セイバー提督と神通さん【第三話】

映画「エネミーライン」と小説「ダイナミック・フィギュア」ネタを再現できたので満足です ※途中、神谷と国木田の関係が「上司部下」➡「同期」とすげ変わってますが、そこはそういう仕様でして、出世に差の出た元同期という・・・すいません書き間違えましたァァァァ!!!
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深海さかな @dzurablk_kai

無線の指示から一瞬と経たず、セイバーとケーファーの小さな機体は砲弾の飛び交う衝撃波に包まれる だがそれらの一発として機体を掠めこそすれ、当たらないのは、練度の高い何よりの証左 神通がカノンブレードを振りかざしセイバーを駆るにつれ、国木田の指示も変化する #私の彼はブラストランナー

2016-07-01 23:36:19
深海さかな @dzurablk_kai

『友軍機がソードとゴールドに移動した! 特科はジュノーに照準を変えろ、味方に当てる愚は犯すな!! 第6、第7戦車大隊!! 砲身の仰角を目一杯上げろ、沖合いへHEAT弾を撃ち込むんだ 敵の後方を叩いてゴールド海岸を支援しろ!!』 #私の彼はブラストランナー

2016-07-01 23:39:42
深海さかな @dzurablk_kai

神通や川内の機体の周りは瞬く間に無数の曳光弾に包まれる 蛇のようにうねる機関砲弾や敵の甲殻を鋭く穿つAPFSDSによる圧倒的な火力は、特科のもたらした漏斗状の砲撃でボトルネックにハマった深海棲艦に容赦なく浴びせられると、敵艦の中古を量産していく #私の彼はブラストランナー

2016-07-01 23:43:12
深海さかな @dzurablk_kai

『特科を除き火力統制、砲撃停止!! 対空特科は平射に移行、敵の流量を調整しろ そこの野蛮人聞こえるか!!』 『野蛮人なんて失礼しちゃうよね!』 川内がチェーンソーで戦艦レ級を叩き割りながら軽口を返す 『北のユタ海岸へ移動しろ 最後の仕上げを行うぞ』 #私の彼はブラストランナー

2016-07-01 23:45:50
深海さかな @dzurablk_kai

国木田の指示の下、海岸の左翼側、半島のように突き出した砂浜へと移動するセイバーとケーファー 『長らく待たせた紳士諸君 火力統制終了だ』 日本最大の猿ヶ森砂丘、その海岸線のあちこちで、獲物に植えた猛禽がディーゼルの咆哮を響かせる #私の彼はブラストランナー

2016-07-01 23:57:42
深海さかな @dzurablk_kai

『神通川内、砲戦装備に持ち変えろ』 提督の指示でバトルライフルのスコープを覗くセイバーと、重装砲を構えるケーファー 『全隊に告ぐ、弾種照準全て任せる!! ありったけの砲弾を叩き込め!!!』 90式戦車の油圧履帯が車体もろとも首長竜の鎌首をもたげ、 #私の彼はブラストランナー

2016-07-02 00:02:15
深海さかな @dzurablk_kai

99式はその逞しい主砲に155ミリ砲弾を飲み込んでいく アパッチが砂塵と共に離陸する傍らでは、89式の35ミリと対鑑誘導弾が大きく空を見上げていた 『まもなく敵の最後の一派だ、上陸と同時に火力を投射! 下等生物に分の弁え方を嫌と言うほど教えてやれ!!』 #私の彼はブラストランナー

2016-07-02 00:13:35
深海さかな @dzurablk_kai

国木田の檄に海岸を覆う人の熱が、これ以上ないほど高まった次の瞬間 『撃ぇぇぇぇぇッッ!!!』 猿ヶ森砂丘の海岸線はブラストと陸自の十字砲火でチリと消えた深海棲艦もろとも、巻き起こる爆煙と水しぶきにその姿を隠していった #私の彼はブラストランナー

2016-07-02 00:16:18
深海さかな @dzurablk_kai

戦闘が終わると海岸は俄に騒がしくなった 疲弊しそこかしこで腰を下ろす機甲科隊員や負傷の手当てを受ける普通科隊員の間を縫うように化学防護隊が、深海棲艦の死骸に次亜塩素酸をかけ、除染作業を進める中を、セイバーは慎重に歩を進める 向かった先は #私の彼はブラストランナー

2016-07-20 14:12:27
深海さかな @dzurablk_kai

『久しぶりだな、国木田』 幕僚に囲まれ慌ただしく指示を出していた国木田が、ちらりと目付きの悪い糸目をこちらに向ける 「俺はお前のような知り合いは知らんぞ」 『おいおい、同期を忘れるとは酷いな』 「そう言うなら、その棺桶から早く降りて姿を見せろ」 #私の彼はブラストランナー

2016-07-20 14:14:33
深海さかな @dzurablk_kai

そう言われて躊躇する神通を促すと、神谷はハッチを開けた 国木田は地図から目を上げると、その視線を落としかけて二度見、三度見 夢でも見ているのか、と言いたげな表情 ブラストのコックピットからはてっきり、神谷の武骨な巨体が現れるものと思っていたからだ #私の彼はブラストランナー

2016-07-20 14:17:12
深海さかな @dzurablk_kai

「神谷、お前・・・ いつこんなに可愛くなった?」 「冗談やめろって 俺はこっちだ」 とセイバーの外部スピーカー 「初めまして、大湊から参りました 神通と申します」 「どういうことか説明しろ」 二人が頭の固い国木田に事の顛末を説明するには小一時間を要した #私の彼はブラストランナー

2016-07-20 14:22:42
深海さかな @dzurablk_kai

「つまり、今は神谷の記憶はあの機体に入っていて、貴様があれを操縦してる、と?」 話を聞いた国木田は、にやりと笑うとセイバーの方を振り返った 「昔から女の尻に敷かれてばかり、女運が無いやつだと思っていたが、まさか本当に敷かれっぱなしになるとはな」 #私の彼はブラストランナー

2016-07-20 14:25:13
深海さかな @dzurablk_kai

国木田の毒舌に神通がむっと頬を膨らませるのとは対照的に、神谷はこなれた様子でそれを受け流した 「お前はそんなんだから、嫁に逃げられるんだよ 今は何連敗だ?」 「うるせえ!!」 背後でくすくす笑う無線兵を一睨みで黙らせると国木田は会話の矛先を神通に向ける #私の彼はブラストランナー

2016-07-20 14:27:18
深海さかな @dzurablk_kai

「おい、海軍の」 「はい?」 「お前、神谷のことが好きなんだろ」 ぼっ、と神通は炎上 「隠さなくても分かる、というかバレバレだ 少なくとも無線をオープンにしていちゃつくのはやめろ、迷惑だ」 「そ、そんな、いちゃつくなんて・・・!!」 #私の彼はブラストランナー

2016-07-20 14:28:36
深海さかな @dzurablk_kai

国木田は懐からタバコを取り出すと、古くさいマッチを擦り、紫煙越しに遠くを見やる 神通もそちらに向き直ると、ちょうど夕陽に照らされた砂浜の向こうでケーファーの脚部に腰かけた川内が、陸自隊員とタバコ片手に談笑してるところだった #私の彼はブラストランナー

2016-07-20 14:32:03
深海さかな @dzurablk_kai

「お前さん、人と機械の恋愛なんて、成り立つと本気で思っておるのかね?」 一転して物静かになった丁寧な口調が、神通の胸に突き刺さる 「即答できないようなら、この先も一緒にいるのはやめておけ 不幸な結果にしかならん 人と人以外の色恋なんてそんなもんだ」 #私の彼はブラストランナー

2016-07-20 14:34:20
深海さかな @dzurablk_kai

「私は、そんな半端な気持ちじゃありません!!」 「なら、もっと早く言え 躊躇してたら永遠に伝えられなくなることだってある」 神通は一瞬、国木田の口許が悔しげに歪んだ気がした 「だがこれだけは言っておくぞ お前らの関係が互いを苦しめる時がいつか必ず来る」 #私の彼はブラストランナー

2016-07-20 14:40:30
深海さかな @dzurablk_kai

「乗り越えてみせます」 『だな』 「そうか なら、今はこれ以上は言わん この戦争を二人で乗り越えるがいい、将来を語るのはそれからだ」 国木田はそれだけ言い残しタバコを砂丘に投げ捨てると、白くたなびくマントを残して82式指揮車へと歩いていってしまった #私の彼はブラストランナー

2016-07-20 14:42:49
深海さかな @dzurablk_kai

「撤収だ、動かせる部隊から引き上げさせろ! ! いつまでモタモタしてやがる!? こっちは充分待ってやったんだぞ」 神通と神谷はそれを見届けると 『俺たちも帰るか』 「はい」 セイバーの右手を伝って神通がコックピットへとよじ登る #私の彼はブラストランナー

2016-07-20 14:45:02
深海さかな @dzurablk_kai

その途中 「きゃっ!」 つまずき、前のめりに倒れかける神通 『大丈夫か?』 「おでこをぶつけました 提督のカメラ、固すぎです」 いじけるような上目使い 「神通がドジなのが悪いんだよ」 そんな光景を装甲車に乗る直前、振り返り偶然目にした国木田には、 #私の彼はブラストランナー

2016-07-20 14:48:08
深海さかな @dzurablk_kai

それはまるで巨人と小人が口付けをしているかのようだった 「・・・ふん、若いくせに妬かせるな」 つい弛んでしまった表情を、部下に見られる前に引き締める 夕陽をバックにしたキスシーンは、折しも間に降下してきた大型ヘリに遮られ、さほど間を置かず見えなくなった #私の彼はブラストランナー

2016-07-20 14:50:33
深海さかな @dzurablk_kai

ハインドを思わせるタンデム複座涙滴キャノピーのコックピットと、ホーマーのようなサイドバイサイドローターを持った見慣れぬ大型の黒塗りヘリは、チヌークよりも2回りほど太い胴体の側面扉を大型トラックのウイングボディよろしく跳ね上げる #私の彼はブラストランナー

2016-07-20 14:55:44
深海さかな @dzurablk_kai

そこへ神谷の仲間だろう、緑色の重装機体が背中向きに収まると、ヘリは甲高い排気音を響かせながら離陸していく ダウンウォッシュが引き連れてくる砂ぼこりを浴びるのは御免だ、そう一人ごちると国木田は踵を返し、その姿は装甲車の中へと消えていった #私の彼はブラストランナー

2016-07-20 14:58:07
深海さかな @dzurablk_kai

数日後 「では、行って参ります」 警備府正面、レンガ造りの門の前で、古風なトランクを下げた神通は、ワンピースの裾を風に泳がせ振り返った 「お土産よろしくねー」 「いいなー、出張 私も行きたかったー!」 と、見送りの姉妹艦 「もう、那珂ちゃんたら」 #私の彼はブラストランナー

2016-07-20 15:00:52