ブレイド・オブ・アングリー・ザット・ブレイク・ザ・シャルロー・ホープ

理不尽が道理を殺す。それがインガオホー也。 ならば、稚拙な希望が生み起こすインガオホーとは? 入江の魔人シリーズとマスクドハンターズが一人仮面アーチャーとのコラボ外伝作品!
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Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「…その言葉、しかと聞き届けたぞ」ライオンハートは右手で巨剣を肩に担ぐと、左腕を横に伸ばした。背の6本の触手が木の根めいて左腕に絡みつく。やがて、触手のイ級主砲が円環を形作る。その腕の太さは3倍近く膨れ上がる!「これなるは我が奥義…」 31

2016-07-17 16:12:13
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

ライオンハートは左巨腕を後ろに引いた。その青い目が光る。「六連主砲――」「やべっ」チクマは咄嗟に防御姿勢を整えた。左巨腕がカラテパンチを振るう。6つの砲撃が、巨剣を軽々と振るうカラテの速度を相乗して、放たれた!「斉射ッ!!」KRA-DOOOOM! 32

2016-07-17 16:14:10
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

着弾の轟音が出撃ドックに響き渡る。チクマはそれを正面から受け止めた。彼女の艤装には6つの凹み。立ち上る硝煙。「馬鹿な…!」「受け止めただと!」六連主砲の威力を知るスクトゥムとコールドレインは驚愕の声を上げた。だが、当のライオンハートに動揺はない。「己の言葉を後悔したか?」 33

2016-07-17 16:16:37
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「この野郎…!」「ほーお!」チクマは屈辱に歯を食いしばる。そして、深海棲艦の二人の他に驚きの声を上げたものがもう一人。チクマの、ソルトレイクシティの頑強さを知る江見だ。「チクマが防御するとはびっくりだ。君にも危険な攻撃かどうかを見分ける知性が…」「うるせえ!」 34

2016-07-17 16:19:26
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

背後の江見を睨み付け、チクマは激昂!「ちょうど楽しくなってきてんだから茶々入れんじゃねぇバカ野郎!」「…アッハイ」江見は白けたように返した。彼は己の話を遮られるのがこの世で最も苦手なのだ。「前言撤回してやるぜ、王様野郎!テメェは、面白そうだ!」 35

2016-07-17 16:22:00
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

チクマがそう言うと同時に、その目から蒼い光が零れ出す。名付き深海棲艦達はチクマから圧倒的な力の放流を感じた。「本気出してやるよ…今度はそっちが後悔しな!」「おいライオンハート。これは拙くないか?」スクトゥムは後退りながら言った。言葉にしないが、コールドレインも同様だ。 36

2016-07-17 16:24:26
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

だがライオンハートは退かなかった。彼は何らかの勝利を確信しているのだろうか…否。彼はただ察知しただけであった。最後の友の合流を。「来たか」「アア?」チクマがその言葉を訝しむと同時に、外海から音もなく、何かが飛び出した。それはまるで、闇が滴となって落ちてきたかのようであった。 37

2016-07-17 16:27:33
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「グワーッ!」誰かの悲鳴が響いた。チクマとライオンハートの間に、闇が降り立った。その闇は、傷塗れの深海棲艦を足蹴にしていた。「あれは…!」聖良は驚愕した。足蹴にされている深海棲艦は、自分たちが討ち漏らした“楔”付きの戦艦ル級であった。 38

2016-07-17 16:30:25
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

ル級の上に蹲っていた闇が形を成した。否、襤褸布めいた黒いローブを纏った者が起き上がったのだ。その者は、チクマを緑の炎光が灯る左目で睨み竦めると、アイサツをした。「ドーモ、チェルノボグです」「ど、どーも、チクマです」チクマはアイサツを返した。その胸に名伏しがたい恐怖が満ちる。 39

2016-07-17 16:33:12
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

瞳から蒼い光は消えていた。チェルノボグはライオンハートへと振り返り、親しげに呼びかけた。「どうした、レオ。苦戦しているじゃないか」「君こそ遅かったじゃないか。我が友チェルノボグ」「これがな」チェルノボグは足元のル級を蹴った。そのル級は四肢を捥がれ、傷口を焼き潰されていた。 40

2016-07-17 16:35:26
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「案外粘ってな」「アバッ…アバッ…!」聖良は絶句してチェルノボグの言葉を聞いた。自分の艦隊が総力を結集しても倒せなかった‟楔”付きの敵を、この深海棲艦はたった一人でここまで無残に追い詰めたというのか。 41

2016-07-17 16:38:50
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

チクマは動かなかった。否、動けなかった。憎悪の呻き声を上げる死に体の深海棲艦を前にして。そして何より、目の前の闖入者から放たれる濃密な死の気配を前にして、心胆が竦んだのだ。「コイツはどうする?」「…救えるのか?」ライオンハートは悲しげな視線をそのル級に送った。 42

2016-07-17 16:40:27
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

チェルノボグは首を横に振った。「無理だな。首に何か埋まっているが取り出せん…それに取り出せたところで、コイツの命は限界だ」「そうか…」ライオンハートは悲しげに目を伏せた。チェルノボグはそれを確認すると、右手に緑色の炎光を纏わせ、カラテを構えた。 43

2016-07-17 16:43:13
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

そして、無慈悲にル級に告げた。「恨み言は今言わんでいいぞ。ああ、ハイクもだ……どうせ後で、飽きるまで聞くことになる」「やめ」その時、静止せんとしたのは聖良とチクマ。果たしてどちらの声であったのだろうか?だが、眼前の死の化身は無慈悲であった。「イヤーッ!」「アバーッ!」 44

2016-07-17 16:46:14
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

カワラ割りがル級の頭部を打ち砕く。聖良の目には、緑の炎光で塵一つ残さず燃え尽きる〝楔”が見えた。「サヨナラ!」ル級は爆発四散した…死んだのだ。チクマはその事実を認め、足を震わせた。チェルノボグはチクマをもう一度睨む。左目の炎光が爛々と燃え盛る。「お前も死ぬか?」 45

2016-07-17 16:48:27
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「いや、もう帰るぞ。友よ」ライオンハートは外海に目を向けた。「ボトムレスは既に安全圏まで離脱したそうだ。我々ももうここに用はない」「そうか」「ちょっと待った!」異様な雰囲気に呑まれかけた江見が声を上げる。「もう少しゆっくりしていってはどうかな?」「断る」 46

2016-07-17 16:52:02
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「追えるなら追ってくるがいい」チェルノボグは両腕に緑の炎光を纏わせ、振るった。「イヤーッ!」BOOOOM!チェルノボグの前に、外海への進出を阻むように緑炎の壁が形成される。緑炎からは、幾千幾万もの呪詛の言葉が零れ落ちた。 47

2016-07-17 16:53:19
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「痛イ!」「燃エチャウ!」「熱イヨォ!」「ヤメテ!」「コワイ!」「許シテ!」「呪ッテヤル!」「助ケテ!」「母サン!」「殺サナイデ!」「…ッ!」チクマは蒼白し、へたり込んだ。それは彼女が目をそらし続けた誰かの死そのものであった。死に際の声であった。 48

2016-07-17 16:55:24
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「趣味が悪いねぇ…」江見はただそう言った。やがて、緑炎の炎の壁が消えると、深海棲艦達はその姿をこつ然と消していた。 49

2016-07-17 16:55:46
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「ブレイド・オブ・アングリー・ザット・ブレイク・ザ・シャルロー・ホープ」#5 おわり 直ちにエピローグへ続く

2016-07-17 16:57:04

エピローグ

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「ブレイド・オブ・アングリー・ザット・ブレイク・ザ・シャルロー・ホープ」エピローグ

2016-07-17 16:57:15
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

北方海域の海底。ボトムレスはそこで身を潜めていた。ボトムレスの装甲の中で、深海棲艦達は身を寄せ合っていた。ボトムレスの装甲内はいくつかのブロックに分かれており、救われた深海棲艦達と名付きの深海棲艦は中枢ブロックに身を寄せていた。 1

2016-07-17 16:57:37
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「これから、どうするつもりだい?」薄明りの元、ライオンハートは助け出した者達に尋ねた。「…ドウシヨウ。戻ッタトコロデ、ウラナスカノ連中ニイイヨウニ利用サレルダケダ」誰かがそう零した。その言葉に同意する声が複数聞こえた。 2

2016-07-17 16:59:08
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「どうするの?」下半身を自身の艤装に埋め込んだ裸の美女、ボトムレスの本体が問うた。「彼ら、連れていくの?」「それはダメだ」ライオンハートは首を横に振った。「私たちの戦いは飽く迄私たちのものだ。彼らは己の望む平穏に生きるべきだ」「ケド」蹲っていた深海棲艦が立ち上がった。 3

2016-07-17 17:01:05
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