妖怪ウォッチ二次創作長編:くれは舞う風第四話「人と妖を繋ぐもの・前編」

少し長めに書いてしまいましたが、今回はついにあの三人が少しばかり登場となります。今後もこの三名は登場しますので、ささやかなお楽しみというとこでひとつ。 前→http://togetter.com/li/910304 /次→
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みなみ @minarudhia

「妖怪を…召喚?」 「早速実演してあげましょうケータきゅん!」 ウィスパーが景太に促す。 景太はうなずき、ベンチを立った。 「じゃあ、坂口さん、見ててください。…オレのトモダチ、出てこいジバニャン!!」 48

2016-02-05 17:38:09
みなみ @minarudhia

景太が手に持つメダル。 そこに、ジバニャンの姿がしっかり刻まれている。 メダルを中心に、奇妙な文字の羅列する光の帯が見えた。 「妖怪メダル、セットオン!」 メダルが時計のフレームの溝に挿入される。 その瞬間、時計の一部が淡いピンク色のライトを放ちだし、音が流れ出した。 49

2016-02-05 17:41:28
みなみ @minarudhia

《レディースアーンドジェントルメン!プリチー族!!》 『プリチー!プリチー!オーマイラブリー!プリチー!プリチー!プリチー!プリチー!』 突然どこからともなく現れ踊りだすチアガールの集団に囲まれ、踊りながら出てきたジバニャンを秋奈は呆然と見ていた。 「ジバニャン!!」 50

2016-02-05 17:48:07
みなみ @minarudhia

「どう、坂口さん?」 景太の声に秋奈はハッとして目の前のジバニャンを見た。 ウィスパーが言うところの“召喚”によって出てくるまで、ジバニャンは景太からだいぶ離れた位置に立っていた。 それが今目の前にいる。 51

2016-02-05 17:57:41
みなみ @minarudhia

「アキナ、これが妖怪ウォッチを持つ人間にとってのメダルの使い方だ。オレはこれを近いうちに教えておきたかったんだ」 メラメライオンは言い、景太を見た。 52

2016-02-05 17:58:51
みなみ @minarudhia

「妖怪ウォッチが生まれたのは実はそう昔からじゃない。それまでオレ達妖怪が人間と交流を深める機会はほとんどなかったんダ。一部の認められた人間に妖怪ウォッチが広まってからはオレ達妖怪の世界も変わりつつある。彼のような人間によって、な」 53

2016-02-05 18:00:29
みなみ @minarudhia

メラメライオンはそこまで言ってから、今度はウィスパーに向き直る。 「ところで、妖怪ウォッチだがまだ今までのシリーズは売ってるのか?」 「少し難しいかと…えーと……おそらく、旧式のものも零式も、手に入れづらくなってるかもしれませんでぃすね」 54

2016-02-05 18:04:52
みなみ @minarudhia

「ジョーズ氏が辞任してヨップル社のCEOが交替した影響か。Uの発売もまだ本格化されている段階ではないみたいしな」 「どういうこと?」 秋奈が尋ねると、ウィスパーとメラメライオンは困ったように話しだした。 55

2016-02-05 18:08:22
みなみ @minarudhia

元々妖怪ウォッチは60年前に一人の人間によってアイデア化されたものであり、そのアイデアを商品化し売り出したのが妖怪による妖怪達の企業の一つヨップル社だ。ヨップル社のCEOを務めていたスティーブ・ジョーズは、妖怪ウォッチの主たる開発責任者としての顔を持っていた。56

2016-02-05 18:09:42
みなみ @minarudhia

しかし妖怪ウォッチの製造販売を無断で行っていたことが発覚、その責任を負い社長の座を降りる。 そしてその座を継いだ妖怪マーク・シャッチーバーグの立てた新たな方針により、新たな妖怪ウォッチが作られることになった。 「それがケータ君が今身につけている妖怪ウォッチUなのです」 57

2016-02-05 19:02:06
みなみ @minarudhia

「しかも今の時点で妖怪ウォッチUはまだ試験品として一部の者に配布された数しか渡ってない。この間更新プログラムが発動されたが、まだ手に行き渡るものが少ないんだ」 ウィスパーとメラメライオンの説明に、秋奈はなんとなしにメラメライオンの意図に気づいた。 57

2016-02-05 19:04:30
みなみ @minarudhia

彼は自分に、妖怪ウォッチなる時計を持たせたいのだと。 「じゃあさ」 景太が口を開いた。 「じゃあ、俺のともだちのヒキコウモリがシャッチーバーグと友達だから頼んでみるよ!」 「え!?」 「ああ!そういえばあの人そうでしたね!?」 59

2016-02-05 19:06:57
みなみ @minarudhia

メラメライオンが秋奈に目線を送る。 そして景太に対しこう申し出た。 「ありがとう。しかし、ヨップル社の重役とてスケジュールは多忙だ、あまり時間を割かせてもらうわけにはいかない。ヨーカイ銀座辺りに赴いて探させてもらう」 60

2016-02-05 19:09:08
みなみ @minarudhia

「そうかぁ…でも一応頼んでメールを送ってもらうよ!何か返事はもらえるはずだし」 「…すまんな」 「いいって!それに、オレにも君と同じメラメライオンのともだちがいるんだ!」 メラメライオンの顔色が変わるのに四人は気づいた。 61

2016-02-05 19:11:47
みなみ @minarudhia

「…お前、オレと同じメラメライオンとともだち契約をしているのか」 「うん!…そういえば君、オレのともだちのメラメライオンとちょっと違うよね…」 景太は言いながらメラメライオンをまじまじと見た。 「そういえばそうニャンね。メラメラ言わないしなんか落ち着きがあるニャ」 62

2016-02-05 19:15:25
みなみ @minarudhia

「…」 「メラメライオンさん?どうしたんです?」 全員がメラメライオンの表情を窺う。 しばし沈黙を守った後、メラメライオンは4人へ背を向けた。 「そうか。気にする必要はない、ケータ。お前とともだちなそいつの方がオレ達メラメライオン本来の姿だ。通常運転だから気にするな」 63

2016-02-05 19:17:50
みなみ @minarudhia

「通常運転、て…」 「オレは事情あって、熱い感情を最低限ギリギリまで切り捨ててるからな…。それを完全に失った時こそオレ達メラメライオンは存在意義を失う」 秋奈はかける言葉がなかった。 妖怪の存在意義。 それは一体なんなのだろう。 64

2016-02-05 19:19:58
みなみ @minarudhia

「お前達妖怪ウォッチを持つ者と会えて良かった。礼を言う。アキナ、駅へ行くぞ」 「駅って……ちょ、ちょっと待って、メラメライオン!!」 景太、ウィスパー、ジバニャンに別れを告げ、秋奈は一人歩きはじめたメラメライオンの後を急ぎ追いかけた。 65

2016-02-05 19:22:44
みなみ @minarudhia

所変わって、さくら中央街の桜中央駅。 改札近くでメラメライオンが立ち止まり、途中から追いついていた秋奈が聞いた。 「メラメライオン、一体ここで何をするの?」 「…」 メラメライオンは自らの懐に手を忍ばせる。 そして、一枚のICカードを取りだした。 67

2016-02-05 19:29:17
みなみ @minarudhia

「アキナ、これでそこの改札にタッチしてくれないか」 「えっ?」 ICカードを手渡され、秋奈は改札の方を見る。 人々が通り様切符やICカードで通っていく、いつもの光景。 メラメライオンはそれを見ながら、促す。 まだ人の通っていない所へ近寄り、秋奈はICカードを押しあてる。 「!?」

2016-02-05 19:33:06
みなみ @minarudhia

場の空気が変容する感覚に秋奈はぞわりとするものを覚えた。 「人が…人がいない!?」 正午の日曜につきものの賑やかな駅内が、死んだかのように静まり返っている。 立っているのは、秋奈とメラメライオン二人だけ。 「メ、メラメライオン…これ、一体どういうこと!?」 69

2016-02-05 19:36:34
みなみ @minarudhia

秋奈の問いに彼は答えず、秋奈の手を引いて改札を通っていった。 普通なら二人…少なくとも秋奈の入る先をふさぐであろうゲートは、動かない。 「メラメライオン」 「もうじき妖魔特急が来る。乗るぞ」 「なに、特急…?」 続きを聞こうとする彼女の耳に、電車の音が聞こえたのはその時だった

2016-02-05 19:39:26
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