- k3_neoprotester
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と、とりあえず、ご質問のうち、文脈や意図の要素を明文化したらどうなるか、という点についての私の回答は以上になります。 これから(2)について、書いて行きます。
2016-06-27 12:55:23さて、正人ラムネさんからの(2)の質問について、書いてみようと思います。 ラバト行動計画の内容をセクシズムに拡張すべきでない、というのが私の考え方なんですが、なぜこう考えているか。
2016-06-28 06:47:39そもそも、ラバト行動計画ってのは基本的にレイシズムを対象に書かれているものではある訳です。このラバト行動計画ってのは、国連人権高等弁務官事務所の年次報告として出されたレポート(の付録)として出されているものなんですが、これも数次の専門家ワークショップを経てまとめられてるものです。
2016-06-28 06:51:29この辺りは、ラバト行動計画のパラグラフ6、7あたりに書かれてもいます。 pic.twitter.com/sPz6AWFj2e
2016-06-28 06:55:29また、パラグラフ9では、この「憎悪扇動と表現の自由」について極めて慎重な姿勢が示されていて、「自由権規約と人種差別撤廃条約から導き出される、厳密に定義された限界のうちに留まらなければならない」とされてもいます。 pic.twitter.com/wcd0kKAowd
2016-06-28 07:01:00なを、ここで触れられている 自由権規約19条3項 はこの通り。 pic.twitter.com/fCrEUHDohV
2016-06-28 07:02:04基本的にラバト行動計画も極めて抑制的に書かれているものだ、と理解しています。それだけ「表現の自由」に触れるという事を慎重に受け止めて作られている。 また、ここで「限界」として指摘されているのが自由権規約と人種差別撤廃条約ですから、セクシズムは埒外だと言う他ないだろうとも思います。
2016-06-28 07:05:39勿論、これを受けて、考え方や基準を「応用」していく取組みは、いくらあってもいいでしょう。差別問題はそれぞれ「違い」もありますが「共通点」もあります。それらを慎重に吟味した上で「応用」するのは一向に構わないだろうとも思います。
2016-06-28 07:07:16しかし、書かれている内容をそのまま「安易に拡張」するというのは、やはり危険であろうと思うのです。 セクシズムに固有の特性を無視することになる可能性もかなりある。それはそれで、慎重に検討した上でなされるべきだろうな、と思う訳です。
2016-06-28 07:08:29この点について、参考までにいくつか挙げてみたいと思います。 まず、最初に。 今回のHS解消法成立についても相当にご尽力された師岡康子弁護士のスウェーデンの反人種差別法制に関する論文から。
2016-06-28 07:10:47iss.ndl.go.jp/books/R0000000… こちらからも見れると思うのですが、ここではスウェーデンの2008年に成立した「反差別法」の成立の経緯が興味深いな、と思います。
2016-06-28 07:12:12該当部分ではこう書かれているのですが、それまでに成立している7つの差別禁止法を廃止・統合しつつ、新たにLGBTイシューを追加して2008年に「反差別法」が成立していることが解ります。 とりあえず、一回は全部バラで成立している訳です。 pic.twitter.com/3hAbz26SGr
2016-06-28 07:14:33また、エリック・ブライシュ著「ヘイトスピーチ」という書籍でもイギリスでの立法経過について触れられている部分があります。 ここでも、人種関係法を宗教に拡大することについて5年の議論が費やされたことが解ります。 pic.twitter.com/wLFGSXsENR
2016-06-28 07:16:57こうした事例をみていても、基本的に「範囲」を拡張することについては極めて慎重な姿勢であるのが通常だと理解するのが正しいかな、と。 とりあえずは、まずは「単独で法律が一回成立する程度にはその領域をしっかり掘り下げている」という事だろうと思います。
2016-06-28 07:19:49また、諸外国のHS規制法を見ていても、範囲についてはマチマチで本当に多様だなぁと思います。 前田朗先生の「なぜ、いまヘイト・スピーチなのか」という本に、各国のHS規制法(刑法)の規定が沢山紹介されてますので、いくつか挙げてみます。 amazon.co.jp/%E3%81%AA%E3%8…
2016-06-28 07:23:17ちょっと1つづつ挙げてくとキリがないので、昔、この本をxlsに写経してつくったリストを貼ります。 まず、欧州。 pic.twitter.com/HhOKHFUrCh
2016-06-28 07:33:57規定っぷりも、範囲も、それぞれ本当にマチマチです。 まぁ、どの国でも苦悩しながら作ってきたんだろうなぁとは思うのですが。 ここで、カナダの刑法を取り上げたいと思います。
2016-06-28 07:37:57カナダの刑法では、318条でジェノサイドスピーチを、319条でヘイトスピーチをそれぞれ挙げているのですが、対象範囲はいずれの条文でも「識別可能な集団」となってます。 pic.twitter.com/tjxepHoS6J
2016-06-28 07:40:03そして、この「識別可能な集団」については、条文上も定義がされているのですが、ここには「女性差別」と「年齢差別」は入っていないことが解ると思います。 これについてはですね、なぜ入ってないのか私にもよく解らない所ではあります。 pic.twitter.com/Bkt39IbsC5
2016-06-28 07:45:10もしかすると、特別法が他にあるのかもしれません。これは、私も調べれてないのですが、そういう可能性もあるだろうと思います。 しかし、他方で、(これは私の仮説にすぎませんが)、「HS規制」をすべきではないという判断がされている可能性もあるな、とは思うんですよ。
2016-06-28 07:46:55つまり、そもそもHS規制なんて「表現の自由」に触れかねないような危なっかしい事を、なぜ《法律という形式》でやるのか、という部分に関係するんじゃないかと考えている訳です。 本来、「言論の自由市場」論の通り、自然に淘汰されるのが好ましいのは間違いない訳です。
2016-06-28 07:49:52なぜそこで、あえて「法律」という形式を用いなければならないのか? 圧倒的格差のあるマイノリティへの憎悪・差別の扇動の場合、言論の自由市場論が健全に機能しないからだ、という前提認識があるからだと私は考えています。
2016-06-28 07:51:59