「ネクロマンティック・フィードバック」 #1

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「キエーッ!キエーエーッ!」阿片窟めいた不気味な室内に、素っ頓狂な絶叫が飛んだ。口から泡を飛ばして怒り狂っている白衣の男は誰あろうリー・アラキ、ソウカイヤの潤沢な資金を思うままに使用して狂気の研究に邁進する悪魔的センセイである。

2011-02-07 18:34:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

室内に充満する薄緑の煙はいかなる物質であろうか。オシロスコープを表示する無数の液晶モニタから煙たい空気中へ、コロイド効果でレーザー光線めいた光の帯が放たれている。天井に飾られた額縁には「対人請求」「不如意」といった魔術的文言が踊る。

2011-02-07 18:37:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「大変な事だねェ!困った事だ!あれはじつに、傑作なんだよ、ナハタ君!いけないねェ!」リー先生が絶叫しながら椅子ごとグルグルと高速回転するのを、オレンジのボブカットの女性は豊満な胸で割って入り、胸の谷間で頭を挟み込むようにして止めた。「いけませんわ、いけませんわ、先生」

2011-02-07 18:54:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ナハタ君、モニタを!」オレンジボブカットの巨乳白衣助手、フブキ・ナハタは乳房でリー先生の頭を挟んだまま素早くリモコンを操作し、柱に吊り下げられた巨大モニタの表示を切り替えた。ゴチック体の蛍光緑色の文字で、でかでかと「消失」と表示されている。

2011-02-07 19:06:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「なんたるザマだ!大損失!たまらない!」リー先生はフブキ・ナハタから身をもぎ離し、再度、椅子ごと高速回転を始めた。「アーン、いけませんわセンセイ」「次の報告はまだかねェ?」「あら、今きましたわ、IRCのほうに今」「早く早く早くしなさい!」

2011-02-07 19:11:47
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

フブキ・ナハタは撫でるような卑猥な手つきで卓上のデッキを操作した。小型モニタのIRCセッションを目で追い、舌なめずりする。「あらあら、うふふふ、トリダ=サン、どうやら死んでしまったみたいなんですの」「おやまあ!」リー先生は椅子から飛び上がり、フブキ・ナハタを押しのけた。

2011-02-07 19:26:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「奴が……奴の手にかかれば、そりゃあそうだろうねェ!」腹心の助手、トリダを案じるというよりは、喜色をにじませた早口である。「ジェ~ェノサイド!まったくこれは参ったねェ!なになに、早く早く!」リー先生のタイピング速度が加速する。「いいぞ、絶対に逃すなよ!」

2011-02-07 19:30:11
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

一心不乱にタイピングを続けるリー先生の肩に豊満な胸を乗せ、フブキ・ナハタはモニタを後ろから覗き込んだ。「カンオケにはもう一体いませんでした?なんとか言うゾンビー被検体……」「あン?」「そっちはいいんですの?」「誰だそれは!構わん構わん!ジェノサイドを確保するのが大、大、大先決!」

2011-02-07 19:36:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「トリダ=サンはどうするんですの?もったいないわ。あの方、アタクシのことお嫌いでしたけど」「そりゃねェ、死んでいたとしたらもちろん回収するとも!とにかくジェノサイドだ!はい!はい!はい!」「もう一体は……」「捨て置きなさい!たいしたものじゃないだろう!」

2011-02-07 20:01:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

リー先生はキーボードが壊れる程の勢いで激烈にタイピングを続ける。フブキ・ナハタは思い出したようにリモコンを柱モニタへ向けた。「メニュー」「モード」「ライブラリ」「インターコンチネンタル」といった電子的カタカナがひとしきり流れた後、ワイヤーフレームの人体が表示される。

2011-02-07 20:04:17
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

フブキ・ナハタは被検体の身長・体重データと、そのコードネーム「ウィルオーウィスプ」を一瞥し、小首を傾げた。それからあくびを一つして、モニタをoffにした。

2011-02-07 20:08:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

一級研究員・アンビ=サンは背中の激痛に呻き声を上げ、覚醒した。身を起こした。夜だ。そしてここは?周囲を見渡す。国道だ。アンビ=サンは右手に何かつかんでいる事に気づいた。……棒?「アイエエエエ!」違う!欠損した人体だ。肘から先だ。

2011-02-07 20:26:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

誰のものだかわからぬ腕を投げ捨てると、それは地面の別の欠損人体にぶつかった。「アイエエエエ!」一体これは?周囲を見渡す。「アイエエエエ!」欠損人体はそこかしこに転がっている!「アイエエエエ!」

2011-02-07 20:28:47
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アンビ=サンのショック状態の脳に気絶直前の記憶が戻ってきた。護送車両のカンオケが内側から開かれ、「奴」が飛び出した。ガードヤクザは十分な人数、用意されていた。しかし「奴」は……「奴」のバズソーは、取り押さえにかかるガードヤクザを、まるで洗濯機のように……「アイエエエエ!」

2011-02-07 20:32:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニューロンが送り込む忌まわしい映像に悲鳴を上げ、アンビ=サンは尻餅をついた。後ずさると傷ついた背中が護送車両に触れた。激痛!「アイエエエエ!」足元を見やると、チーフ研究員のトリダ=サンの死体だ。首が無い!「アイエエエエ!」いや、そこの草むらに頭が!「アイエエエエ!」

2011-02-07 20:35:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アンビ=サンは発狂しかかったが、すぐに思い至った。私は殺されなかったのだ!サバイブしたのだ!バンザイ!そうだ、この事実を喜ぶべきだ!この静寂!「奴」は行ってしまったのだ!あのふざけた二刀流バズソーから運良く逃れることができたのだ、だいたい誰がバズソーを車内に……とにかく助かった!

2011-02-07 20:40:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ビーッ!ビーッ!護送車両の荷台でアラームが鳴っている。おそらくラボからの連絡だろう。遅かれ早かれ救援が到着するだろう、まずは無事を知らせなければ。アンビ=サンはステップを駆け上がった。開いたカンオケが二つ、それから散乱する欠損人体。血みどろの計器類。ぞっとしない光景だ。

2011-02-07 20:47:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ビーッ!ビーッ!計器に据え付けられたIRCトランスミッターが鳴っている。アンビ=サンは急いでそれを手に取った。「……ええ、ええ、おっしゃる通りで、いえ、私は恥ずかしながら気を失っておりまして、そのおかげでどうにか……ええ、ええ」

2011-02-07 20:50:47
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

夢中で状況報告するアンビ=サンは思い至らずにいた。カンオケが二つとも開いていたという事実の意味するところに。よって、背後で身をもたげた存在に注意など向けようが無かった。

2011-02-07 20:53:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「はい、はい、ええ、位置情報をもう少し細かくして送信しますから……」「アバー」「そうだ、武器を使います、バズソーです!私以外は全員殺されました!」

2011-02-07 21:06:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

……今の声は、何だ?……アンビ=サンは受話器を持ったまま、ゆっくりと振り返った「アイエエエエ!?ア、アイエエエエ!アイエーエエエエ!アバーッ!アババババババババババ、アバババババーッ!!!」

2011-02-07 21:09:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アバー、おれはウィルオーウィスプ=サン。アバー」ウィルオーウィスプは独り言を呟きながら、のしのしと歩みを進める。その死んだボディを覆うパラシュート布素材の特殊布はニンジャ装束めいて巻きついていた。ある種のニンジャ本能が、身につけた衣類をニンジャ装束状にするようである。

2011-02-07 21:22:49