ライズ・アゲンスト・ザ・テンペスト #3

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【ライズ・アゲンスト・ザ・テンペスト】#3 続き

2016-06-05 23:16:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

DOOOM……KA-DOOM……断崖を登るアルビオンの背を白黒に切り取るのは、空を荒らす稲妻の光だ。アルビオンはただ黙々と登り続けた。断崖の凹凸を指先が捉え、身体を引き上げる、その動作ひとつひとつが、闇に向かって伸びる復讐の階段の一段一段だ。その先にあるのは絞首台か、あるいは。

2016-06-05 23:17:47
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

KRA-TOOOOOOM!断崖から身体を引き上げ、仰向けに転がった彼が見上げる空を、ひときわ激しく強い稲妻の光が駆け抜けた。アルビオンは吸い寄せられるように稲妻の根本を見た。ドラゴン・シュラインの更にその先、切り立った峰の上、ニンジャの影が浮かび上がった。死神の影が。

2016-06-05 23:18:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーは熱された身体に触れる一粒一粒を感じている。雲の向こうの稲妻の唸りを聴き、土に触れる雨の音を聞く。目を閉じてなお、頭上の黄金立方体の存在感は少しも減じることがない。稲妻のダメージは甚大である。滅びの間際で踏みとどまった状態だ。だが彼はセイシンテキを感じていた。

2016-06-05 23:27:30
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

岡山県の高い標高にあり、彼はただ一人だ。センセイの存在もなく、ドラゴン・シュラインにドラゴン・ニンジャ・クランの者は耐えて久しく、ただニンジャスレイヤーだけが在る。ただニンジャスレイヤーだけが……ニンジャスレイヤーは目を見開いた。「イヤーッ!」彼は跳ね起き、カラテを構えた。

2016-06-05 23:34:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

空気の流れにニンジャソウルのアトモスフィアがある。異物の存在が。(((フジキド。聞こえておるな。ニンジャの息遣いだ。敵意だ)))ナラクが確認した。「スウーッ……ハアーッ……」ニンジャスレイヤーは深くチャドーの呼吸を繰り返し、カラテを練り上げた。傷はどうだ?どんなニンジャが現れる?

2016-06-05 23:39:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(数……一人)(((ググググ、見上げた根性也)))ナラクが嘲った。然り、敵は一人だ。少なくともドラゴン・シュライン付近に展開している別働隊の気配はない。しかし敵がアマクダリ・セクトならば、ただ一人で現れるとは考えにくい。絶体絶命か。

2016-06-05 23:45:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(((オヌシの不覚悟が呼び寄せた状況だ)))ナラクの呪詛がニンジャスレイヤーの全身の傷を苛む。「黙れナラク」ニンジャスレイヤーは呟き、向き直った。高山の靄の中からにじむようにして、そのニンジャは彼の攻撃圏に出現した。

2016-06-05 23:52:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

二者は同時にオジギを繰り出した。「ドーモ。アルビオンです」「ドーモ。ニンジャスレイヤーです」アルビオンはニンジャスレイヤーを測っている。それがわかる。更に……それが何を意味するのかはわからぬが……アルビオンが唯一人でこの場に現れたことを、ニンジャスレイヤーの皮膚は感じ取った。

2016-06-05 23:56:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「オヌシ一人。別働隊の類いもなし。唯一人で私を殺しに来たか」「そうだ」アルビオンは認めた。「お前がこの地に潜んでいる事をセクトは知らぬ。俺一人が知り得た情報だ。何故ならば……」彼はカラテを構えた。「スキールニルというニンジャを知っているか」「ソウカイ・シンジケートのニンジャか」

2016-06-06 00:02:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「クッ……」アルビオンは鼻で笑った。「取るに足らぬサンシタの屑ニンジャの名をいちいち覚えているんじゃあない」ニンジャスレイヤーは無言。ジュー・ジツの構えで、相手の言葉を待つ。やがてアルビオンは言った。「スキールニルは俺の兄だ。お前は俺の兄を殺した。俺自身が、俺自身の手で仇を討つ」

2016-06-06 00:04:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「復讐か」ニンジャスレイヤーは低く言った。その目が炎を奔らせた。「よかろう。受けて立つ。来るがいい」二者はかすかに横に動いた。どちらも攻撃に出ない。アルビオンは慎重にニンジャスレイヤーの負傷の程度を測る。アルビオンは当初アンブッシュを検討した。だが無理と判り、正面から挑んだ形だ。

2016-06-06 00:12:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アルビオンはニンジャスレイヤーの負傷原因を明確に結論づけた。落雷による負傷だ。アガメムノンのジツに対抗する手段を獲得すべく、自然の雷を利用した訓練を行っていた……合理的な判断ではある。実現可能性を度外視すれば。「繕っていようがわかる」アルビオンは言った。「構えるのもやっとだろう」

2016-06-06 00:18:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ならば仕掛けて来い。みずから試せ」ニンジャスレイヤーは手招きする。「その身をもってわかるはずだ」赤黒の装束の肩から白煙の筋が立ち上る。アルビオンは前足に重心を移す。ニンジャスレイヤーがやや姿勢を落とし、後退する。二者の間に0と1の風が吹き込み、小さく渦を巻いた。

2016-06-06 00:22:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

カッ!上空、黄金立方体の横で稲妻の尾が閃いた。アルビオンは地を蹴った。「イヤーッ!」斜め角度からニンジャスレイヤーの顎めがけ左チョップ突きで仕掛ける。ニンジャスレイヤーは内から外へ腕を回して逸らした。「イヤーッ!」そこへ右膝蹴り!ニンジャスレイヤーの脇腹に突き刺さる!

2016-06-06 00:25:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ヌウッ……!」死神の目がかすかに細まり、装束は焦げた破片を散らした。「イヤーッ!」左フック!ニンジャスレイヤーはガードする。「イヤーッ!」右アッパー!ニンジャスレイヤーのガードが弾かれる。「イヤーッ!」ヤリめいたサイドキック!「グワーッ!」ニンジャスレイヤーは吹き飛んだ!

2016-06-06 00:27:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」アルビオンは前転からの連続側転でニンジャスレイヤーを追った。ニンジャスレイヤーは受け身を取り、防御姿勢を取る。アルビオンは側転の勢いを乗せて踵落としで襲いかかる。「イヤーッ!」「ヌウーッ!」KRAAASH!ニンジャスレイヤーの足元に蜘蛛の巣めいた亀裂が生じた!

2016-06-06 00:28:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」右チョップ!「イヤーッ!」左チョップ!クロス腕で受けるニンジャスレイヤーの身体が沈む!「天運は我に」アルビオンの目がギラリと光った。その時!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーが跳んだ!ナムサン!サマーソルトキック!「我に有り!」アルビオンは読み切る!身を反らして回避!

2016-06-06 00:32:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

空中で無防備状態となったニンジャスレイヤーを睨み、アルビオンは右手を後ろへ伸ばした。その掌の空気が歪み、こごり、キョムを生じた。アルビオンは身体を沈め、勢いをつけて跳躍、右腕を振り上げた。キョムは巨大なクナイの形を作り出す!「メツレツ・ジツ!イヤーッ!」

2016-06-06 00:35:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは空中でキリモミ回転し、地面をめがけフックロープを投げた。これがメツレツ・ジツ到達のコンマ3秒前。「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーの身体は地上めがけ加速した。アンカーめいて突き刺さったフックに自らの身体を引き寄せたのだ。メツレツ・ジツは空に消えた。

2016-06-06 00:40:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

だが着地したニンジャスレイヤーのワン・インチ距離へアルビオンは迫っていた。振り上げた左手が、ふたつめのキョムを掴んでいる。「イヤーッ!」それをニンジャスレイヤーに叩きつけた。「グワーッ!」刃物状に成形する暇は無かった。岩で殴りつけたようなものだ。だが、重い一撃である!

2016-06-06 00:42:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

キョムは質量を失い、分解消滅する。「イイイイイ……」アルビオンは畳み掛ける。3つめのキョム!右腕を振り上げる。「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーはその手首を掴み、カイシャクとなり得た追撃を阻んだ。「イヤーッ!」一方、アルビオンの左手はニンジャスレイヤーの右腕を掴んでいた。

2016-06-06 00:46:24