山本七平botまとめ/【裏切者ヨセフスの役割⑩】全員の自決を強要する同胞との戦いを”神の摂理”によって回避したヨセフス

山本七平『禁忌の聖書学』/裏切者ヨセフスの役割/37頁以降より抜粋引用。
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山本七平bot @yamamoto7hei

①だが彼の態度に他の40人は激怒し、剣をつきつけ、 【もしあなたが進んで自ら死を選ぶなら、われわれユダヤ人の指揮官として死ぬことになる。だがあなたがそれを裏切るなら、裏切者として死ななければならない】 と言い、全員の自決を主張した。<『禁忌の聖書学』

2016-03-28 08:38:51
山本七平bot @yamamoto7hei

②面白いことにユダヤ人もまた「生きて虜囚の辱しめを受けず」なのだが、同時に典型的なエコノミック・アニマルである。 この二つは矛盾しないらしい。 死にも冷静な人間は、全てに冷静なのであろうか。 ヨセフスもあくまでも冷静であった。 このあたりが少々常人ではないという気がする。

2016-03-28 09:09:16
山本七平bot @yamamoto7hei

③彼は自殺を禁じたモーセの律法を諄々と説き 【彼は自分を守ってくれる神に全てを委ね、身の安全を賭して次のように語った。 『自決することに決定したのであれば、さあ、くじを引いて各々順番を決めよう。 最初の番を引きあてたものは、次の番を引きあてた者に命を断たれることにする。』】

2016-03-28 09:38:52
山本七平bot @yamamoto7hei

④【『このようにしてわれわれ全員を運命の女神の導きに委ね、各々が自らの命を断つことにならないようにしよう。 ある者が思いなおして生きながらえることが、あってはならないからだ』】

2016-03-28 10:09:09
山本七平bot @yamamoto7hei

⑤自殺もまた殺害だから「殺す勿れ」に反する、という考え方があっても不思議でないが、同時に、正当防衛に等しい自殺は許されるという考え方もありうる。 しかし彼らには形式的には自殺を避けるという伝統があり、(続

2016-03-28 10:38:52
山本七平bot @yamamoto7hei

⑥続>ユダヤ戦争の最後の抵抗拠点となったマサダ要塞の最後、あの960人の集団自殺も、まず各自が妻子を殺し、ついで十人を選び出してその者が他の男性をことごとく殺し、この十人がくじで一人を選んでその者が九人を殺してから残った一人が自殺するという方法をとっている。

2016-03-28 11:09:04
山本七平bot @yamamoto7hei

⑦従って、集団自殺といわれるが厳密にいえば自殺は一人だけである。 これに比べると、ヨセフスのここの記述は少々わかりにくい。

2016-03-28 11:38:51
山本七平bot @yamamoto7hei

⑧私はまず最初に殺す者と殺される者をくじで半々にし、二十人が二十人を殺し、残った二十人は十人が十人を殺す、という形のくじだったと解釈するが、別の解釈をする人もいる。 いずれにせよヨセフスの言葉に人びとは納得した。 彼は平然と次のように書いている。

2016-03-28 12:09:13
山本七平bot @yamamoto7hei

⑨【ヨセフスの言葉は彼らを信じさせるに十分であった。 彼も他の者と共にくじを引いた。くじを引いた者は自分の次に当たった者に殺されるため躊躇なく身を委ねた。彼らは指揮官もすぐに自分達と共に死ぬと信じており、指揮官と共に死ぬ事は生きながらえるに優って名誉な事と考えたからである】と。

2016-03-28 12:38:51
山本七平bot @yamamoto7hei

⑩ユダヤ人が怒りがこみ上げてくるというのはこの箇所である。 本当に彼は、神の摂理によって最後まで残ったのだろうか。 くじに何か仕掛けをしたのだろうか。 それは永久にわからないが、最終的に彼は、死者を裏切った。

2016-03-28 13:09:08
山本七平bot @yamamoto7hei

⑪【しかしヨセフスは、運命の女神のいたずらによってと言うべきか、あるいは神の摂理によってと言うべきか、ともかくもう一人の男と最後に残されることになった。彼は…その男に自分を信頼して一緒に生きながらえるよう説得した】 だがこの男がその後どうなったかはわからない。

2016-03-28 13:38:53
山本七平bot @yamamoto7hei

⑫ヨセフスは生涯、この男について一言も触れていないからである。 【こうしてヨセフスはローマ軍との戦いと仲間との争いをひとまず回避し、ニカノルによってウェスパシアノスのもとに連れて来られた】と。

2016-03-28 14:09:15