f^-1と∪, ∩の交換と圏論について

http://alg-d.com/math/kan_extension/ のPDF「Kan拡張」に載っている例の話です
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V-alg-d(ZZ) @alg_d

例えば、右から直積する関手 -×X: Set→Set は左随伴だったから、余直積と交換する。Setの余直積はdisjoint unionなので、集合AとBのdisjoint unionをA+Bと書けば、(A+B)×X = A×X+B×X が分かる。

2016-04-24 03:08:22
V-alg-d(ZZ) @alg_d

つまりこの場合、直積と余直積で「分配法則」が成り立つ。

2016-04-24 03:08:47
V-alg-d(ZZ) @alg_d

同様にHom(X, -)は右随伴だから直積と交換し、Hom(X, A×B)=Hom(X, A)×Hom(X, B)である。これはHom(A, B)=「AからBへの写像全体」=B^Aと書くと (A×B)^X = (A^X)×(B^X) であり、「指数法則」ということになる。

2016-04-24 03:10:37
V-alg-d(ZZ) @alg_d

さて、f^-1: P(A)→P(B) の場合に戻ると、この写像は実は関手になる。というのも、これは順序を保っているからである。(順序集合を圏とみなしたとき、順序集合から順序集合への関手とは、順序を保つ写像のことである)

2016-04-24 03:12:01
V-alg-d(ZZ) @alg_d

そして、 f^-1 は右随伴かつ左随伴であることが分かる。つまり、 f^-1 は直積・余直積の両方と交換する!

2016-04-24 03:12:44
V-alg-d(ZZ) @alg_d

つまり、さっきの f^-1(S∩T) = f^-1(S)∩f^-1(T), f^-1(S∪T) = f^-1(S)∪f^-1(T) は、f^-1 が左随伴かつ右随伴という定理のただの系なのである。

2016-04-24 03:13:54
V-alg-d(ZZ) @alg_d

一方、 f は左随伴だけど、右随伴にはならない。よって余直積と交換すること( f(S∪T) = f(S)∪f(T) )は言えるけど、f(S∩T) ≠ f(S)∩f(T) は言えないのである。

2016-04-24 03:15:10
V-alg-d(ZZ) @alg_d

(むしろ、f(S∩T) ≠ f(S)∩f(T) から、 fが右随伴とならないことが言える)

2016-04-24 03:15:29
V-alg-d(ZZ) @alg_d

さて、f^-1: P(B)→P(A) が左随伴かつ右随伴になるということを示すためには、関手 F, G: P(A)→P(B) で、 「Hom(F(S), T)=Hom(S, f^-1(T))」 「Hom(f^-1(S), T)=Hom(S, G(T))」 となるものを

2016-04-24 03:18:24
V-alg-d(ZZ) @alg_d

見つけなければならない。これはどうやったら分かるのか?

2016-04-24 03:18:37
V-alg-d(ZZ) @alg_d

まず、先の F が「fに沿った左Kan拡張」f†、Gが「fに沿った左Kan拡張」f‡、になることが、Kan拡張の定義からすぐにわかる。

2016-04-24 03:20:43

※これは間違いで、Gは「fに沿った 右 Kan拡張」です

V-alg-d(ZZ) @alg_d

そして、各点Kan拡張によりf†, f‡を計算すると、  f†(S) = f(S), f‡(S) = B\f(A\S) となることが分かる。(f‡(S)は Sのsmall imageなどと言われるものらしい……)

2016-04-24 03:22:50
V-alg-d(ZZ) @alg_d

こうしてまた全ての概念がKan拡張であることが分かってしまったのである。

2016-04-24 03:23:25
V-alg-d(ZZ) @alg_d

今の話の証明を含んだ話は alg-d.com/math/category/ のKan拡張PDFに書いてある。

2016-04-24 03:24:21