妖怪ウォッチ二次創作長編:くれは舞う風第四話「人と妖を繋ぐもの・前編」
- minarudhia
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「お、お姉さん……!?」 「ケータ君!そこにいる妖怪!」 「この人妖怪が見えてるのニャン!?」 「他にも妖怪がいたのか」 「メ、メラメライオン、この子、妖怪が……」 驚き困惑する両者。 そばを通る人はみな一瞥を送るだけだった。 メラメライオンが咳ばらいをした。 25
2016-02-05 16:23:40「オレ、天野ケータといいます。こっちはオレの友達のジバニャンと…」 「わたくし、天才妖怪執事のウィスパーでうぃっす!」 川原添いのベンチに腰を落ち着かせ、一同は自己紹介に入っていた。 途中、地元のコンビニ・ヨロズマートで買ってきた菓子をつまみながらの会話だ。 28
2016-02-05 16:27:15「ケータ君ね。私は坂口秋奈」 「オレはメラメライオン。…こいつの恋人だ」 「ええっ!?」 景太がヨカコーラを吹き出す。 この町ではポピュラーな地元限定のコーラだ。 「妖怪で人間と付き合ってるの!?」 「成り行きでな…。こいつのボディーガードをしなければならんし」 29
2016-02-05 16:29:35景太の問いにメラメライオンは目線を反らした。 「しかし…アキナさん、あなたは妖怪ウォッチを持っていないのに我々妖怪の姿が見えるのですね」 尋ねてきたウィスパーに秋奈はうなずいた。 「私は小さい頃からあなた達妖怪が見えるんです。…和尚が言うには、“見鬼の目”だって」 30
2016-02-05 16:33:58「けんきのめ?」 景太が目を瞬かせる。 「その見鬼の目って…」 「え、あーハイハイ、見鬼の目ってのは……」 「妖怪のみならず、この世の未来と過去、人の運命すら見ると言われている能力の持ち主のことだ」 「のあーっと!?」 31
2016-02-05 16:38:57Padを取り出してスワイプし始めたウィスパーだったが、メラメライオンに説明を先取りされ盛大にズッコけた。 秋奈が驚きの声でメラメライオンに向き直る。 32
2016-02-05 16:40:11「そ、そんななの!?私のこの、目が?」 「ああ。それゆえに、普通の、妖怪が見える程度の人間よりもさらに生まれてくる確率は低い。総合的に極めて低い」 「ああ、確かに……10万人に一人の確率で生まれる特別な存在とありますね」 「そんなに!?」 33
2016-02-05 16:43:28めげずPadで調べていたウィスパーの指し示す内容に景太が軽く驚きを見せた。 「でも私…、そんな、妖怪以外でそんなおかしな物を見たことなんて…」 34
2016-02-05 16:45:42「全ての見鬼の目を持つ人間が初めからこんな力を備えて生まれてきたわけじゃないからナ。だがアキナ。お前には、他の妖怪が見える人間と見鬼の目を持つ人間とでは、決定的な違いがある」 「何?」 景太が促すと、メラメライオンはジバニャンの方を向き直った。 35
2016-02-05 16:46:06「お前、鼻は利く方か?」 「鼻?利かないこともないけどニャン?」 「アキナの匂いをかいでみろ」 「ニャ?」 メラメライオンの言葉に対しジバニャンは秋奈を振り返る。 秋奈もメラメライオンの言葉を訝しく思うも、ジバニャンの接近を受け入れた。 36
2016-02-05 16:49:59秋奈のそばに寄り、鼻を動かしたジバニャン。 「くん、くん………にゃあ?」 最初は少し鼻を近づけるだけのジバニャンが、まもなく鼻を強く秋奈の足に押し付けだした。 「ちょっ…?」 「いい匂いニャン……くん…たまらんニャ……」 「ちょっと、ジバニャン!?」 37
2016-02-05 16:53:24景太が引き離そうとするがジバニャンはピッタリ抱き着いて離れない。 「こ、これは一体どうしたんで…」 ウィスパーがメラメライオンに聞こうとした時。 「ジバニャン!!」 すっっぱぁあああん!! 「ニャアっ!?」 「いい加減に離れろよっ!!」 38
2016-02-05 16:58:52どこからか取り出したハリセンで景太はジバニャンを強く張り飛ばした。 これにはジバニャンもたまらず秋奈の足から離れ、頭にコブを作っていた。 「ケ、ケータ…痛いニャンよ!」 「ジバニャンが失礼なことするからだよ!すみません、オレの友達が迷惑して」 景太の謝りに大丈夫、と秋奈は返した。
2016-02-05 17:02:52「今見たと思うが、」 メラメライオンは咳ばらいして続けた。 「見鬼の目を持つ人間は、妖怪を引き付ける匂いを持つんダ。だから普通の人間や妖怪が見える人間よりも妖怪に狙われやすい」 「狙われるって…」 40
2016-02-05 17:06:39「狙われる理由は大きく分けて二つ。一つは自分の嫁にするため。もう一つは…人食いを常とする妖怪にとって、見鬼の目の持ち主はごちそうというわけだ」 メラメライオンは言いながら、景太の左腕を握った。 41
2016-02-05 17:07:58「見鬼の目はその力があるために、巫女や陰陽師などになれる素質があるんだ。一部の妖怪や神にとって食べるには最高らしい。だからオレはアキナの恋人であることを含め護る必要がある」 42
2016-02-05 17:12:23「あ、ほんとにウキウキペディアにもありますね…。しかし、今は巫女さんを選ぶ時代ではありませんし、人間を食べる妖怪なんてイマドキそういませんよ」 Padをスワイプしたウィスパーはそう言い飛び回った。 「そうなんだがこいつのガードが甘いんだ、妖怪を恐がった割にな」 43
2016-02-05 17:14:29「坂口さん、妖怪が怖かったんですか…、ところでなんでオレの腕を握って…」 「ああ、あんたの“それ”をアキナに見せてほしいからだ」 メラメライオンは言い、景太の左腕を指差した。 左腕に光る腕時計を。 「変わったデザインの時計をしてるのねケータ君」 44
2016-02-05 17:20:10「アキナ、これはただの時計じゃない」 「えっ?」 秋奈が目を瞬かせる。 そこへそそくさと割り込んだのがウィスパーだ。 「わたくしがお教えしましょう!ケータ君の腕に輝くこの腕時計こそ!人間と妖怪を繋ぐコミュニケーションツール、妖怪ウォッチ!!」 「妖怪…ウォッチ?」 45
2016-02-05 17:24:19「そうだ、アキナ。オレが、お前にメダルの使い方を教えると言ったのは、こいつのことを教えたかったからだ」 メラメライオンは言いながら、懐から何かを取り出す。 それを秋奈の手に握らせた。 「おやおや、メラメライオンさん、メダルを渡していなかったのですか?」 「まあな」 46
2016-02-05 17:30:32秋奈が手を開くと、そこには正拳を突き出し何かを砕くメラメライオンの姿が刻まれたメダルがあった。 「これ……」 「メダルは本来オレ達にとっての身分証のようなものだ。だが、妖怪ウォッチを持つ人間に友達の証としてこれを渡せば、人間の方はメダルを渡した妖怪を召喚できる」 47
2016-02-05 17:36:28