オカルト探偵あきつ丸 -膾-

竹村京さん(@kyou_takemura)の書いてくださった、落ちぬい二次のオカルト探偵あきつ丸シリーズです。 今回は艦娘拉致の疑惑についてのお話し。 是非ご堪能くださいませ! 続きを読む
0

はじめに

竹村京 @kyou_takemura

#落ちぬい二次 、はじまります。本作は #不知火に落ち度はない 及び #人造人間あきつ丸 の二次創作であり、オフィシャルではありません。意見、指摘は #落ちぬい タグへお願いします。

2016-03-21 22:37:54

本編

竹村京 @kyou_takemura

最近、艦娘をより身近に感じてもらうという目的のもと、艦娘が民間企業に出向する事がままある。あくまで知名度アップのためのキャンペーンで、出向といっても一日駅長のようなものなので民間からの給料は出ない。#落ちぬい二次

2016-03-21 22:39:40
竹村京 @kyou_takemura

これがなかなか好評で、特に華やかな容姿の練習巡洋艦鹿島が出向したコンビニは株価が急上昇したという話もある。 だが、それによって悲劇が起きる。 『艦娘三名が拉致されました。駆逐艦文月と漣、軽巡五十鈴です』#落ちぬい二次

2016-03-21 22:40:35
竹村京 @kyou_takemura

彼女らも広報のため民間企業へ出向する予定だったのだが、その通勤時に基地と街の間で拉致されたのだという。#落ちぬい二次

2016-03-21 22:41:38
竹村京 @kyou_takemura

彼女たちが所属する鎮守府は横須賀や呉などといういわゆる海軍の街ではない、ひなびた地域にぽつんと所在する小規模なものだ。艦娘のみを運用するならば大規模な港湾施設は必要なく、地上設備は全て合わせても校庭付きの小学校程度あれば充分である。#落ちぬい二次

2016-03-21 22:42:45
竹村京 @kyou_takemura

そのためあちこちの海沿いに小規模な鎮守府が設置されたが、それらは設置しやすい代わりに防備が手薄だった。大規模な施設ならば人的にも経済的にも地域と深く結びつくが、小規模であればそれが希薄になる。#落ちぬい二次

2016-03-21 22:43:55
竹村京 @kyou_takemura

地域からは基地にどんな人間が勤務しているのかわからない。基地からは地域の雰囲気や情勢がわからない。そして人手不足から充分な警備も敷かれていない。地域との交流が濃密であれば話は別であるが、この鎮守府はほとんど孤立しており、地域が注意を払う事はなかった。#落ちぬい二次

2016-03-21 22:44:25
竹村京 @kyou_takemura

基地自体の警備が手薄であるのだから、外出した艦娘の警備は無きに等しい。人的・資金的に仕方がないとはいえ、その気になればいくらでも襲える状態だった。 あきつ丸への命令はこの三名の保護、もしくは足取りの調査であった。#落ちぬい二次

2016-03-21 22:45:31
竹村京 @kyou_takemura

翌日、その鎮守府近くの市街地にて。 プラカードを掲げて署名を募る女性――活動家。少し掠れた声で反艦娘の署名を募り、行き交う人々にことごとく避けられている。#落ちぬい二次

2016-03-21 22:46:42
竹村京 @kyou_takemura

人垣を割り開くささやかなモーセのような女活動家に、一人の女性がおずおずと近付いてゆく。地味なおかっぱ頭に黒のタートルネック、短めのスカートに黒のレギンス、小さなバッグ。多少カジュアルな喪服のようだった。#落ちぬい二次

2016-03-21 22:47:41
竹村京 @kyou_takemura

「あの……すみません」 「艦娘廃止の署名をお願いします!」 活動家は署名用紙を挟んだバインダーを押し付けるが、黒づくめの女はそれを無視して話しかける。#落ちぬい二次

2016-03-21 22:49:45
竹村京 @kyou_takemura

「ちょっとお聞きしたいんですけど……」 「女性差別の艦娘なんて廃止すべきです!女性を戦地に送り出して、男性は安全な陸地で命令を下しているんなんて差別に他なりません!」 活動家の方も黒づくめを無視してまくしたてる。ついに黒づくめは声を荒げた。#落ちぬい二次

2016-03-21 22:50:54
竹村京 @kyou_takemura

「あの!」 「ちっ……何ですか、署名するの、しないの?」 活動家は露骨に嫌な顔をしてみせる。 「私、実は艦娘の適性があるって入隊を勧められてて……」 それを聞いて活動家の目の色が変わる。敵対の色だ。#落ちぬい二次

2016-03-21 22:51:48
竹村京 @kyou_takemura

「でも海軍の人も周りの人もいいことしか言わないから、逆にちょっと怖くなっちゃって……だから、その、違う意見も聞いてみたいと思って」 「そういう事ですか。ええ、艦娘になんてならない方がいいです。そんなのは男性の軍人に任せておけばいいんです」#落ちぬい二次

2016-03-21 22:52:50
竹村京 @kyou_takemura

気の弱そうな黒づくめを自分の側に引き込めそうだと判断したか、態度が一変して口調が丁寧になっている。 「でも、艦娘じゃないと深海棲艦に勝てないって」#落ちぬい二次

2016-03-21 22:53:15
竹村京 @kyou_takemura

「それは政府のウソです。事実、昔からある軍艦でだって深海棲艦に勝ててるんですよ。あなたが命を投げ出す必要なんて本当はないんです」#落ちぬい二次

2016-03-21 22:54:20
竹村京 @kyou_takemura

これは都合のいい所だけを取り上げた話だ。確かに従来の艦艇でも深海棲艦に対抗はできる。だがコストが桁違いだ。旧型のシー・スパロー対艦ミサイルでさえ一発数千万円。それを載せる艦だけで建造費は数百億円。乗艦するクルーは数百人。#落ちぬい二次

2016-03-21 22:54:49
竹村京 @kyou_takemura

これと同じ効果をたった一人の艦娘で代替できるのだから、むしろ艦娘を使わない方がおかしい。 黒づくめの女は活動家の話の欺瞞を見通しているが、そんなことはおくびにも出さずに話を聞いている。やがて活動家が切り出した。#落ちぬい二次

2016-03-21 22:56:32
竹村京 @kyou_takemura

「この後お時間はありますか?」 「特に予定はありませんが……」 「でしたら私たちの集会所に来ませんか?」 「え、でも……」#落ちぬい二次

2016-03-21 22:59:05
竹村京 @kyou_takemura

黒づくめの反応は当然である。自分から話しかけたとはいえ、プラカードを持った人間にいきなり自分たちのところに来てみないかと誘われれば誰だって警戒する。 「すぐそこですし、立ち話より詳しく説明できますから。10分だけ、どうですか?」#落ちぬい二次

2016-03-21 22:59:38
竹村京 @kyou_takemura

黒づくめは眉根をひそめて考えるポーズを取る。 「もちろん、無理に艦娘になるのを止めるつもりはありません。それはあなたの判断ですからね。10分だけ、どうですか?」 「……10分だけなら」#落ちぬい二次

2016-03-21 23:01:44
竹村京 @kyou_takemura

「ありがとうございます。じゃ、行きましょうか。私は工藤といいます」 「岡野です」 岡野――あきつ丸が案内されたのは雑居ビルの三階にある一室である。ドアには小さく『ふねのみたま会』と書かれていた。#落ちぬい二次

2016-03-21 23:02:04
1 ・・ 5 次へ