父親談義

シャオイー(小伊) @applex002

談笑する人の服装。建物の内装。一目見ただけで一部の富裕層にしか踏み入ることが許されないと解る上等なホテルのロビーに壮年の男が一人柱を背にして立っている。男もまた、この煌びやかで上品な景観を形成するに相応しい身形をしていた。男はゴールドの腕時計に視線を落とすと入口へと視線を向けた。

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@T_B_Vincent 近付いてくる人影に気が付くと男も相手に歩み寄る。『いやぁとんでもない、私も今し方着いたところですよ』男は厳格な顔つきからは想像もつかない程の柔和な笑みを浮かべると片手を差し出す。『お久しぶりですな、ロード・ウィリアムズ。今日をどれほど楽しみにしたことか』

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@T_B_Vincent 『それは嬉しい限りですな。（はっは、と上品に笑いを零すと奥を指し示し） 積もる話もあるでしょう、レストランに席を取ってあります。これが中々美味いと評判でしてね。いやいや、侯爵の舌に合うかはわかりませんがね（相手を導くように歩き出し）』

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@T_B_Vincent ホテルの奥にはゆったりとした音楽がかかる雰囲気の良いレストランが設置されていた。男は迎えてくれたボーイに名を告げると奥の個室へと案内される。『やぁ、私も此処の料理を楽しみにしていたんですよ。ささ、どうぞ（奥の席を手で示し）』

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@T_B_Vincent 『はっはっ、そうでしょう』自身も外套を脱ぎ席に着くと相手の言葉ににこやかに頷いた。『先日の法廷は見事な御判決でしたな。一審が一審だっただけに肝を冷やしていましたが、いやぁ、我々警察一同、侯爵への感謝の想いが尽きませんぞ』

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@T_B_Vincent 『流石ですな。では、その至極正確な判断に是非とも乾杯させて頂きたい。(ボーイが用意した食前酒を手に掲げ)侯爵にお褒め頂けるとは恐縮ですな。やれ、その噂とやらが大事な会議の書類をシュレッディングしてしまった件でなければ良いのですがね(はは、と冗談を交え)』

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@T_B_Vincent 『(相手の言葉に豪快に笑い)はっは、いや、失礼。部下が優秀なものでどうやら今の話は侯爵の耳には届いていなかったようで安心しましたよ。侯爵もどうぞお気になさらず、今のはほんの冗談、ジョークと言うやつですぞ』

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@T_B_Vincent 『うむ、では我々の敬愛なる法の番人の英断に、……あぁ、あと私の可愛いアンジュの誕生日に、乾杯』相手の視線を受けグラスを高く掲げた。それを合図にほどなくしてボーイが料理を運んでくる。

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@T_B_Vincent 『いえ、今日日直ぐにという訳ではありませんが、あとほんの5ヶ月と5日先の話です。はて、侯爵は娘にお会い頂いたことがあったでしょうかね。……見ます？わたしの可愛い可愛い天使ですぞ』そういうと男は相手の返事も聞かずに胸ポケットから一枚の写真を取り出した。

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@T_B_Vincent 男が差し出した写真には白い髪、白い肌。まるで天使の和毛が人の姿を得たように愛らしい少女の安らかな寝顔が映っていた。『いやいや、気がつけばすぐで……おっと、間違えました。こちらです』

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@T_B_Vincent ははは、と笑いながら代わりに差し出した写真には先ほどの少女がカメラに向かってにこやかに微笑む姿が映っている。

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@T_B_Vincent 『そうでしょうとも！！いやぁ、我が娘ながら誰が見てもどんな子よりも愛らしく気高くお転婆でもうほんとに可愛くて可愛くて目に入れても痛くないんですよ。見てくだされ、この美しい笑顔！！まるで神が人の世界に誤って落としてしまったかのような天使の微笑み！！』

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@T_B_Vincent 『いやはや、早いもので12月で17歳を迎えます。ほんと、……はやいもので……うぅ、大変な思いもありましたがもう17歳…そうかぁ、アンジュ、どこに出しても恥ずかしくない立派な女性になって……パパは嬉しいぞ』

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@T_B_Vincent 『ええ、そうでしょうとも！少し前まで片手で抱いても鳥の羽よりも軽かったアンジュも気がつけばもう17歳。ああ、幼い頃のアンジュは本当に素直で愛らしかったのですよ。私が仕事で忙しくしていようとも家に帰れば無垢な笑顔で"パパ"、"パパ"と抱きついてきましてね』