ブレイド・オブ・アングリー・ザット・ブレイク・ザ・シャルロー・ホープ

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「我々に謝罪をする理由はない」ライオンハートは堂々と言い放った。リンクスがボトムレスの装甲の中へと飛び込んだ。チクマはリンクスを撃ち抜かんとしたが、スクトゥムが射線を阻むように立ちはだかる。「どけよ」「どくかよ」チクマとスクトゥムは縄張り争いをするヤンクめいて睨み合う。 6

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痺れを切らし、チクマは右腕を振りかぶる。スクトゥムは嗤うと、左足を後ろに下げ、半身となった。スクトゥムが開けた空間から、巨剣の切っ先が伸びた。「なっ、テメェ！」「イヤーッ！」「オラーッ！」ライオンハートの繰り出した突きを、チクマは右手の装甲で強引に払った。 7

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スクトゥムとライオンハートの触手たちが砲門を並べる。そのすべてが一斉に砲火を放つ！BRATATATATATATA！「あっぶね！」チクマは両腕をクロスさせ、艤装で顔を庇う。砲撃はチクマの艤装に傷一つ残さず、弾かれた。 8

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「イヤーッ！」スクトゥムの肩を蹴り、飛び上がる白煙を纏う影。氷の騎士甲冑を纏ったコールドレインがチクマに追撃を仕掛ける。コールドレインのコリ・ヨロイ・ジツだ。彼の者は一瞬の状況判断で射撃戦を放棄し、近接カラテで挑みかかったのだ！ 9

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「イヤーッ！」「オラーッ！」コールドレインの爆撃チョップを、チクマはクロスした両腕を掲げることで受け止める。KRAAASH！コールドレインの氷ブレーサーが砕け散る！ナムサン！何たる堅牢な装甲か！コールドレインは驚愕の表情を浮かべた。「なんと」 10

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「私の装甲を抜きたかったら…」チクマが獰猛な笑みを浮かべる。「重巡でも持ってきやがれ！オラーッ！」「イヤーッ！」コールドレインは咄嗟に装甲を蹴って飛び離れた。チクマのアッパーカットが空を切る。ブレーサーを凍結再生させ、コールドレインはライオンハートの隣に降り立った。 11

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「分かってはいたが、硬すぎるぞコイツ」「流石は最初の7使徒…堅牢を司るものか」ライオンハートは謎めいた言葉を呟いた。チクマが片眉を吊り上げた。「ほ～お、ずいぶん知ったふうな口きくじゃあねえか。物知りらしいなテメェ」「私の認識は他の者と然程変わらんよ…」 12

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「だが、どうやら伝説は真実は当たらずとも遠からずなようだ」ライオンハートは堂々と立ち、片手で巨剣を振るった。「貴方には聞きたいことがある…生け捕りにさせてもらうぞ！」「ナマ言ってんじゃねぇぞ角捥ぐぞオラァ！」「「「イヤーッ！」」」 13

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3対1のイクサはその激しさを増し、繰り広げられる。聖良はただそれを見ることしかできなかった。鍛えられたカラテと超常のジツ、そして鋼の艤装が織り成す命の奪い合い。これこそが、艦娘と深海棲艦の真なるイクサである！ 14

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「イヤーッ！」「オラーッ！」「イヤーッ！」「オラーッ！」「イヤーッ！」「オラーッ！」「イヤーッ！」「オラーッ！」「イヤーッ！」「オラーッ！」「イヤーッ！」「オラーッ！」「イヤーッ！」「オラーッ！」「イヤーッ！」「オラーッ！」「イヤーッ！」「オラーッ！」 15

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…やがて、深海棲艦達とチクマは一旦距離を取った。双方目立った傷は見当たらない。チクマは直線的な攻撃故に当てることができず、深海棲艦達は主砲やカラテによってチクマの装甲を抜けていないのだ。イクサは、膠着状態に陥った。「おうおう！かゆいぐらい言わせてくれないのか？ああ？！」 16

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チクマは喧嘩腰で凄む。その装甲には砲撃やカラテを弾いたことによる擦過傷に塗れているが。損傷らしき傷は無い。「これなら一発でも千発でも変わらねえぞ」「一発も当てられない奴が何を言うか」コールドレインはそう返した。「そんなこというと、一発当たったそいつがちょっと可哀想だろ…」 17

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チクマは憐みの視線をスクトゥムに向ける。スクトゥムは怒り心頭で反論を返した。「俺はいいんだよ！盾だからな！」「あぁ、はいはい」チクマは呆れたような顔をして、肩を竦めた。そして再び攻勢に動こうとして…「あれ？チクマ君。まだ仕留めてないのかい」その動きが止まった。 18

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忌々しげな表情で彼女は背後を、己が吹き飛ばした資材搬入口に立つ細身の男を睨んだ。その男は白い軍服を身に纏った提督であった。「何しに来やがった、江見」「いやいや、ずいぶん時間がかかっているだから気になってね…それに」江見はドックに目を向ける。既にボトムレスの姿はなかった。 19

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「どうやら取り逃がしたようだね」「ケッ！誰がテメェの命令なぞ聞くか」 「アカシの癇癪を止める私の身にもなってくれたまえ」江見はわざとらしく溜息を吐いた。深海棲艦達はこの男の放つ異様なアトモスフィアを警戒し、前には出ない。江見は値踏みするように深海棲艦達を見た。 20

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「んー、君たち。いい体してるね」「は？」「よかったらうちで働かないかい！願いが叶う自慢の職場だよ」「何を…言っているんだ。コイツは」コールドレインは得体の知れぬ恐怖を覚えた。ライオンハートは江見の目を見据え、アイサツをした。 21

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「ドーモ、ライオンハートです…笑えない冗談は止めて貰いたいな」「アイサツか！素晴らしい、よく礼儀ができている。ますます本気で配下にしたいね！あっと、アイサツは返さないとね。ドーモ、江見悠です！」江見は快活に笑い、アイサツを返す。その言葉に一切の虚飾はない。 22

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それを悟り、ライオンハートは不快げに顔を顰めた。「余所を当たれ。我々は誰かに支配されるつもりは毛頭ない」「いやだなぁ！私は真剣に世界平和のために行動しているんだ。見知らぬ誰か助けるのは嫌かい？」江見は仰々しく両腕を広げた。 23

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「この世界に絶対的な平和を齎すために、私には力がいるんだ…幾千幾万の命を踏みにじり、魔人になる力がね」「魔人…？」江見の言葉にスクトゥムとコールドレインは困惑し、互いに視線を交わした。ライオンハートは憤怒の形相で江見を睨み付けた。「強いた犠牲の上に平和を築くと謳うか…！」 24

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「平和を求めて戦った英霊達は皆君の足の裏を見ているだろう？！」 おお、見よ！対する江見は悪魔めいた狂気の微笑！血を啜ることを望む魔人の哄笑！邪悪な魔人を前にし、虐げられた者達の王の怒りの炎が激しく燃え上がる！「貴様の理想に興味はない！私は貴様のために死ぬつもりはない！」 25

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それを聞き、江見は心底残念そうな表情を作った。「いやはや、それは困った…ここから逃げた敵を殺してもらおうと思ったのに」「言うに事欠いて貴様！」ライオンハートは吠え猛る。その声を聴き、蚊帳の外に居た聖良は信じられぬといった表情で顔を上げた。「まさか…」 26

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「んん？」江見は興味なさげな視線を聖良に向けた。「いつまでそこで倒れているつもりかね聖良少将。戦うなり逃げるなり、良い方を選びなさい」「貴方は…まさかあの子達を！」「あの子達…？君が許可なく匿っていた深海棲艦達かい？」江見はへらへらと笑い出す。 27

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そして、聖良が最も望まぬ言葉を吐き出した。「君が良かれと思って匿っていたんだろう？私がサポートしていなければ、今頃君は死刑だ。証拠隠滅に協力してあげたんだ。君が言うべきは、感謝の言葉だ」「…ッ！」聖良の頭に血が上る。脳裏に浮かぶは、怒りに燃え絶望に怯える深海棲艦達であった。 28

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((こんな人の…いや、ヤツのせいで…そのせいで、あの子達は…！))「このッ！人の皮を被った悪魔ッ！！」聖良の心の奥底からの罵倒に、江見は涼しげに返答した。聞き慣れたと言わんばかりに。「悪魔？！違う違う！私は皮の剥がれた人間だよ」「ならおとなしく死ぬがいい」 29

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ライオンハートは片手で巨剣を構えた。チクマがライオンハートの前に立ち塞がる。「どけ」「…どかねぇよ」チクマはぶっきらぼうに返す。そしてつまらなさそうに両腕を広げた。「どうせお前たちに私の装甲ぶち抜く火力はねえんだ…いっそのこと棒立ちしてやろうか？ちょっとは楽しくしてくれや」 30