セイバー提督と神通さん【第三話】

深海さかな @dzurablk_kai

『メインホイール』 「チェック」 『レーダー』 「チェック」 『ブースターと左右インテーク』 「クリアー」 『射出座席』 「OKです」 『アームハンドル、コピー』 「ハンドル、チェック」 『IFFもだ』 「異常なし」 #私の彼はブラストランナー

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『神通もすっかり一人前だな FCSとECM』 「チェック、オールグリーンです」 『了解、出撃準備よし』 『了解、ブースターのテストを許可する』 男の声に神通は、セイバーの操縦捍を握り直す 『フルスロットル、15％』 #私の彼はブラストランナー

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「コピー、15％ 二番点火します」 『二番点火確認、ECSタービンオンライン』 「コピー ノズル73％、オールクリア」 『川内、そっちはどうだ？』 『OK、いつでも行けるわよ』 「那珂ちゃん、支援お願いね」 『はーい！』 #私の彼はブラストランナー

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神通の座るコックピットが、セイバーもろとも前傾する 『出撃までのカウントを開始する』 胸が高鳴る一瞬を、神通と川内は口許に笑みを湛えて待ち続けた #私の彼はブラストランナー

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『第４特科大隊、残弾僅か！』 『第７戦車大隊も撤収の許可を求めています！』 「後方の歩兵科を全部投入しろ！！ ゲリラ戦で時間を稼げ！！」 『第２中隊、交戦に入ります』 『航空支援を要請！！ 座標を・・・』 『航空支援は許可できない！！』 #私の彼はブラストランナー

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司令部に戻った国木田を出迎えたのは、無数の無線が次から次へと報告と要請を送りつけてくる混沌とした様だった 82式の無線機はパンク状態寸前で、いつ煙を吹き出してもおかしくないほどの通信がひっきりなしに入ってくる 国木田はそれら全ての状況を統合し、 #私の彼はブラストランナー

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戦局に応じた指示を素早く返していく 「だから左翼の装甲車を中央海岸へ向かわせろと言っているんだ！！」 「特科はいつ砲撃を再開するつもりだ！？ もっと作業を急がせろ！！」 「なに、砲弾が切れた？ ならばキャタピラで轢き殺せ！ 化物共を生きて返すな！！」 #私の彼はブラストランナー

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自然とヒートアップしていく口調に、騒がしさの耐えない装甲車内 だからであろうか、彼らは寸前になるまで気付けなかった 司令部のすぐ裏手、海岸から迂回してきた深海棲艦の一群の存在に 「敵襲！！ ２時の方向！！！」 #私の彼はブラストランナー

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車外から響く怒声とM2の低く乾いた銃声 急いで指揮通信車から飛び出した国木田の眼前に、駆逐イ級の真っ黒な影が迫り来る 「この・・・！！」 敵は50口径ですら容易に弾く甲殻を持った深海棲艦 だが国木田は無駄と知りつつも咄嗟にガバメントを向け引き金を引いた #私の彼はブラストランナー

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一発、二発 駆逐イ級がこちらを向く 三発、四発、五発 敵の目を狙うも当たらない 六発目を撃つと同時に敵の紺碧の眼は天を仰ぐと、口の中から現れた砲口が瞳に替わり国木田に向けられた 「師団長！？」 国木田に残された45口径の、最後の一発を撃った次の瞬間 #私の彼はブラストランナー

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耳をろうする銃声が付近に木霊したかと思うと、巻き上がった砂塵もろとも国木田の身体を吹き飛ばした 何が起きたかも理解できぬまま砂の中を転がる、還暦も近い細身な体躯 「くそ！！ どんだけ貧乏くじを引いたら引退できるんだ！！」 #私の彼はブラストランナー

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そう毒を吐きながら跳ね起きる国木田が見たものは、無惨に蜂の巣にされ転がった駆逐イ級の巨大な死骸と、同じく漆黒に染まったペイントの、五メートルはあろうかという鋼鉄の巨人だった #私の彼はブラストランナー

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『・・・神通、もう少し上手く着陸できないか？』 「提督が空中で発砲するからいけないんですよ」 『足首を挫いたぞ、まったく・・・』 「私も頭を打ちましたから、おあいこです」 そんな軽口を交わす間にも、セイバーの周りにたかる深海棲艦をケーファーが掃討する #私の彼はブラストランナー

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川内のウィーゼル・オルタがあらかた敵を片付け弾倉交換したタイミングで、神通も両手に持ったジェイナスをバトルライフルに持ち変えたその直後 『・・・国木田？』 神谷がぽつりと溢した メインディスプレイに目を向けると、セイバーの足元には人影 #私の彼はブラストランナー

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「お知り合いですか？」 『昔の上司だ まだ引退してなかったんだな』 「聞こえてるぞ神谷！！」 『なんでわかったんですか！？』 「貴様の声を忘れるものかよ なんだ、辞めたと思ったら女を連れ込んで漫画の真似か いい身分だなぁオイ？」 #私の彼はブラストランナー

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『まあその辺りは事情がありまして ともかく、それだけ皮肉が言えたら、まだまだ引退は先になりそうですね』 「貴様の不純異性交遊については、あとでじっくり聞いてやる 警務隊を交えてな」 「提督、そろそろ」 男同士の軽口に神通が割って入る #私の彼はブラストランナー

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レーダー画面を見ると、敵の赤い光点が海岸近くへ集まり赤潮のようになっている 『国木田さん、すみませんがお願いが』 「わかっている、貴様らへの攻撃を控えさせつつ、敵を誘導するんだろう」 国木田の頭の切れる様は、昔とちっとも変わっていないようだ #私の彼はブラストランナー

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『じゃ、そういうことで頼みます！』 そう返すや否や神谷はアサルトチャージャーを起動すると、砂埃を巻き上げながら前線へと駆け出していく 「おい、無事か？ 違う貴様じゃない、無線機だ！！」 国木田は地べたに倒れまだ寝ている若い兵士を蹴り起こすと、 #私の彼はブラストランナー

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無線機の受話器をひったくるように手に取り、怒声を張り上げた 「聞こえるか貴様ら、新しい仕事だ誇りに思え！！！」 #私の彼はブラストランナー

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神谷が無線の周波数を陸自のそれと合わせた途端、聞きなれた罵声がコックピットに響き渡った 『各部隊に通達、現在友軍の増援が海岸方面に展開しつつある これより火力統制を開始する！！』 「セイバーよりコマンダー、状況の説明を願います」 #私の彼はブラストランナー

深海さかな @dzurablk_kai

『その声は神谷の女だな？ 自分で判断しろ！！ ・・・と言いたい所だが、今回だけは教えてやる 待ちわびた航空支援の礼だ』 神通らの乗ってきた輸送ヘリを護衛してきた八戸所属のアパッチがロケットとチェーンガンで弾幕を張る中、国木田は簡潔に陸自の配置を説明した #私の彼はブラストランナー

深海さかな @dzurablk_kai

『陸自は第七師団の機甲科を中心に、砂丘後方に横隊となって展開中だ 海岸近くの普通科は下がらせたから、貴様らに好きなだけ暴れさせてやる』 「それでは私達に砲撃が」 『そのための火力統制だ 海岸は５つのブロックに分割している 貴様らのいる所では発砲させん』 #私の彼はブラストランナー

深海さかな @dzurablk_kai

『野戦特科、聞こえるか！？ 時間は十分与えたぞ、弾切れなどという言い訳は聞かせるな 機甲科貴様らは腑抜けの集まりか！ その鉄馬はただの飾りか、先の失態二度と見せるな 普通科諸君も同様だ、仕事が無いと思ったか？ 心配無用存分に働け この時のための軽迫だ』 #私の彼はブラストランナー

深海さかな @dzurablk_kai

国木田の指示が無線から止まない だが口から流れ出る厳しい叱責は語調のきつさと皮肉に反し、深海棲艦の物量に気圧されていた隊員達に再び闘志を巻き起こすことに成功している 『流石だ』 そう神谷が漏らした理由が神通にはよくわかった #私の彼はブラストランナー

深海さかな @dzurablk_kai

『ジュノー海岸砲撃開始！！ 弾種徹甲、照準は平射、復唱は不要だすぐにやれ！！ その他の海岸は特科に任す、榴弾で鉄の矢を降らせ続けろ！！ 普通科偵察科、聞こえるか！？ 装甲車両は機関砲を使用、敵の脚を狙って足止めしろ！！ 手榴弾擲弾で視界を奪え！！』 #私の彼はブラストランナー