ベテラン塾講師の指摘「国語が苦手な生徒は問題を放射状に読んでいる」とは?原因と対策を聞いてみた
大阪の塾講師、ピクセルスタディ(@PixelStudy2022)さんのツイートが話題になっている。
これまでの指導経験の中で、国語が苦手な子どもの一部が「問題用紙の真ん中から放射状に」読んでいることに気づいたという内容だ。
はじめは信じ難かったが、国語ができない子の一部に、問題用紙の真ん中から放射状に読む子がいる。たかだか50名ほどの個別教室で年間5人ほど確認できていた。
(誤字訂正済み)
— 竹中秀幸@ピクセルスタディ (@PixelStudy2022) 2022年6月7日
具体的には、国語の読解問題の文章を読む際、冒頭からなどではなく、段落の中心から読むという現象が見られたのだそう。
このツイートに対し、Twitterユーザーからは特殊な読み方への驚きとともに「本の読み方を教えてもらってないのでは」「何をおいても読書と図書の重要性を感じる」「自分も同じように(放射状に)読んでる」など、読書体験や国語の教育問題などを指摘する声が集まっている。
ツイートを投稿したピクセルスタディさんに、具体的な状況や対策などを聞いてみた。
特殊な読み方は「指導」で改善できている
ツイートを投稿したピクセルスタディさんは、関西大手の進学塾講師を15年勤め、現在は大阪で個別指導と映像講義の塾を運営し小学生への指導をメインに行っている。『受験国語の読解テクニック』(文英堂)などの著書もあり、受験国語の指導歴は長い。
ピクセルスタディさんは注目されたツイートに対して例を挙げ「放射状の読み方」をすると問題にどう解答しているのかを説明している。
質問が多かったのでおおもとの発言の下に書いておきます。
まず、問題文(作問のためにある程度作為的に)を作りました。 https://t.co/jfXuZvhugg
— 竹中秀幸@ピクセルスタディ (@PixelStudy2022) 2022年6月7日
で、なんとか子どもたちが自分の視点を誘導できないかなと考えて、比較的ゆるい線引きを推奨しています。こんな感じ。テストで使用するので、あまり理由づけをしない、えんぴつのみ、薄く書く、じゃまと思ったら消すというルールです。 https://t.co/eAscK0aaBh
— 竹中秀幸@ピクセルスタディ (@PixelStudy2022) 2022年6月7日
「問題用紙の真ん中から放射状に読む」というのは、具体的にどういうことなのでしょうか。
本文の中で目についたところから読んで、ある程度わかったと思ったら問題を見ているようで、単に傍線(設問)の言葉を拾っているわけでもないようです。
例題は、わざと「北海道かに丸ごとコーンバター」の一文に目がいくようにしています。
「放射状」に読んでいることで、問1の「私が空腹を抱えていたのはなぜですか」の答えは、傍線部付近の文章しか読んでいないとこうした解答になってしまいます。
傍線部付近の文章だけを読んで「空腹を我慢できないから。」「いじきたない性格だから。」と答えてしまう生徒が少なからずいるそうだ。
1がいまの話題です。傍線の前だけを読んで「空腹を我慢できないから。」と答えたり「いじきたない性格だから。」と答える生徒が少なからずいます。
— 竹中秀幸@ピクセルスタディ (@PixelStudy2022) 2022年6月7日
そして、このツイートの発端になったのは、これで「自分が空腹であることを思い出したから。」と答える子もいることです。
— 竹中秀幸@ピクセルスタディ (@PixelStudy2022) 2022年6月7日
なお「国語の苦手な子」とは、ピクセルスタディさんが指導する、中学受験を予定している小学生。受験指導を始めたばかりの小学3、4年生の一部に「読み方がおかしい」生徒がいるそうだ。
小学校のテストでも、ずれたことを書いてしまうようです。ただし「これがキーワード」と判断したものを答案用紙に書けば、それでも正解になる問題もあるようです。
ただ高学年でも、傍線だけ読めばなんとなかるテストにさらされすぎて「傍線部の近辺だけを読む」ことから離れられない子もいます。
こうした生徒さんが出てきたのは、最近のことなのでしょうか。
読み方や解き方がおかしい生徒は、個別指導を始めた15年前からいました。人数もさほど変わりません。ただ、おかしな読み方になる原因がオーバーワークにあることに気づいたのはここ4、5年です。
「オーバーワークにある」とはどのような状態なのでしょうか。
「オーバーワーク」には2種類あります。ひとつは塾・習い事の過密スケジュール。そしてもうひとつは与えられている問題が難しすぎて、まともな読解ができないことです。
正直、過密なスケジュールが子どもを忙しくさせすぎて、ほぼ子供が防衛本能的にいいかげんな取り組みをして宿題を消化している状態になることがあります。ですがそれは、今回の主旨ではありません。
今回の中心は2つ目です。つまり文章レベルを下げて、読み方を指導してやることに突破口があると考えています。もちろん、1つ目の問題に関しても、個別指導塾の立場からご家庭の状況を把握し、改善してもらうことも多くあります。
「放射状に読む」ことへはどう対策したらいいのでしょうか。
どれだけ口を酸っぱくしていったところで、テストは一人で受けるものなので、どう読んでいるかは監督できません。ですから、テスト対策としては、間違った読み方をして(単語を拾って勝手な補完をして)も正解に近づくように、「お決まりのパターン」をどんどん伝えていきます。
また「文章の仕組み」も教えていきます。読み方がおかしな子は、書き方もおかしいものです。そうやって、テストでなんとか点数を確保する対策をしつつ、将来的には読み方が修正できるようにバランスをとって指導しています。
単に「文章の読み方」を教わっていないだけ
ツイートには「学習障害ではないか」という指摘も多く見られた。学習障害(LD)があるかどうかは文章の読み方だけで判断できるものではなく、正確には専門家の診断が必要だが、ピクセルスタディさんの考えはこうだ。
ツイートに対し認知障害や学習障害を指摘する声もありましたが、我々児童発達については知識のない人間が読み方を指導して改善されたということは、障害ではなかったのかもしれません。読み方を教わってないだけのケースがほとんどなのではないでしょうか。
読み方を教わっていない、または、塾の教材や、学習の方針のためにそうなっただけだから、粘り強く指導してやればいいのかなと思っています。
特殊な文章の読み方をしているのは、やはりそれまでに受けた指導や読書体験などが影響しているのかもしれない。学年問わず「国語が苦手」で悩んでいるお子さんがいる保護者や受験生は「文章の仕組み」を学びなおしてみても良さそうだ。