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混同する能力…人間の基礎的思考能力

アレとコレを明確に識別する合理的思考こそが人間の特徴、と考える向きは強い。しかし恐らく、人類が科学を産み出せたのも、宗教を信じるのも、アレとコレを「混同する能力」によるものではないか。
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shinshinohara @ShinShinohara

「マシュマロは、ゆきをれんじでやいて、あぶらをまぜるんだよ」 と3歳半の息子。子供らしく他愛もない、荒唐無稽な話ではある。ただ、人間はどうやら、教えもしないのに、生まれながらにして「仮説的思考」を備えているということに驚かされる。

2016-03-27 10:43:59
shinshinohara @ShinShinohara

息子はどうやら、雪が「白くて柔らかい」という特徴がマシュマロとそっくりで、「冷たい」という特徴が違うので「レンジで焼く」ことにより特徴を揃え、さらトロリとした食感も違うので「油」を混ぜ、食感を整えたらよいだろう、と「仮説」を立てたのだろう。なかなか、合理的ではある。

2016-03-27 10:47:16

さらトロリ→さらにトロリ

shinshinohara @ShinShinohara

「仮説的思考」を可能にするには、いくつかのハードルを乗り越えなければならない。ひとつは「特徴の抽出」だ。雪とマシュマロは「白い」「柔らかい」で共通点、「冷たい」「サッパリしている」で相違点。このように共通点と相違点を比較するには「特徴の抽出」ができる必要がある。

2016-03-27 10:51:42
shinshinohara @ShinShinohara

もうひとつが「混同する能力」。雪とマシュマロは明らかに別物なのに、「白い」「柔らかい」という共通点があるというだけで、雪からマシュマロが作れるという大胆な「仮説」にたどり着く。これは恐らく人間の最大の特徴だろう。あっちの話とこっちの話をくっつけて考える、という大胆不敵な思考法。

2016-03-27 10:57:27
shinshinohara @ShinShinohara

人間以外の動物で雪とマシュマロを混同視するものはいない。イヌやネコが雪を見て「これ、マシュマロと同じかも」なんて行動しない。経験済みであればなおのこと。動物は一般に区別する力、識別能力に長けている。しかし人間は経験してもなお、共通点があれば混同しようとする「混同力」がある。

2016-03-27 11:01:23
shinshinohara @ShinShinohara

NHK教育「ミミクリーズ」という番組。「ろっかっけい」というテーマでは蜂の巣のように自然界に見られる六角形を紹介し、その形に至るにはちゃんと理由がある、と伝える。「似ているものには訳がある」と主題歌の言葉。確かに六角形は、密度が高く強度があるという「共通点」がある。

2016-03-27 11:06:48
shinshinohara @ShinShinohara

動物は恐らくそんなことは考えない。蜂の巣にはハチミツがあり、蜂の巣を見分ける特徴さえ識別できればそれで用が済む。人間のように「あれもこれも六角形なのは、何か共通した理由があるんだろうか?」とは考えない。あっちの話とこっちの話を混同したりしない。識別したら終了。

2016-03-27 11:07:41
shinshinohara @ShinShinohara

仮説的思考には「混同力」が必要。3歳の息子が雪とマシュマロを混同してみせたが、これは考えようによってはかなり深い。現在の科学では「白」く見えるのはどの波長の可視光も反射するから、という結論に達している。この結論にたどり着くには「白」の特徴を備えるものを同一視する「混同力」が必要。

2016-03-27 11:15:20
shinshinohara @ShinShinohara

雪とマシュマロは全く別物なのに「白い」「柔らかい」という特徴では同じ。「特徴」は物の区別を越えて同一視できる、という奇想天外な発想を、人間はすることができる。物体から離れて「白い」「柔らかい」という特徴だけを抽出できるのは、雪とマシュマロを「混同視」し、共通点を抽出できるから。

2016-03-27 11:20:09
shinshinohara @ShinShinohara

「白い物体」はあるが「白」という物体はない。「柔らかい物体」はあるが「柔らかい」という物体はない。「白」も「柔らかい」も、何か具体的な物体、雪やマシュマロのような実在する物体の属性でしかない。人間以外の動物は、雪とマシュマロから共通する属性があるなどと意識することはほぼない。

2016-03-27 11:23:41
shinshinohara @ShinShinohara

人間は雪とマシュマロを「混同視」し、「白い」「柔らかい」という共通した属性(特徴)を抽出し、それを「言葉」でラベルしてとらえることができる。人間が言葉を駆使して思考を深めることができるという極めて変わった能力を備えることができたのは、「混同力」を身につけたからかもしれない。

2016-03-27 11:27:17
shinshinohara @ShinShinohara

合理的思考といえば、あっちの話とこっちの話を混同しない、しっかり識別する能力だと考えられている向きが強い。しかしむしろその能力なら人間以外の動物の方が優れているかもしれない。雪とマシュマロを混同して考えるという初歩的な「過ち」を動物がおかすことはない。

2016-03-27 11:29:14
shinshinohara @ShinShinohara

人間を特徴付ける最大の能力は合理的思考ではなく「混同力」だろう。あっちの話とこっちの話を混同し、共通点と相違点を見極め、「特徴」として抽出、「白い」とか「柔らかい」とか、それ自体は実体化できない「属性」でしかないものを普遍化した概念としてとらえることができる。混同力が起源だ。

2016-03-27 11:34:49
shinshinohara @ShinShinohara

カメラの自動焦点には超音波モーターの技術が使われている。カメラのレンズを絞る「力」と、超音波が物を動かす「力」。「力」という共通点を手がかりに、カメラのレンズと超音波発信器という全然別物を「混同視」するという大胆さから、このイノベーションは生まれた。

2016-03-27 11:37:47
shinshinohara @ShinShinohara

赤い花と赤い靴。全然別物を「赤い」という特徴だけで「混同」するからこそ、赤の色はある波長の光を主成分とするから、という科学上の発見が可能になる。人間の最大の能力は「混同力」だと見て間違いあるまい。

2016-03-27 11:41:52
shinshinohara @ShinShinohara

動物は迷信をもたない。だから「神」という概念も恐らくない。自然をあるがままに受けとめ、生きるために区別、峻別する。混同することはない。人間が「神」という概念にたどり着いたのも、「混同力」のなせる業だろう。何かの力を感じる、という共通点から「神」という特徴を抽出したのかもしれない。

2016-03-27 11:45:18
shinshinohara @ShinShinohara

科学と「迷信」は対立的にとらえられることが多い。科学的精神を持たないから迷信を持ってしまうのだ、と。ただ、「混同力」を用いるという点ではどちらも同じ。違いがあるのは、科学が新しい事実で検証し続けるのに対し、迷信は見たいものだけしか見ない、という点にある。

2016-03-27 14:14:16
shinshinohara @ShinShinohara

3歳半になる息子は今のところ、雪とマシュマロを混同する段階。「雪は溶けて水になるだけ」という新しい事実に出会うことでいずれ、新しい「仮説」にたどり着くだろう。放っておいても仮説的思考をし続けるということに、人間の不思議さ、奇妙さを覚える。

2016-03-27 14:18:04
shinshinohara @ShinShinohara

脳科学者ジル・ボルト・テイラーは自ら脳出血し、左脳が機能しなくなる経験をした。助けを呼ぼうと電話番号の数字を見ても、点や線にしか見えなくなったという。どうやら左脳は特徴を抽出、識別する機能を担い、右脳は「混同力」を担当するらしい。 ted.com/talks/jill_bol…

2016-03-27 14:32:49
shinshinohara @ShinShinohara

物事の境界を曖昧にし、すべてが繋がっているかのように混同する能力、これが右脳の特徴であり、白い雪と白いマシュマロを混同視し、それによって全然違う事物間で共通する「白」という概念の抽出に成功するのは、まさにこの「混同力」にあるのかもしれない。

2016-03-27 14:36:37