妖怪ウォッチ二次創作長編：くれは舞う風第四話「人と妖を繋ぐもの・前編」

みなみ @minarudhia

通し番号：147

みなみ @minarudhia

「一体何する気だべ！」メラメライオンを乗せて飛び上がる麒麟になまはげが声を張り上げる。鎌首をもたげメラメライオンと麒麟の方を向き直ると生物は大きくその口を開いた。「ちょっと、まさか、本気！？」それに飛び込む姿勢と知った隊員達が口ぐちに騒ぎ出す。しかし、止める間もなく…。 148

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「メラメライオン…！！」生物の大きく開かれた顎の奥へ消えるメラメライオンに秋奈は祈る思いで服の裾を握りしめる。メラメライオンが生物の口に呑まれた直後麒麟は自身までが呑まれそうになる状況からすでに脱している。何も知らないなまはげ達から見れば、彼の行動は無謀と言えただろう。 149

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しかし、秋奈の眼は、生物に起こった異変をしっかりと捉えた。生物の喉が光りだしたものの、その光が激しい明滅を起こしているのを。それと共に生物の長い体躯が苦しげにうねりだした。「な、なんだ！？」「皆さん、もっと離れて！」光の明滅の弱まりと共に、うねりもひときわ激しさを増す。 150

みなみ @minarudhia

生物の暴れように巻き込まれまいと秋奈達が離れた時。きしゃああああああああああああああああ……！！龍が天に昇るがごとくその身体を大きく空に向けて伸ばした生物は、その喉の奥で明滅した光も消え失せ、一気に地面へと崩れ落ちていった。地響きと砂煙が周囲に広がった。 151

みなみ @minarudhia

「メラメライオン！」秋奈がすかさず駆け寄っていく。「こ、こら！待つだべ！危なねえべよ！」なまはげも秋奈の後を追いかけていく。生物の身体から色とりどりの球状の光が抜け出ていくなか、メラメライオンは何かから包丁を引き抜き汗を拭った。「この中に魂を吸収してたのか…」 152

みなみ @minarudhia

「一体おめ、なんちう無茶をするべな！」駆け寄ったなまはげが咎めるもメラメライオンが包丁を突き立てていたモノを目にし訝しんだ。「これは……玉、だべ？」「多分な」メラメライオンは包丁をなまはげに返し、かなり微弱に光を放ったバスケットボール大の玉を拾い上げた。 153

みなみ @minarudhia

「これが喉の肉の中に埋まってたんだ。後一歩遅かったらオレの魂も吸われるところだった」こう話している間に、生物の身体を抜け出た幾つもの光の何割かが倒れていた妖怪達の身体に吸い込まれていく。やがて、皆、目を覚ました。「みんな、元に戻ったのね」「これで被害者も元に戻るはずだ」 154

みなみ @minarudhia

皆が胸を撫で下ろした時、麒麟が隊員の怪我の治療を終えてやってきた。「他の者の傷は癒えた。あの生物も息絶えたようだな」「協力感謝するだべよ。どごろで、おめさん方、一度わが署に戻らんだべか？」「そうだな。なぜあんたが突然出てきたのか訳を知りたい」お互いに頷きあう。 146

みなみ @minarudhia

@minarudhia 訂正:155

みなみ @minarudhia

……同じ頃。この時間、すでに妖魔界では夕方である。ランプ一つの灯りの中、一本ずつ弓矢を作る手があった。矢羽、鏃、軸。狂いのないように一本一本作り、脇に敷かれた敷物の上に置いていく。その数すでに40本を超えようか。気を集中させ矢を作っていた者こそ、妖魔特急を気にかけていた妖怪だ。

みなみ @minarudhia

通し番号:156

みなみ @minarudhia

矢を作り終え、矢筒に収めるまで全ての矢を乾かし置いて羊の妖怪は時刻を確認した。ターミナルから貨物を伴う妖怪バスが来るまで後9時間。それを確かめてから、羊妖怪は背中のマントと矢筒を外して横になった。すぐには眠れるものでなく、そして彼は胸元のプレートを眺め触れた。そして呟く。 157

みなみ @minarudhia

「…必ずワシは会ってみせる。会って、もう一度あの頃のように……」 158

みなみ @minarudhia

妖怪ウォッチ二次創作SS:くれは舞う風第四話『人と妖を繋ぐもの・前編』〜終わり〜