#完全ノープラン艦これ与太話 【アンセム・オブ・プロジェクト・サタン　甲：ミスゲシュタルト】

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#完全ノープラン艦これ与太話 第2部最終話【アンセム・オブ・プロジェクト・サタン　甲：ミスゲシュタルト】 #KZNPLN

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打ち捨てられた廃墟跡は数ヶ月経った今なお処理される気配はなく、雪を被った瓦礫が平坦に散らばっている。車椅子は真新しい雪に細い轍を刻み、敷地の中央付近で立ち止まった。手には花束。同伴者に少し、確認するようなそぶりを見せたのち、薄っすらと焦げ跡の残る地面に置いた。 #KZNPLN

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「ごめんね。寒いのに、付き合わせちゃって」「ウウン」車椅子を押す同伴の駆逐艦は首を横に振る。乳白色の長髪が揺れた。「私は大丈夫っぽい。北上＝サンこそ、寒くない？」「ウン、ありがとう」サイバーサングラスを外す。光宿さぬ閉じた眼が露わになる。 #KZNPLN

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「……行こう、大井っち。私達のイクサを、始めよう」ボオーーンン……。遥か遠くの無人テンプルで、電子合成されたフェイクの鐘の音が、厳かに響いた。 #KZNPLN

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ゴブンコ・ライブラリ。かつてエンペラーの宮殿地下に建造された大会議場を前身とし、エンペラーが永世空席となった戦後、ネオヨコスカに建造された巨大対核防空壕である。その敷地管理は永世中立機関クナイチョに一任され、大本営を含むあらゆる公的機関が干渉を許されない。 #KZNPLN

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直径約2kmの広大な円形敷地は、スガモ重犯罪刑務所の3倍と言われる高度なセキュリティを満載した堅牢強固な塀で囲まれる。だがその内側は中央を除き、殆ど何の建造物もない。高樹をあらかた刈り尽くした平坦な草原と、その中に巧妙に偽装された小さな通気口のみが点在している。 #KZNPLN

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中央には、会議場と呼ぶにはあまりに小さな建造物が1棟。この特異な構造は、万に一つも塀のセキュリティを突破した侵入者を丸裸にするためだ。かれらは隠れ場のない広大な平野を1km直進せねばならない。過去、この塀を突破した勇敢なテロリストは5隻。全員が鬼籍に入った。 #KZNPLN

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聡明なる読者の皆様は察しておられよう。ゴブンコの本体は地表にない。中央棟と呼ばれる小建造物こそが、唯一の出入口となる装甲エレベーターなのだ。地下には厚さ3mのアンタイ・ニンジャ防壁でコーティングされた深さ500mの巨大な竪穴が掘られ、円筒状の本体が鎮座している。 #KZNPLN

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内部の蔵書館にはこの国の真実の歴史を記した恐るべき禁書が連ねられ、そのうち最も危険とされる一部については、イセ・グランドシュラインの最禁忌聖域と同等以上のアクセス制限が敷かれているとされる。その内容とは……不用意に、歴史の闇に触れるべきではないとだけ申しておこう。 #KZNPLN

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この選ばれし者のみが足を踏み入れられる絶対神聖領域の正門、即ち中央エレベーター前に、数隻の艦艇が列を為して現れた。うち、監視役と思しき艦艇が脇に退ける。残る艦艇のうち、先頭に立つは紫装束の重巡洋艦。そこに筋骨隆々の戦艦、橙色髪の駆逐艦、金髪のカイガイカンが連なる。 #KZNPLN

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「ドーモ、菊月＝サン。呉鎮守府総司令、重巡洋艦の足柄よ。開けてくださるかしら？」紫の重巡洋艦は艶めかしい声で、誰もいない中央棟の閉ざされた入口にアイサツした。後ろの者もこれに続く。「総司令秘書。戦艦長門だ」「駆逐艦、朧です」「ドーモ！プリンツ・オイゲンです！」 #KZNPLN

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その時だ！びゅうと一陣の、銀に色づいた風が彼女らの合間を吹き抜けたのは。「オアッ！ビックリしたあ！」オイゲンが困惑する。無理もなかろう。来賓艦として呉に招かれた彼女の母国は独逸帝国なのだ。かの恐るべき半神的存在に馴染みがないのも無理はない。 #KZNPLN

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先ほどまで誰もいなかった彼女らの前には、黒装束に銀髪の駆逐艦。そして口元は、鋼鉄製のメンポで覆われている。手には油断ならぬブレーサー。何たることか……隠しようもなく、これは……！「ワオ！スゴイ！ニンジャですよ、ニンジャ！」オイゲンが一転、感極まってはしゃいだ。 #KZNPLN

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「……ドーモ、呉鎮守府一行。クナイチョ所属、菊月だ」銀髪の駆逐艦は両手を合わせ、丁寧にアイサツした。「ワオ！菊月＝サンっていうのね！やっぱりニンジャなんです！？ニンポ使えるんですか！？」「……どちらの質問にも答える気はない。君の想像に任せよう」 #KZNPLN

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然り。彼女こそがゴブンコ・ライブラリの正門が難攻不落と言われる所以。彼女のもう一つの名を知る者は決して多くはない。彼女は古事記にも記された奥ゆかしいルールに従い、このエレベーターを不正利用せんとする者にのみ、その名でアイサツをする。そして皆死ぬからだ。 #KZNPLN

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呉鎮守府の頂点に君臨し続ける足柄らにとって彼女は顔見知りに等しいが、それでも、瞭然な部分でさえ、一切の詮索は行わない。それがなんら得にならぬと、わかりきっているからだ。「アラ、ゴメンナサイ。この子カイガイカンだから、色々と珍しいのよ。日本が」「そうか。興味が無い」 #KZNPLN

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菊月は無感情無関心に切り捨てた。「初めに言っておくが、我々クナイチョは帝国の政治について一切関知しない。この下で今後何が起きようと一切興味を持たない。私はこのエレベーターを通らない者になんら関与を行わない。例年通り好きにやれ。我々はただの敷地を貸すだけだ」 #KZNPLN

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「ええ、わかってるわ。今年はなんだか楽しくなりそうだし、好きにさせてもらう。……一応聞くけど、下でなんらかの戦闘……例えばテロ行為とその鎮圧があった場合は？」「何度も言わすな。何もしない。……ただ、そうだな。書庫には手を出すな。これは私の個人的な親切心だ」 #KZNPLN

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「あら、コワイ。やめておくわ。貴女は信頼できるしね」足柄は菊月にウインクした。菊月は相変わらず無関心だ。「興味が無い」「あらそう。ところで、他の鎮守府は先に来てるのかしら」「……誰がどの鎮守府かなど知らん。だが、お前達が最初でないのは確かだ」 #KZNPLN

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「こちらこそ、直接お会いできて光栄です」北上はサイバーサングラスを外し、深々とオジギした。「よしてくれ。私はそこまで上等なものじゃあない。寧ろ、あんたのとこの羽黒＝サンに助けられっぱなしだ」二色髪の駆逐艦はそれとなく、頭を上げるよう北上に促した。 #KZNPLN

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「ところであれから、羽黒＝サンの安否は……」「少なくとも、私の所には入ってきていません。書類上は、作戦行動中の消息不明で通してあります」北上はサングラスを再び装着し、俯きがちに呟いた。「……すまん、私が不甲斐ないばかりに」「イエ、他ならぬ彼女の意思決定です」 #KZNPLN