目一鬼は白蛇を恐れる

リエットさん(@rsr28083)の書いてくださった、落ちぬい二次創作です。 今回は尻尾付きとの遭遇のお話? 顛末はどのようになるか。 ぜひお楽しみくださいませ! 続きを読む
2
前へ 1 2 3 ・・ 6 次へ
リエット @rsr28083

……フフ……フフフッ……… 心に穴が空き、広がろうとしていた俺の耳に、女の微笑が入り込む。 俺はそれによって意識を今に引き戻され、顔を上げた。 すると、机の向こう…司令室の入り口ドアの前に…… 奴が立っていた #落ちぬい二次

2016-07-15 22:27:58
リエット @rsr28083

「フフフッ……フフフフフッ」 黒のレインコートをかぶり、背後に太く大きな尾をくねらせる白い少女… 俺の脳内は反射的にその姿をかつての海で見たあれと重ね合わせた。 尻尾付きっ!? #落ちぬい二次

2016-07-15 22:28:42
リエット @rsr28083

口元を吊り上げ、なんとも愉快そうに微笑み続けるそれを見た俺はとっさに椅子から立ち上がり、後ずさる。 そうすると同時だったか…机と椅子が唐突に消え、司令室が深い青色の空間に変わった。 ちゃぷっ… 靴底を伝って水の感触が足から上がってきた。 #落ちぬい二次

2016-07-15 22:29:29
リエット @rsr28083

地面に目を向ければ俺の両足から水の波紋が広がっていた。 どういうわけなのか…俺は艦娘のように水面に足をつけて立っていたのだ。 ここはどこだ?司令室はどこに消えた? #落ちぬい二次

2016-07-15 22:30:09
リエット @rsr28083

俺は南方の海にいるのか? しかし今見える景色は海というには空と水面の境界が混ざり合っているかのように青すぎる。 ちゃぷ……ぴちゃん…… 俺の前から一定の間隔で水音が聞こえてくる。 見てみれば尻尾付きがゆっくりと俺に向かって歩き出していた。 #落ちぬい二次

2016-07-15 22:30:49
リエット @rsr28083

「っ!?く、来るなっ!!」 俺にもはや平静など無かった。 叫び、後ずさろうと右足を動かそうとする。 が、体が思うように動いてくれない。 まるで全身水中に浸かっているようだ。 必死に体を動かそうとしている俺に対して、尻尾付きはもう目の前まで来てしまっていた。 #落ちぬい二次

2016-07-15 22:31:58
リエット @rsr28083

「やっと…会えたね…」 尻尾付きの言葉に、俺は震えあがる。 だが震えあがった理由は恐怖でく、驚愕だった。 尻尾付きの言葉があまりにも…美しく…優しく響き、俺の耳に入り、染み込んだためだ。 深海棲艦というのはみんなこんな声をしてるのか? #落ちぬい二次

2016-07-15 22:32:24
リエット @rsr28083

と、尻尾付きは目深にかぶったフードを両手でそっと上げ始める。 口だけしか見えなかったのが、鼻、目元、前髪の毛先と、徐々に俺の前に開示されていく。 そして全てが俺の前にさらけ出された時、俺は息を飲んだ。 #落ちぬい二次

2016-07-15 22:32:57
リエット @rsr28083

俺を貶めた存在、憎しみと恐れを向け続けた仇の素顔。 それはあまりに美しく…そして、優しかった… 今まで見てきた女の顔のなかでも飛び切りだった… こんな…こんな優しい顔をした女が…尻尾付き…?……俺の仇だと? 俺は奴の顔と向けられる視線にくぎ付けになった。 #落ちぬい二次

2016-07-15 22:33:25
リエット @rsr28083

「ようやく会えた……会いたかった……」 まるで愛しい人間に話しかける様に尻尾付きは発し、固まる俺の顔をに触れようと両手を出してきた 純白の両手指…まるで白花のように美しい両手が迫る様子に俺は見とれた が、その指が顔の皮膚に触れようとしたとき、恐れが息を吹き返した #落ちぬい二次

2016-07-15 22:34:36
リエット @rsr28083

「わあぁっ!!」 情けない声を出した俺は、尻尾付きの顔面を拳で殴り飛ばした。 体が動いたことに驚きながら、俺は殴られて後ずさり、顔を俯かせた尻尾付きを見た。 しばらく尻尾付きを眺めていた俺は、恐怖の次に怒りが体から湧き出るのを感じた。 #落ちぬい二次

2016-07-15 22:35:12
リエット @rsr28083

こいつは尻尾付きだ。どんなに美しく優しかろうとあの海で俺の仲間とプライドを引き千切った仇だ。長門たちを殺した敵なんだっ! 怯えきっていた俺は一転、どうしようもないほどの憎しみに体が煮えたぎり、よろけている尻尾付きに積年の恨みを込めた蹴りを喰らわせた。 #落ちぬい二次

2016-07-15 22:35:59
リエット @rsr28083

ゴッ!! 蹴りがきれいに尻尾付きに入る。 俺は叶うことは無いと思っていた尻尾付きへの直接攻撃に心が酔いしれそうになった。 …が、そうなろうとした俺の心は瞬く間に凍り付いた。 #落ちぬい二次

2016-07-15 22:36:53
リエット @rsr28083

渾身の蹴りを入れてよろめいていたのは尻尾付きじゃなかった。 そいつは黒いブレザーにスカートを穿きチェックのネクタイを締めた女子高生のような格好で髪は黒く短い、左目には刀の鍔のような眼帯を付けていた。 「天龍…!?」 #落ちぬい二次

2016-07-15 22:38:23
リエット @rsr28083

俺にとって忘れることができない存在が、尻尾付きに代わってその場に現れ、俺の蹴りを受けて水面に片膝をついていた。 そして天龍は金色の右目を俺に向け続けた。 その視線には何か感情が乗っている訳でなく、ただ俺を見つめ続けていた… #落ちぬい二次

2016-07-15 22:38:55
リエット @rsr28083

「て、天龍…俺、は…」 突如現れた旧友に俺は下を向き、何か言葉を見つけて声をかけようとした…が、再び視線を前に戻した時には天龍は無く、あの尻尾付きが穏やかな顔をして立っていた。 「!……っ…!貴様ぁっ!!」 #落ちぬい二次

2016-07-15 22:39:24
リエット @rsr28083

先ほどの天龍は俺を動揺させるための幻だったことを知り、激しい怒りが噴き出る。 俺はその怒りに任せ、尻尾付きに強烈な打撃を何度も叩き込んだ。 何度も殴り、蹴り、その白い髪を無造作に掴み上げ、顔面に正拳を叩き込もうと前に持ってきたとき、俺はまた心と動きを止めた。 #落ちぬい二次

2016-07-15 22:40:51
リエット @rsr28083

俺が掴んでいたのは濃い紫色の髪で、その主は幻として現れた天龍の妹、龍田だった。 俺の後悔の一つ、救い出せず闇に落ちた女は、俺に何度も殴られ、髪を掴まれているにもかかわらず、先ほどの天龍のように感情の分からない視線を向けていた。 #落ちぬい二次

2016-07-15 22:41:24
リエット @rsr28083

思わず俺は手を放し、そこから五、六歩後ずさる。 そして水面に体勢を整えた時には、龍田は消えてまた尻尾付きが俺に向かって笑いかけてきた。 再びしてやられた俺は、今度は怒りとは違う別の感情に任せて殴りかかった。 だが俺は次々と尻尾付きではない別のやつを殴っていった。 #落ちぬい二次

2016-07-15 22:42:23
リエット @rsr28083

長門、不知火、神通、北上、陸奥、陽炎、黒潮、飛龍、蒼龍、球磨、時雨、扶桑、山城、川内、秋雲、舞風、磯風、浦風、谷風…… #落ちぬい二次

2016-07-15 22:43:21
リエット @rsr28083

俺は、自分の部下の艦娘を次々と殴っていった。 尻尾付きが見せる幻覚だとは頭で理解している…だが、俺はいい加減消えてくれという思いと混乱、恐れのあまり目の前で万華鏡のようにかわるそいつを殴るのを止められなかった #落ちぬい二次

2016-07-15 22:43:57
リエット @rsr28083

そして次を殴る前には感情が頂点に達し、拳を寸前で止めてしまった。 突き出された拳越しに、浜風が俺を見つめていた。 「ありがとう…」 と、浜風が消えて代わりに尻尾付きが微笑とともにそんな言葉を言ってきた。 #落ちぬい二次

2016-07-15 22:44:51
リエット @rsr28083

「こんなにまでして、私に会いに来てくれたのね…」 尻尾付きが両手を下に控えめに広げて見せる。 それにつられて俺は下を見た。 水面に…艦娘たちがぷかぷかと浮かんでいた。 #落ちぬい二次

2016-07-15 22:45:14
リエット @rsr28083

天龍、龍田、長門、不知火、神通、北上、陸奥、陽炎、黒潮、飛龍、蒼龍、球磨、時雨、扶桑、山城、川内、秋雲、舞風、磯風、浦風、谷風……浜風…… #落ちぬい二次

2016-07-15 22:45:36
リエット @rsr28083

「ちがう……違う……!俺は……俺は、お前らを…!」 浮かぶ艦娘たちを見た俺は、たまらず救い上げようとした。 しかし、それを尻尾付きは右手で俺の胸に触れ、そっと押しとどめた。 #落ちぬい二次

2016-07-15 22:46:28
前へ 1 2 3 ・・ 6 次へ