艦乗りのプライド

竹村京さん(@kyou_takemura)の書いてくださった、落ちぬい二次です! 今回は香港近辺にいる金剛型&あたご型、あきづき型護衛艦と深海棲艦の抗戦のお話。ぜひおたのしみください! ご感想などは、竹村京さんor#落ちぬいタグへ。 続きを読む
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竹村京 @kyou_takemura

惜しみなく撃ちまくったESSMだが、費用対効果はかなり悪い。なにしろFMSの米国政府の取り分を含めて一発1億数千万円はする。雨あられとばら撒いたCIWSの弾でさえ一発7万円だ。消費した弾薬の数に調達価格をかけるのが怖くなるほどだ。#落ちぬい二次

2016-07-07 02:00:30
竹村京 @kyou_takemura

この作戦に限っては盛大に使えと上から指示されているのだが、とはいえ消費した弾がすぐに補充されるわけではない。しばらくは実射訓練は取りやめにならざるを得ないだろうから、技量の維持により腐心せねばなるまい。#落ちぬい二次

2016-07-07 02:01:39
竹村京 @kyou_takemura

倉橋大佐の思考はより広く、水上戦闘艦の運用にまで拡大してゆく。#落ちぬい二次

2016-07-07 02:02:06
竹村京 @kyou_takemura

現在は暗黙の裡に艦娘が攻撃、艦艇は主に船団護衛という住み分けが出来ている観があるが、艦乗りたちはそれに不満を持っている。攻撃こそ最大の防御ではないが、攻撃されてから対処するのではどうしてもこちらが不利になる。やはり積極的に敵を叩いてこそこちらの被害を最小化できる。#落ちぬい二次

2016-07-07 02:03:30
竹村京 @kyou_takemura

相手が国ならば批判が出るだろうが、この戦略の相手は国ではなく正体不明の怪物どもである。批判するのは得体の知れない新興宗教や市民団体程度であろう。#落ちぬい二次

2016-07-07 02:03:41
竹村京 @kyou_takemura

そも、この作戦は国民への公開を前提にしている。映画のように編集し、精強な護衛艦部隊が見事に深海棲艦を撃滅する。護衛艦部隊は必要だ。だがコストがかかる。だからより安価・高性能な装備を開発・調達する予算を付けてあげよう。そういう世論を誘導するためだ。#落ちぬい二次

2016-07-07 02:04:40
竹村京 @kyou_takemura

ロケット推進超高速砲弾なら一発4800万円程度。米軍が開発中のレールガンなら砲弾は250万円ほどで対地攻撃用ミサイルを代替でき、まだ実証段階だが大出力レーザー兵器に至っては一発100円程度になる。#落ちぬい二次

2016-07-07 02:06:12
竹村京 @kyou_takemura

海軍の艦艇部隊としてはそれら先進兵器が欲しい。安価で小さく、強力な兵器があれば継戦能力は向上する。 無論今日ねだって明日買ってもらえるというようなものではない。だが、数年先の建造計画には確実に影響を及ぼせるだろう。#落ちぬい二次

2016-07-07 02:07:24
竹村京 @kyou_takemura

宣伝やら世論の誘導やらは現場の知ったことではないし、そんな統幕や、おそらく大本営が絡むような仕事には踏み込みたくない。#落ちぬい二次

2016-07-07 02:09:15
竹村京 @kyou_takemura

大局を見れば作戦によって艦艇と艦娘を使い分ける事で効率化が望めるということもある。しかし、それ以上に艦艇部隊が深海棲艦と戦って勝つのは海ぼうず以来の艦乗りの悲願だ。そのためならいくらでも危ない橋を渡ろう、と、あたご艦長は心に決めていた。#落ちぬい二次

2016-07-07 02:09:39
竹村京 @kyou_takemura

そして。 戦術面でも装備面でもない、もっと大切な成果がある。倉橋自身の心境の変化だ。#落ちぬい二次

2016-07-07 02:09:55
竹村京 @kyou_takemura

艦乗りの御多分に漏れず、やはり倉橋にも艦娘を人ではなく兵器として認識する部分が大であった。しかしこの数日間だけで、金剛と霧島は戦艦の力を持つ人型の兵器などではなく、年相応の心を持った一人の女性であると、ごく当たり前の認識に立ち戻る事が出来た。#落ちぬい二次

2016-07-07 02:11:39
竹村京 @kyou_takemura

協同作戦に最も必要なのは相互理解である。艦艇部隊と艦娘の交流がより積極的になれば、取り得る作戦の幅も広がってくるだろう。艦娘にとっても理解されることは多くの面で有益なはずだ。#落ちぬい二次

2016-07-07 02:11:55
竹村京 @kyou_takemura

「こんなところでしょうか。ボルネオには二日いる予定でしたか」 「ええ。久方ぶりの実戦だったので、乗員たちには少しくらいご褒美を出さなければ」 飯塚の問いに、倉橋がにやっと笑う。#落ちぬい二次

2016-07-07 02:13:05
竹村京 @kyou_takemura

ボルネオの基地は艦艇部隊ではなく艦娘部隊の拠点のため、弾薬の補給や艦の造修は望めない。だが、港で停泊してより詳しく損害を確認できるし、何より乗員の羽を伸ばすのは士気に直結する重要な事だ。#落ちぬい二次

2016-07-07 02:13:21
竹村京 @kyou_takemura

「基地でも現地の優秀なシェフを雇っているようで、食堂もなかなかの料理を出すそうですよ」 「ほう、それは楽しみです」#落ちぬい二次

2016-07-07 02:14:19
竹村京 @kyou_takemura

気楽な士と違い、幹部、特に艦長ともなれば現地の指揮官との面会や調整が必須となり、街に繰り出す時間もさほど取れないだろう。だから基地内でも美味い飯が食えるというのはありがたい事だった。#落ちぬい二次

2016-07-07 02:14:35
竹村京 @kyou_takemura

「ああ、そうだ。そちらの若い者にも言い含めてほしいのですが」 「何です?」 「基地司令の財前という男、有能ですが黒い噂があります。よもや大本営絡みではないでしょうが、目立つ行動は厳に慎む様にと」#落ちぬい二次

2016-07-07 02:16:01
竹村京 @kyou_takemura

ボルネオには艦娘がかなりいるはずだが、直接指揮しているのは艦隊を構成できるギリギリの6名か7名に過ぎず、戦果は可もなく不可もなくだ。そのくせ資金は潤沢らしく、戦力に見合わぬ大規模の基地を構え、島内に確固とした権力基盤を構築しているらしい。#落ちぬい二次

2016-07-09 13:41:28
竹村京 @kyou_takemura

ボルネオ島に転属してわずかな間に少尉から中佐まで駆け上がった異例の経歴もある。医療系財閥の出身という出自を考えても奇妙に過ぎた。#落ちぬい二次

2016-07-09 13:41:46
竹村京 @kyou_takemura

「わかりました」 飯塚が一礼して退出してゆく。向こうの飛行甲板がやられているので行き来にはハイラインを使うのだが、夜間のハイラインはなかなか怖い。自分が艦を移る必要が無くてよかったと、倉橋は密かに思った。#落ちぬい二次

2016-07-07 02:17:04
竹村京 @kyou_takemura

倉橋はひとり、目を瞑る。 努めて冷静を装っていたが、今でも胸が沸き立つようだ。 相手は未成の地上型とはいえ、護衛艦が正面切っての戦いで深海棲艦に勝ったのだ。モーターボートとワイヤーなどという特攻まがいの戦術ではなく、海軍が海軍として戦って勝ったのだ。#落ちぬい二次

2016-07-07 02:17:49
竹村京 @kyou_takemura

海上自衛隊、海ぼうず以来の悲願を自分が果たした。 そして、同じく海で戦う者同士、艦乗りと艦娘が肩を並べて戦った。 万感の思いが倉橋の胸中を満たしていた。#落ちぬい二次

2016-07-07 02:18:27

あとがき&おまけ

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