妖怪ウォッチ二次創作長編:くれは舞う風第四話「人と妖を繋ぐもの・前編」

少し長めに書いてしまいましたが、今回はついにあの三人が少しばかり登場となります。今後もこの三名は登場しますので、ささやかなお楽しみというとこでひとつ。 前→http://togetter.com/li/910304 /次→
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みなみ @minarudhia

くれは舞う風第四話「人と妖を繋ぐもの<前編>」

2016-01-04 21:39:22
みなみ @minarudhia

「に”ゃ”え、え”え”え”え”え”え”ぇ”ぇ”ぇ”ぇ”ぇ”ぇ”え”え”え”!!!?」 いつものように、変わらぬ穏やかな朝を迎えたさくら住宅街。 その一角で一部の人間にしか聞こえぬ叫び声があがった。 「フ、フササたんが、フササたんがぁあ!!」 1

2016-01-04 21:40:02
みなみ @minarudhia

「もうなに、ジバニャン。頼むから静かにしてよ」 「そうですよ。こんな爽やか~な朝に人目はばからず騒ぐなんて…」 テレビを前に今にも発狂しそうな言動をしているのは、赤い毛並みと二本の尾を持つ小さな猫又の妖怪。 2

2016-01-04 21:42:57
みなみ @minarudhia

その妖怪に呆れながら、声をかけたのは昨日秋奈とぶつかりそうになった小学生の少年だった。 さらにその隣を浮いているのは、少年を追いかけていたあの人魂を思わせる容姿の白い妖怪だ。 「フササたんが、フササたんが、昨日誘拐されそうになったって!!」 3

2016-01-04 21:47:10
みなみ @minarudhia

猫又…ジバニャンの言葉に少年はテレビを見た。 「フササって、ジバニャンが好きなニャーKBの…」 テレビだけでない。 新聞の一部にも、国民的アイドルグループニャーKBメンバーの一人・フササの拉致未遂事件が報じられていた。 4

2016-01-04 21:50:28
みなみ @minarudhia

「仮にもアイドルですからねえ。誘拐されそうになってもおかしくございませんて「だまらっしぇーニャン!!」ぐえっ!?」 言いかけたところにジバニャンによる無言のボディーブローを受け白い妖怪はダウン。 少年がそれをスルーしながら、テレビのチャンネルも変えずソファに座る。 5

2016-01-04 21:52:37
みなみ @minarudhia

「アイドル誘拐未遂なんて物騒ねえ…場所、お父さんの勤務先から近いじゃない」 「ほんとだ。今日はうちの会社の若い子達の間で話題になるだろうなあ…」 ニュースを耳にしながら、両親がそう話し合うのを少年は聞いていた。 6

2016-01-04 21:55:54
みなみ @minarudhia

さくら中央街ののんべえ通り…そこで、ニャーKBメンバーの一人、フササが番組出演からの帰宅途中謎の男数人に車の中へ引き込まれようとしたという。 数人目撃者がおり、彼らの話によるとフササが車に押し込められる直前に車のエンジンが突如出火。 7

2016-01-04 22:01:05
みなみ @minarudhia

さらにその直後、男が一人吹き飛び、フササは自由の身となった。 警察が出動した時、すでにフササは逃げ、男達も車を棄てておつかい横丁に逃げ見失った。 …というのが事件の一連である。 「フササたんをさらおうとした不届き野郎はオレっちがこらしめるのニャン!」 8

2016-01-04 22:07:57
みなみ @minarudhia

ジバニャンが鼻息荒く息巻いた。 その足元に白い妖怪を敷きながら。 「ジバニャン、そう言ったって、どうこらしめるの?オレだってフミちゃんさらわれそうになったら嫌だから気持ちわかるけど」 9

2016-01-04 22:12:29
みなみ @minarudhia

「ケータ、ちゃんと支度はしてあるの?もう時間よ」 「あ、はーい!」 朝食の席に慌ててつく少年・天野景太。 リビングにはトーストの香ばしい匂いが漂った。 10

2016-01-04 22:16:40
みなみ @minarudhia

「ええっ?今日のシフトを変更してほしい?!」 電話を受けた秋奈の声が上ずった。 相手はスケジュールを担当する人事部の人間だ。 来週の休日と本日の勤務日を入れ替えるシフトにするのだというのだ。 それも、社長直々の指令だと言う。 12

2016-01-04 22:20:21
みなみ @minarudhia

「しかし………はい、はい……わかりました。では、来週の休日はいつも通りの出勤ですね。…はい、お疲れ様です」 メラメライオンが通話を切るタイミングを見て尋ねた。 「どうした?」 「今日と来週の休日とのシフトが変更されたのよ。…しかも、社長がそうしろって言ったらしくて」 13

2016-01-04 22:24:53
みなみ @minarudhia

なんとも不可解な話だ。 「それで、今日一日は外出はなるべく控えるように…っておまけ付きだった」 「昨日の騒ぎか」 「メラメライオン、居合わせたの?」 「居合わせた。というより、助けたのはオレだ。例によってまさかあいつら、人間をさらおうとしたなんて予想外だった」 14

2016-01-04 22:28:14
みなみ @minarudhia

昨晩、騒ぎが収まらぬうちにメラメライオンは影オロチとおつかい横丁で合流していた。 逃げた者どもはすでに影オロチの手により物言わぬ白い塊と成り果てている。 『我は妖魔界へこの旨を報告に戻る』 影オロチはそう断じた。 15

2016-01-04 22:34:56
みなみ @minarudhia

『妖怪のみならず人間をも狙っているとは…こ奴らの行動原理が読みづらくなってきたな。明日以降も引き続きパトロールを実行しろ馬鹿弟子。明日はそよ風ヒルズだ』 ―― 「…彼女は、オレ達妖怪が見えていた」 「えっ?」 メラメライオンの呟きに秋奈が振り返った。 16

2016-01-04 22:42:43
みなみ @minarudhia

化粧落としの最中で口紅とファンデーションがだいぶ落ちている。 「見えるって、その、ニャーKBの子が?」 「ああ。会話も成立できていた。妖怪が見える人間だったんだナ。見鬼の眼の持ち主じゃない」 「…」 どこか釈然としない表情で秋奈は鏡に向き直った。 17

2016-01-04 22:47:35
みなみ @minarudhia

「そういえばだアキナ。休みを貰ったとはいえ外出はどうのといっていたことだ、あまり外出は……」 「あっ!!」 秋奈が化粧を落としながら声をあげた。 「そういえば、入金を忘れてたわ!銀行行かないと!」 「なぜそんな肝心なことを忘れるんダ!?」 メラメライオンは頭を抱えた。 18

2016-01-04 22:53:01
みなみ @minarudhia

「ねえジバニャン、本当によした方がいいって。昨日の夜に逃げたんなら見つからないよ」 「何言ってるニャン。フササたんはオレっちの憧れ、赦すわけにはいかないニャン」 さくら住宅街までの道をまっすぐ向かう猫の妖怪。 その後ろを少し離れて少年・景太と白い妖怪がついていく。 20、

2016-01-04 22:56:34
みなみ @minarudhia

「そう熱くなる気持ちはわからなくもありませんがねぇ、朝にも言いましたが、どうやってこらしめるおつもりでぃすか?」 「それは!……その……」 一度は意気込んで拳を握りしめるも、ジバニャンの語尾は力なく握りしめた拳もすぐにほどかれた。 21

2016-01-04 23:02:53
みなみ @minarudhia

「いくらジバニャンでも、ボディーガードみたいにニャーKBにずっとついていくのは無理だし…無理だよ」 「うーむ…」 景太の言葉に、ジバニャンは考え込む。 そうこうするうち、三人はさくらニュータウンの南側にあるこぶた銀行のすぐそばまでやってきた。 22

2016-01-04 23:06:26
みなみ @minarudhia

「で、どうするんですかジバニャン?」 ウィスパーが再度尋ねた。 その時である。 「あら…?」 「ン?」 銀行から出てきた紅い髪に目の若い女性。 彼女に伴って現れた妖怪。 一番先に気づいたのは、景太だった。 23

2016-01-04 23:12:33
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