『のび太の人魚大海戦』にみるSF者的「業」の欠如+ドラにおける父親と母親

『映画ドラえもん のび太の人魚大海戦』を劇場で観賞した直後、2010年4月10日の深夜に連続Tweetしたツッコミを発掘しました。 -------- 4月13日に思い出して追記した、『ドラえもん』という作品における「父親と母親」についてのTweetを追加しました。 -------- 続きを読む
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森瀬 繚@翻訳クラファン開催中(固定ポスト参照) @Molice

新ドラえもんで、ようやく「母親」の役割が、ぬくもりが、ドラえもんからママに返された。改めて各エピソードを思い返すと、そのような気がしてならない。それが、寺本幸代さんの功績なのだとしたら、歓迎すべきことだと思う。おかえり、ドラえもん。一緒に冒険して、一緒に危ない目に遭おうぜ!

2010-04-13 04:54:02
森瀬 繚@翻訳クラファン開催中(固定ポスト参照) @Molice

とはいえ、以前『のび太の人魚大海戦』の「SF的なありえなさ」「藤子Fの博物学的フェティシズムへの無理解」について散々苦言をTweetしたように、新ドラにも拙いところは多々あります。

2011-01-04 22:56:01
森瀬 繚@翻訳クラファン開催中(固定ポスト参照) @Molice

考証がどうこう言うと「またこれだからSF野郎は」とか思われるかも知れませんが、『ドラえもん』という漫画作品全体が、藤子・F・不二雄というSF野郎のディティールへの無駄なまでのこだわりに覆われていて、そこに読者(主に少年)が惹きつけられたのだという前提事実を無視しています。

2011-01-04 22:58:47
森瀬 繚@翻訳クラファン開催中(固定ポスト参照) @Molice

『人魚大海戦』の「SF的なありえなさ」の最たるものは、「アクア星は5つの星並びのひとつ」「ぎょしゃ座だ!」「ぎょしゃ座は冬の星座だから今(夏)は見えないよ」「南半球に行けば夏だ!」なので、SFとかそういう以前の問題。こういうミスは、藤本先生の原作付ならば発生しなかったはず。

2011-01-04 23:10:59
森瀬 繚@翻訳クラファン開催中(固定ポスト参照) @Molice

作業予定がぽっかりあいたのでドラ映画行ってきました。感想は改めて。2013年は……僕とか北原さんとか向けのようですよ!(ネタバレ配慮のつもり)

2012-03-17 18:45:13
森瀬 繚@翻訳クラファン開催中(固定ポスト参照) @Molice

まず、もやもやした部分を残しつつ、とりあえず考えながらでも連投してみますか。『ドラえもん のび太と奇跡の島』は、てんとう虫コミックス版『ドラえもん』17巻、「モアよドードーよ、永遠に」をベースにしたオリジナル劇場版。旧ドラ『のび太と雲の王国』の原案でもあるエピソードです。

2012-03-17 21:14:56
森瀬 繚@翻訳クラファン開催中(固定ポスト参照) @Molice

以前、指摘をしたように、『ドラえもん のび太の人魚大海戦』は、『のび太の海底鬼岩城』をアレンジした作品だと思われます。あれこれの事情でそのままリ・ジェネレーションできない作品を、こんな感じでオリジナル新作にしていくという方針なのでしょう。

2012-03-17 21:16:17
森瀬 繚@翻訳クラファン開催中(固定ポスト参照) @Molice

「モアよドードーよ、永遠に」は、モアやドードー、リョコウバトといった、近世以降の絶滅動物をテーマに、自然保護というテーマを描く、『ドラえもん』では割と珍しい(と、認識)、社会善を描く作品です。僕的には、保護した動物たちの糞尿でのび太の部屋が大変なことになったあたりが妙に印象的。

2012-03-17 21:19:42
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『新魔界大冒険』が母と子の物語であったように、『のび太と奇跡の島』は父と子の物語です。設定的には、楠葉宏三氏の監督作品である『のび太の恐竜2006』から引き継がれたもので、「昔は自分も少年だった」お父さんとしての野比のび助の存在がクローズアップされます。

2012-03-17 21:25:44
森瀬 繚@翻訳クラファン開催中(固定ポスト参照) @Molice

『のび太の恐竜2006』の原作からの変更点のひとつに、恐竜の化石を探すべくのび太が引っぱり出した参考文献の出所が、のび助の蔵書とされた点があります。

2012-03-17 21:29:06
森瀬 繚@翻訳クラファン開催中(固定ポスト参照) @Molice

「ぼくもね、子供の頃恐竜に夢中になってね、あちこち掘りまわしたけど、何も出て来なかったなあ」(『のび太の恐竜2006』より)というのび助は、現在の設定だと1970~80年代の恐竜ブームの時代に少年期を送ったのかも知れません。このあたり、物凄くシンパシーを感じます。

2012-03-17 21:30:25
森瀬 繚@翻訳クラファン開催中(固定ポスト参照) @Molice

のび太が家の中から恐竜関係の本をかき集めてくるという展開は、一応、原作にもあります。このシーン、何を勘違いしたか『回虫のおろし方』なんていう本が混ざっているあたりに藤本先生の悪戯心が垣間見えます。ひでえ。(笑) 但し、原作でののび助は布団にくるまるのび太を叱りつけるだけでした。

2012-03-17 21:33:02
森瀬 繚@翻訳クラファン開催中(固定ポスト参照) @Molice

『のび太の奇跡の島』では、野比ファミリーが揃ってニュージーランドの絶滅動物についての番組を観ているシーンが導入にあります。「ためになるから一緒に観ましょう」とのび太、ドラを呼ぶのは玉子さん(ママ)ですが、ここはのび助の趣味が反映されているのかも知れません。

2012-03-17 21:34:58
森瀬 繚@翻訳クラファン開催中(固定ポスト参照) @Molice

何故かと言えば、のび助が子供の頃に、絶滅動物の図鑑を読んでいたことが続くシーンで明確に示されるからです。これは、『のび太の恐竜2006』における前述の変更箇所(つまり、楠葉宏三監督の意図が現れている部分)を強く意識した描写であるように思われます。

2012-03-17 21:37:25
森瀬 繚@翻訳クラファン開催中(固定ポスト参照) @Molice

脚本の清水東氏は、テレビアニメと『新・のび太と鉄人兵団』でドラの仕事をされていますね。70年代からのベテランで、子供向け番組では『プリキュア』シリーズに関わっておられます。

2012-03-17 21:41:23
森瀬 繚@翻訳クラファン開催中(固定ポスト参照) @Molice

『奇跡の島』では、「父と子の物語」「ひみつ道具に頼らず、自分の力で頑張る」というテーマで物語を綺麗にまとめ、笑いあり、スリルありと(このあたり、映画館で子供の反応を最後列の席から眺めるのが毎年の楽しみであります)、子供向けの物語として非常によく出来た映画になっています。

2012-03-17 21:42:58
森瀬 繚@翻訳クラファン開催中(固定ポスト参照) @Molice

なのです、が。30年以上ドラを読み続けてきたロートルの一人として、どうしよーーーもなく感じられてしまうのが、例によって藤本弘という稀代のマニアック作家の作品全体を覆っていた、「業」が足りない、というやつです。

2012-03-17 21:52:55
森瀬 繚@翻訳クラファン開催中(固定ポスト参照) @Molice

『人魚大海戦』では、「藤子Fの博物学的フェティシズムへの無理解」という言葉を使いました。今回で言えば(予告編や公式サイトでも散々オープンにされているので今更ネタバレと言われまい)、物語のキーとなる「カブトムシ」。

2012-03-17 21:58:24
森瀬 繚@翻訳クラファン開催中(固定ポスト参照) @Molice

物語の舞台となる、絶滅動物を保護しているベレーガモンド島(時間的、地理的位置は全く示されていません)は、「ゴールデンヘラクレス」という伝説の黄金のカブトムシの力に守られているという設定です。 http://t.co/nD910t0r

2012-03-17 21:58:36
森瀬 繚@翻訳クラファン開催中(固定ポスト参照) @Molice

よく知らない人のために説明しますと、「ゴールデンヘラクレス」というのは、中南米に棲息する世界最大のカブトムシ(ヤンバルテナガコガネ発見前は、最大の昆虫でした)をモチーフにしています。『奇跡の島』には、日本のカブトムシを含めると3種類のカブトムシが登場しています。

2012-03-17 22:02:50
森瀬 繚@翻訳クラファン開催中(固定ポスト参照) @Molice

【修正】 「ゴールデンヘラクレス」というのは、中南米に棲息する世界最大のカブトムシ、ヘラクレスオオカブト(ヤンバルテナガコガネ発見前は、最大の昆虫でした)をモチーフにしています。

2012-03-17 22:09:34
森瀬 繚@翻訳クラファン開催中(固定ポスト参照) @Molice

んがしかし。作中で、これらのカブトムシについて全く何の説明もされませんでした。そもそも、日本のカブトムシ以外にも、様々な形状・数の角をもつカブトムシがいるのだということを、知らないお子さんもいたのではないでしょうか。

2012-03-17 22:05:32
森瀬 繚@翻訳クラファン開催中(固定ポスト参照) @Molice

パンフレットを開くと、「ケリー博士の絶滅動物大解説」という見開きコーナーがあって、ベレーガモンド島に棲息する(そして作中に登場する)絶滅動物たちが紹介されています。にも関わらず、メインテーマであるところのカブトムシについての記事がこちらでもゼロ。

2012-03-17 22:07:37