デイドリーム・ネイション #5
BRATATATATA!BRATATATATA……「AAAARGH!」路地裏に駆け込もうとするクロマに、巨大な甲虫じみた人型マシンが立ち塞がる。キュイラジアー級、暴徒鎮圧ロボニンジャである。レッドハッグは最後のヤミヨを斬り伏せたところだ。舌打ちし、そちらを見やった。
2016-03-04 01:10:07「ゴアアア!」そこへ、白い毛皮に身を覆った四ツ目の怪物が跳びかかった。キュイラジアーの鋼の装甲を爪で切り裂き、牙を立てた。「アイエエエ!」クロマが恐慌に陥った。「敵じゃない!今回の仕事仲間。説明は後だよ」レッドハッグが叫んだ。確かにクロマの周辺のローニン達は恐怖に打ち克っていた。
2016-03-04 01:12:23「とっとと」白い怪物はキュイラジアーにオスモウめいて押し勝ち、ビル壁に叩きつけ、めり込ませながら吼えた。「行けッ!」「アイアイ、アイ」レッドハッグは手を振って頷くと、ローニン達を走らせた。クロマも続いた。レッドハッグは眉根を寄せた。「アンタ、今ならそこらに紛れちまえば逃げられる」
2016-03-04 01:14:58「逃げない」クロマは即答した。彼の腕には血まみれの「浪人」の腕章がある。チカマツが身につけていたものだ。チカマツは死んだ。せめて、チカマツが殉じたものは何だったのか、ネオサイタマは今どうなっているのか、見定めるまで、この地を離れる気にはなれなかった。「そうかい。好きにしな」
2016-03-04 01:18:32クロマは頷き、他のローニン達に続いた。後で彼が確かめたことには、このレッドハッグと、白い獣……フェイタルの二人だけが、ローニン・リーグの貴重なヨージンボーであり、他は皆、必然から望まぬままに武器を取る事になった者達ばかりだった。やがてクロマは廃墟の裏口に滑り込み、アジトへ逃れた。
2016-03-04 01:22:59今や突発的な連続の落雷も止み、カスミガセキ一帯の電力供給も回復していた。空には黄金立方体がゆっくりと自転し、路地から路地へ0と1の風が吹き渡っていた。全ては再び元通り取り繕われた。元通り。……本当にそうだろうか。アケガ・ターミナルが吹きあげる黒煙は、柱のように曇天に繋がっていた。
2016-03-04 01:26:50