紅鎮守府日記 ~リベッチオ編~(2016/7/2~2016/10/26)

#紅鎮守府日記 リベッチオが活躍します。
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戦争さん @RAKUNYA

「…………」 「…………」 沈黙。呼吸を整える大鳳と、頭の後ろで手を組み、出方を待つリベッチオ。 互いの肩に力は入っていないが、その眼光は常に相手を捉え続ける。 にらみ合い、読み合い、夕立を連れてそそくさと逃げ去る時雨が安全圏まで避難したところで。 大鳳が、動く #紅鎮守府日記

2016-08-09 00:08:36
戦争さん @RAKUNYA

試すようなリベッチオの視線。それに返すのは大鳳の鋭い瞳。 「……本気で参ります。"死なないでください"」 保障はできないと、暗に語る大鳳。 「へぇ……」 相対するリベッチオは頭の後ろで手を組んで、舌なめずりをしながら笑う。 「おもしろく、なってきたじゃん――♪」 #紅鎮守府日記

2016-07-22 01:23:30
戦争さん @RAKUNYA

「怖いよー。リベは今夜のおかずにされちゃうのかなぁ? 」 「それはないでしょう」 おどけた様子のリベッチオに対し、再び無表情となった大鳳が答える。 「正直な話、ここまでのことであるとは思いませんでした」 「……ふーん? 」 #紅鎮守府日記

2016-07-22 01:23:19
戦争さん @RAKUNYA

「あの人絶対"リベのこと"ミンチにしてミートパイにしようとしてたよね? 」 「…………」 大鳳が視線を向けた先。リベッチオの小さな指で指された時雨は―― 「…………(テヘッ)」 ペロリと舌を出して誤魔化す。 「……まあ、死んでませんしいいとしましょう」 #紅鎮守府日記

2016-07-22 01:23:09
戦争さん @RAKUNYA

「いえ、かまいません。元よりプランもあまりなく、殺すつもりもありませんから」 「え、殺すつもりなかったの? 」 「えぇ」 「いや、でも、あの……」 そう言ってリベッチオが指差したのは、スカートの裾についたほこりを払って立ち上がったところの時雨。 #紅鎮守府日記

2016-07-22 01:22:59
戦争さん @RAKUNYA

音もなく降り立つ様子は忍者か武人か。 「おっと、まーたおもしろそうな人かな? 」 「……さあ、それはどうでしょうか」 その左手には、飛び降りるまでは持っていなかった黒塗りの鞘とそれに収まる刀が握られていた。 「タイホウ……だっけ? ごめんね、予定狂った? 」 #紅鎮守府日記

2016-07-22 01:22:50
戦争さん @RAKUNYA

一切の表情が抜け落ち、鋭い刃のような薄灰色の瞳と、挑発的に見上げる鳶色の瞳。 やがて大鳳はふと視線を逸らすと、そのまま窓枠へと手をかけ、飛び降りる。 #紅鎮守府日記

2016-07-22 01:22:40
戦争さん @RAKUNYA

時雨に向かい合うリベッチオから見て左上方。 訓練棟の二階部分へと向けられた視線は、そこにいたさらなる一人を正確に射貫く。 「ごめんよ! 君の出番までに片付けちゃったけど、どうするー? 」 そこにいた人物――装甲空母 大鳳は、リベッチオの視線を正面から受け止める。 #紅鎮守府日記

2016-07-22 01:22:29
戦争さん @RAKUNYA

「ま、手品は面白かったけど、"天才"のボクを殺すにはちょっといろいろ足りないかな」 ぽかんとした表情で尻餅をついたままの時雨を見下ろしながら、リベッチオが言う。 「ああ、それとも"そこに隠れている三人目"もいればもっと苦戦していたのかな? 」 #紅鎮守府日記

2016-07-22 01:22:20
戦争さん @RAKUNYA

「はい、おつかれさま」 そして、トンッ―と。 一瞬にして鎖の包囲網を抜け、肉薄していたリベッチオのもみじのように小さな手のひらが、時雨の胸元を軽く押す。 驚き、見開かれた蒼い瞳にその姿を捉えながら。 「はぇ……? 」 時雨は静かにその場で尻餅をついた。 #紅鎮守府日記

2016-07-22 00:38:31
戦争さん @RAKUNYA

「なっ、ちょっ――」 そこでようやく慌てた様子を見せる時雨。 「……あっ、しまっ」 攻撃の隙をうかがっていた鎖を使って、夕立をなんとか受け止める。 それを確認した蒼い瞳が大きく見開かれ、ピントは自身の手前まで合わされる。 #紅鎮守府日記

2016-07-22 00:38:09
戦争さん @RAKUNYA

その表情に必死さはなく、むしろまだまだ余裕を感じさせ―― 「はい、残念♪」 「ぽい!?」 "鎖にまぎれて奇襲を仕掛けた夕立"の腕をつかむと軽々と投げ飛ばす。 その落下地点は、リベッチオの背後を狙おうとしていた二本の鎖の目の前。 #紅鎮守府日記

2016-07-22 00:37:31
戦争さん @RAKUNYA

しかし、そのすべてを受けたリベッチオは、軽く右にかわし、お辞儀をするようにかわし、軽いステップでかわし。 「あはは! 」 右手ではたき、左手で逸らし、片足で遮る。 自身を取り囲み、縦横無尽に襲い掛かるそれらを、受け、かわし、そらす。 #紅鎮守府日記

2016-07-22 00:37:21
戦争さん @RAKUNYA

ニコニコと、ニヤニヤと、ニタニタと。 悪魔のような笑みを、蠢く鎖の中で浮かべる小さな影。 「――ッ! 」 時雨の顔にも一筋の汗が垂れる。それと同時に、ふたたび大きく蠢く鎖たち。 上方と左右、天球型の包囲網のすべてから襲い掛かる太い鎖。 #紅鎮守府日記

2016-07-22 00:37:12
戦争さん @RAKUNYA

「いやーびっくりだよ。普通なら攻撃の速さも重さも十分」 舞い上がったほこりが気になるのか、鼻をこすりながら。 「でも、"ボク"を殺すにはぜんぜん足りない」 まるで学生の実力テストを採点する教師のような口ぶりで。 「もう終わり? そんなわけないよね? 」 #紅鎮守府日記

2016-07-22 00:37:04
戦争さん @RAKUNYA

一本一本が自身の腕の半分ぐらいあるそれを、全部で八本。 単体でも巨大船舶型鎮守府の床面をえぐるほどの力のあるそれらの一斉攻撃を一身に受け。 「ちょっとこれじゃあ――」 それらの渦巻く中心に。 「――死ねないかな?」 平然とした態度で立ったままの、リベッチオだった。 #紅鎮守府日記

2016-07-22 00:36:54
戦争さん @RAKUNYA

それを感じさせるほどの"なにか"が時雨からリベッチオに向けて放たれた。 煙の晴れたそこにあったのは、袖口とスカートの裾からじゃらじゃらとした"鎖"を生やした時雨。 そして―― 「うーん……」 #紅鎮守府日記

2016-07-22 00:36:40
戦争さん @RAKUNYA

ドゴバッ!! と。 全長400m、幅350mの逆U字型巨大船舶。 鎮守府であるそれの一角が煙立つ。 時速130ノットで航行するその船が揺れることはなかったが、そこにいた、艤装をはずした"ただの少女"である艦娘をぺしゃんこにするだけならば十分なパワー。 #紅鎮守府日記

2016-07-22 00:36:31
戦争さん @RAKUNYA

より正確に述べるのであれば、動いたのは"時雨の制服"だった。 白露型のそれとは、デザインこそ同じであるものの、本来が半袖であるものに対して時雨の制服は長袖。 その肩甲骨あたりから袖口にかけてが、一瞬、なにか蠢くような微動を起こす。 そして次の瞬間―― #紅鎮守府日記

2016-07-22 00:36:20
戦争さん @RAKUNYA

「…………」 「あーあ、うまくやってたつもりなんだけど……まぁいいや。リベッチオ“ごっこ”はもうおしまい……さ、処分しちゃってよ。“そのつもりでここで殺気を見せた”んでしょ? 」  リベッチオのその言葉に、それまで黙っていた時雨が――動いた。 #紅鎮守府日記

2016-07-02 01:35:12
戦争さん @RAKUNYA

「だんまり、か。そういう命令なのかな? キミ、ご主人様の命令に忠実そうな顔してるしね」  少しだけ挑発するようなリベッチオの言葉だが、それでも時雨の表情は動かない。 「ま、監視していた理由は分かっているつもりだよ。“ばれている”んでしょ? 」 #紅鎮守府日記

2016-07-02 01:35:03
戦争さん @RAKUNYA

小型焼却炉の下部。レンガ造りになっている部分をめくるようにして出てきたのは、ニコニコとした笑顔の白露型二番艦、時雨。 「つーか、そこそんな風になってたの? 熱くないの? 」 「…………」  問われた時雨は答えない。笑顔を顔に貼り付けたままだ。 #紅鎮守府日記

2016-07-02 01:34:54
戦争さん @RAKUNYA

「……いい加減、出てきたら? あんまり監視されるのって好きじゃ無いんだよね」  無邪気な様子から一転し、冷静な、ひどく覚めた目で焼却炉を見つめてこぼす。  そして―― 「ん、何回か会ったことあるよね? 」 #紅鎮守府日記

2016-07-02 01:34:46
戦争さん @RAKUNYA

「……さて、と」  清霜を見送ったリベッチオは小さくため息をつきながら焼却炉へと向かう。  正面にあるのは台形で鉄の扉が付いた焼却炉。見た目こそ古めかしい、大昔の学校施設にあったそれを模してはいるが、電子制御されたその釜の火力が足りないということはまずあり得ない。 #紅鎮守府日記

2016-07-02 01:34:38
戦争さん @RAKUNYA

「うん、大丈夫。今日は神通さんだったね? 」 「そうそう。それじゃ、清霜は先に戻っとくよー。またね、りべちー」 「うん、またあとで」 「……あとで、ね」 #紅鎮守府日記

2016-07-02 01:34:30