:46:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

かつてスパルタカスを殺害したニンジャスレイヤーは、その決断的勢いをもってカスミガセキ・ジグラットに挑んだ。磁気嵐消失に伴うアガメムノンの絶対の力を思い知らされたのはその時だ。もはや地上に安息の地は無い。物理的にも電子的にもだ。IRC通信すらも不可能となり、分断され、孤立した。

2016-03-04 00:51:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

KRA-TOOOOOOM!再びの雷撃だ。着弾地点は先程より数メートル後ろだ。これだけ距離が稼げれば、しかるべきポイントで地下へ逃れる事が可能である。ニンジャスレイヤーは走り続けた。実際このタイミングでの行動は時期尚早に過ぎる。危険はあまりに大きかった。しかし動かざるを得なかった。

2016-03-04 00:55:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アマクダリによって集められ、幽閉された人々が、それを救出しようとする者達が現れた事を理由に殲滅される……そんなニンジャの暴虐に関し、全ての情報が揃った上でなお看過する事など、ニンジャスレイヤーにもナンシーにも出来なかった。

2016-03-04 01:00:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

冒したリスクは大きく、起こした行動がどれだけセクトに楔を打てたかも未知数だ。だが彼は動かずにはいられないだろう。そして出来るならば、それをさせたツケを、必ずや、アマクダリ・セクトに支払わせようとするだろう。KRATOOOM!三度目の落雷。ニンジャスレイヤーは地下水路に跳び降りた。

2016-03-04 01:02:39
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

BRATATATA……BRATATAT……「イヤーッ!」「「アバーッ!」」「クオオオー!」「イヤーッ!」「グワーッ!」Y200トルーパーの首が刎ね飛ばされ、ヤミヨは脳漿と電解液を噴き上げる。ローニン達はアケガ・ターミナルを包囲する兵力に穴を穿ち、収容者と共に市中へ流出していった。

2016-03-04 01:07:44