柏vs川崎。柏は守備時442、攻撃時325。5日前のG大阪戦と数字上の配置は同じ。ただし仕組みが違う。仕組みを変えた理由は幾つかある。選手が入れ替わればピッチ上に影響が出るのは当然だが、下平監督は仕組みを弄りつつも、メリットが前面に出るような変更を施した
2016-04-28 22:54:17さらに4日後の鹿島vs柏。この試合でも守備時442、攻撃時325は変わらなかったが、川崎戦とはまた少し違いが見られた。一見同じシステムを用いていても、相手をよく分析し、微調整を怠らない。下平監督の柔軟な思考、引き出しの多さが伺える
2016-04-28 22:54:19G大阪vs柏での柏の守→攻のボトムチェンジの仕組み。442からDH大谷がCB間に落ち、SBを高く押し上げる。左SH武富は2トップ脇へと移動し、大谷がDFラインに落ちて居なくなったスペースに右SH茨田がスライド。325を形成 pic.twitter.com/M51IjYmjnP
2016-04-28 22:54:39柏vs川崎での守→攻のボトムチェンジの仕組み。4バックは全体を右にスライドさせて右SB湯澤を高く押し出す。右SH太田は2トップ脇へ。山中はサイドに張り出す。325形成。左SB中山が左CBとして振る舞う事とDHは全く動いていないのが肝 pic.twitter.com/AseQw7EgPM
2016-04-28 22:55:11鹿島vs柏での守→攻のボトムチェンジの仕組み。4バックは全体を左にスライドさせて左SB中山を高く押し出す。左SH武富は2トップ脇へ。伊東はサイドに張り出す。325形成。伊東が守備時は右SH、攻撃時は右WBとして振る舞う pic.twitter.com/3RvPCka8fT
2016-04-28 22:55:40そもそも、ボトムチェンジをするには理由がある。G大阪、川崎、鹿島。これらの3チームは全て守備時442で守るチームである。バランスの良い442で守るチームを相手に、下平監督は恐らくこう考えていたはず。「442に対して真正面から正直に442をぶつけるのは得策ではない」と
2016-04-28 22:55:43全く同じシステム同士がぶつかり合えば、ピッチのあちこちで1対1が頻発する事になる。その場合、選手の質で優るチームが試合を有利に進める事ができるのは想像に難くない。そして下平監督はそんな愚直に正面からぶつかる事を良しとしていない
2016-04-28 22:55:45なのでボトムチェンジを行い、相手のシステムとこちらのシステムが噛み合わないように仕向けている。守備の際はバランスの良い442で守り、攻撃の際は相手とミスマッチを狙える325。要するに「良いとこ取りをしよう」という発想である
2016-04-28 22:55:54ただし、システムを変化させるということにはリスクも伴う。具体的には「システムを変化させる際にどうしても防げない穴が露出する」という点。もう1つは「あまり複雑な変化を用いると体力の消耗が激しい」という点
2016-04-28 22:56:00前者は例えばG大阪戦の変化だと、「攻撃→守備の切り替えの際にDHが中央のスペースを咎められない、間に合わない」という問題として露出する。ここまで致命的な問題となっていないのは、そこを任されているのが大谷だから、でもある
2016-04-28 22:56:09後者は過去の浦和を例にすると解りやすい。415が相手に分析対応されたので、541→415→505と2段階の変化を用いた頃の浦和は、変化による移動距離の増加と頭脳の疲弊でガス欠を起こし、70分で足を攣る選手が続出した
2016-04-28 22:56:32さて、大谷の負傷で川崎戦は大谷抜きの構成を強いられる事になった下平監督。ピンチとも言える大谷不在を発想の転換と和製ダビド・アラバ、中山雄太の活用によってこの窮地を乗り切ることに成功する
2016-04-28 22:56:39前述の川崎戦のボトムチェンジを確認しよう。442から選手が反時計回りに移動し、325へとシステムが変化している事が解る。その時、DHの秋野、栗澤だけは移動していない
2016-04-28 22:56:47これは恐らく、SHを中央に絞らせて4222で攻めてくる川崎に対し、攻守の切り替えの際に「中央にDHが居ない」という現象をケアするためと思われる。同時に、「中山雄太を左CBとして機能させるため」でもある
2016-04-28 22:56:53中山雄太19歳。対人とパスセンスに優れ、CB、SB、DH、WB、インサイドハーフと、FW以外のポジションならどこでもこなせ、プロデビュー戦で遠藤保仁に股抜きを仕掛ける胆力もあるアカデミー育ちの左利き。下平監督は彼を最大限活用しようと試みたのである
2016-04-28 22:57:02湯澤が右SBから右WBに移動した事で、攻撃時は325の左CBとしてプレーする事になった中山。川崎は試合開始から積極的な前線からのプレッシングを敢行してきたが、中山、中谷と足元に優れるCBの存在のお陰で、左サイドをビルドアップの出口とする事ができた
2016-04-28 22:57:10中山は川崎のプレッシングを躱しては持ち上がり、パスを散らす。守備時には彼の対人能力をSBとして活かし、攻撃時には左利きというメリットとパスセンスを活かす。実際、目立ったミスは前半の1つぐらいのものであった
2016-04-28 22:57:18次は鹿島戦のボトムチェンジを確認しよう。川崎戦とは真逆で、442から選手が時計回りに移動し、325へと変化。この時、前回は左CBとして活用された中山は再び左WBへとポジションを移している。なお、この試合でもDHはまたも中央から移動していない
2016-04-28 22:57:25この試合での最大の注目点は442では右SH、325では右WBでプレーすることになった伊東純也である。今季はSBにコンバートされ、慣れない守備に奮闘していた伊東だが、大谷不在でDHを最終ラインに落としてのボトムチェンジを止めた事で今季最大の活躍の場が巡ってくる
2016-04-28 22:57:37DH落としの325でも、時計回りの325でも、攻撃時に伊東がプレーするポジションはWB。そこは変化がない。ただし、守備時のポジションが違う。DH落としの325は右SB。時計回りの325は右SH。これが守→攻の切り替えの際に絶大な効果を発揮した
2016-04-28 22:57:46442でガッチリ守り、カウンター。鹿島戦の伊東はその時既に1列高い位置に居た。これが鹿島戦で伊東の快速を活かしたカウンターが猛威を振るった最大の要因である。奪った後にSBの位置から出て行くのと、SHの位置から出て行くのでは、後者の方が最終局面に絡んでいけるのは当然の事である
2016-04-28 22:57:51そして鹿島のキーマンとなるカイオ番をする事になる右SBには本来CBである鎌田を配し、万全を期した。DHを中央から動かさなかったのは、鹿島のDHを積極的に咎めに行くため、こちらのDHをスタンバらせておきたかったのだろう。背後のコースを消しながらDHが咎めに行くシーンは何度も見られた
2016-04-28 22:58:09川崎戦と逆周りのボトムチェンジを採用したメリットは「守→攻の切り替え時に伊東のカウンターで得点を狙える」「守備時に伊東vsカイオを作らずに済む」「足元の拙い鎌田を攻撃時に右SBとして振る舞わせずに済む」「鎌田の守備能力をカイオ番として最大限に活かせる」というもの
2016-04-28 22:58:17下平監督「CBタイプを4人ならべたのは、まずカイオ選手が鹿島のキープレーヤーで、そこの単独突破に対して伊東を当てるのはしんどいかなと思い、経験豊富なベテランの鎌田を起用しました。本当に彼はその起用に応えて、体を張って守備のところで貢献してくれたと思います(KFJより抜粋)」
2016-04-28 22:58:24以上の事から解る通り、下平監督はパッチワークが上手い。選手の能力、実力を的確に把握できているのだろう。「手駒の短所を上手く隠し、長所を最大限発揮できるようにシステムに当てはめる」事ができている。この辺りはネルシーニョの眼力を思い出さずにはいられない
2016-04-28 22:58:29