オカルト探偵あきつ丸 -膾-

竹村京さん(@kyou_takemura)の書いてくださった、落ちぬい二次のオカルト探偵あきつ丸シリーズです。 今回は艦娘拉致の疑惑についてのお話し。 是非ご堪能くださいませ! 続きを読む
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竹村京 @kyou_takemura

ふねのみたま会。 新興の宗教団体である。もとは反戦・反艦娘団体であったが、ありがちな陰謀論から徐々に宗教色を増していき、半年ほど前に宗教法人格を購入して宗教団体になった。未だ小規模であり、活動についてはあまり知られていない。#落ちぬい二次

2016-03-21 23:03:35
竹村京 @kyou_takemura

だが事前に調査していたあきつ丸はその教義を知悉している。#落ちぬい二次

2016-03-21 23:05:07
竹村京 @kyou_takemura

曰く、艦娘は人の身体に深海棲艦の魂を封じたもので、深海棲艦は仲間を取り返すために来ている。深海棲艦の先制攻撃によって開かれた戦端はファーストコンタクトの失敗であり、艦娘を全て廃止し対話すれば和平を実現できる。#落ちぬい二次

2016-03-21 23:05:20
竹村京 @kyou_takemura

馬鹿馬鹿しい、と内心で嗤う。そんなものは実際に深海棲艦を見たことがない阿呆のたわごとだ。実際のところ軍としては苦々しい存在だが、あくまで合法の宗教活動やデモをしているだけなので規制する術がなかった。上層部にはここで尻尾を掴みたいという腹積もりがあるのかもしれない。#落ちぬい二次

2016-03-21 23:05:39
竹村京 @kyou_takemura

「コーヒーとお茶、どっちにします?」 「すみません、ではコーヒーをお願いします」 工藤がドリップバッグでコーヒーを淹れて岡野の前に差し出した。 「ありがとうございます」#落ちぬい二次

2016-03-21 23:07:09
竹村京 @kyou_takemura

岡野は礼を言ったが、すぐには口を付けない。カップで手を温めている風を装って、口の中で小さく金剛夜叉明王の真言『バザラヤキシャウン』を21回唱えているのだ。真言を唱え終わると一口飲む。 それを確認してから工藤が話を始めた。#落ちぬい二次

2016-03-21 23:08:58
竹村京 @kyou_takemura

宗教色を極力出さないように言い含められているのだろう、工藤は数年前のデータを持ち出して艦娘になるための処置の危険性を訴えたり、コストやリスクを無視して在来型艦艇で挙げた戦果を誇張して話したりした。#落ちぬい二次

2016-03-21 23:10:40
竹村京 @kyou_takemura

そのいずれも論破できるだけの知識は持っていたが、あきつ丸はさも初耳だという風に興味深そうに頷いて見せた。 工藤が時計をちらりと見たのを確認すると、不意に眠気に襲われた振りをし、ソファに倒れ込む。#落ちぬい二次

2016-03-21 23:11:31
竹村京 @kyou_takemura

コーヒーには睡眠薬が盛られていたのだ。何らかの薬は入っているだろうと推測して毒を無効にする金剛夜叉明王の真言を用いたため、僅かに眠気を感じた程度である。狸寝入りをしながら再度真言を唱えるとそれさえも消え去った。 向かいに座っていた工藤が席を立つ気配がする。#落ちぬい二次

2016-03-21 23:13:23
竹村京 @kyou_takemura

「もしもし、工藤です。はい、眠りました。……お願いします」 間もなく何者かが入ってきた。足音から推測するにそれなりに体格のいい男だろう。 「ご苦労さん。後は俺がやるから」 「はい。では」#落ちぬい二次

2016-03-21 23:13:37
竹村京 @kyou_takemura

目は閉じたままだが、先に女が部屋を出たのが分かる。男は岡野を起こさないように慎重に後ろ手に手錠をかけ、軽く身体を検めてから抱き上げていずこかへ運んで行った。#落ちぬい二次

2016-03-21 23:15:34
竹村京 @kyou_takemura

揺れの感じでは階段を下りながら二回折り返したようだった。つまり地上二階から地下一階に運ばれた事になる。一室に運び込まれると床に寝かされ、手錠を鎖に繋がれたのが分かった。 男が部屋を出たのを確認し、一分数えてから目を開く。#落ちぬい二次

2016-03-21 23:15:57
竹村京 @kyou_takemura

スマートフォンと財布を入れたポーチは取り上げられていたが、それは予定通りだった。カードもアカウントもダミー、アドレス帳にも出鱈目な番号しか入っていない。GPSを無効化できなくしてあるので、簡易的な発信機にもなる。#落ちぬい二次

2016-03-21 23:17:14
竹村京 @kyou_takemura

親指の根元の関節を外して手錠を外すと、セーターを捲り上げて下着に隠したインカムを取り出し、耳に装着する。首には襟に隠してスロートマイクが装着されている。こういう時にほとんど声を出さなくても音声を拾えるスロートマイクはありがたかった。#落ちぬい二次

2016-03-21 23:18:14
竹村京 @kyou_takemura

右の編み上げブーツの紐をほどき、隠しておいたナイフを取り出す。携帯性を重視したフォールディングナイフだが、銃器メーカー製の堅牢なものである。ナイフ一本とは心許ないが、これが隠して持ち込める限度だった。#落ちぬい二次

2016-03-21 23:18:35
竹村京 @kyou_takemura

ボディチェックが雑だったのはせっかく眠らせた相手を起こしたくなかったのか、単に素人なのかはわからないが、ともあれ本命のインカムを持ち込むことには成功したのはまず成功の第一歩である。#落ちぬい二次

2016-03-21 23:18:54
竹村京 @kyou_takemura

インカムのスイッチを入れると大月の声が即座に反応する。 『建物を調べました。七割がたは無関係のテナントですが、二階と最上階、それと地下はふねのみたま会のフロント企業が入居しています』#落ちぬい二次

2016-03-21 23:19:11
竹村京 @kyou_takemura

「ん、ご苦労であります。こっちは首尾よく潜入できたでありますから、大月も気取られぬよう突入準備をするであります」 『了解しました』 通信を終えると摩利支天の真言を唱えて身を隠し、部屋を出る。鍵はかかっていたが、簡単に解錠できた。#落ちぬい二次

2016-03-21 23:20:51
竹村京 @kyou_takemura

地下には四室あった。一つは機械室。もう一つはあきつ丸が放り込まれていた部屋だ。残る二室を調べる前に地上に向かう階段を確認する。もし万が一にも地下に武器庫があるなどした場合、ほとんど丸腰の状態では逃げる他ない。#落ちぬい二次

2016-03-21 23:22:46
竹村京 @kyou_takemura

だが杞憂だった。元より単なる雑居ビルである。地上階までには特に障害はなく、万が一の時にも速やかに脱出できるだろう。 改めて地下に戻り、残る二室を確認する。部屋は通路の左右に一室ずつあり、右の手前が機械室、左の手前があきつ丸がいた部屋だ。#落ちぬい二次

2016-03-21 23:24:25
竹村京 @kyou_takemura

左奥の部屋のドアに耳を付け、中の様子を探る。物音は無かった。施錠はされていたが、ただのシリンダー錠など物の数ではない。手早くピッキングすると、ドアを細く開けて中に滑り込む。 目隠しのパーテーションを避けて部屋の奥まで進む。#落ちぬい二次

2016-03-21 23:25:31
竹村京 @kyou_takemura

いた。綾波型駆逐艦の制服を着た少女が床に横たわっていた。頭には布袋が被せられている。両手は後ろ手に手錠を掛けられ、それは先程のあきつ丸と同様に床に埋め込まれたボルトに結び付けられていた。#落ちぬい二次

2016-03-21 23:26:30
竹村京 @kyou_takemura

布袋をめくると、頬に痣を作ったあどけない顔が現れる。よほど喚いたのか、口には猿轡がはめられていた。子供のくせに負けん気が強い娘だ、と好印象を抱いた。 「静かに。憲兵であります。猿轡を外すでありますが、声を出さないと約束するであります」 こくこくと頷く。#落ちぬい二次

2016-03-21 23:28:36
竹村京 @kyou_takemura

よろしい、と言うと、あきつ丸はナイフで紐を切って口枷を外した。漣は安堵のあまり涙をこぼし、礼を言った。 「他の二人、五十鈴と文月はどこにいるでありますか?」#落ちぬい二次

2016-03-21 23:29:08
竹村京 @kyou_takemura

「……文月はわかんない。安いからすぐ売れたとか、あいつら言ってた。五十鈴さんはたぶん向かいの部屋。たまに騒いでるのが聞こえるから」 「承知したであります」 それだけ聞くとあきつ丸は立ち上がった。#落ちぬい二次

2016-03-21 23:30:17
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