アイドルスレイヤー#Side Story1【ユメノ&ルイース】後編

もう番号のズレはご愛嬌ってことで……よくないか…… そして分割すると必ず後編のウェイト増えるよね、なんでだろう……? 中編はこちら→http://togetter.com/li/1006044
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夜明け前のネオセブンス。眠らぬメガロポリスたるこの街も、この瞬間は化粧を崩したオイランめいた緩んだアトモスフィアに包まれていた。夜が明ければすぐ、サラリマンたちが女優の巨大広告を尻目に、セブンス中央駅から溢れ出てくる。ここがサラリマンと芸能の街と言われる由縁だ。1 #ナナニン

2016-08-06 15:21:50
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薄い墨汁色の空を、堺屋ユメノはビルの谷間から見上げていた。生まれ故郷の空を見るのはこれが最後かもしれない。 ユメノは追っ手がいないことを確認しつつ、クオンジの根拠地たる摩天楼から離れていった。目指す場所は、ゴーストタウン、セッパク・アーケード。2 #ナナニン

2016-08-06 15:27:44
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金さえ払えば、クオンジを抜けたアイドルでも他の土地でひっそりと暮らせる環境を整えてくれる場所があるという。 クオンジのヤクザめいたやり口により、組織を抜け出せずにいたユメノにとっては渡りに船だった。履歴を洗わずに組織を離脱すれば、刺客が来るのは間違いない。3 #ナナニン

2016-08-06 15:37:29
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故にユメノは、つばの広いハットにサングラスで変装し、人通りの少ないこの時間に足早に進む。作業服を着て疲れきった男が、向かいから来た小綺麗なユメノを訝しげに見る。 ((見たかい、彼の顔?))ルイは愉快そうに話しかける。((なんて間の抜けた顔だったか))4 #ナナニン

2016-08-06 15:50:08
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フフフ、とユメノも笑う。家出のような高揚感でユメノはあらゆることが面白く見えていた。「さ、早く目的地に着いて、オーサカにでも高飛びしようね」 ((そういえばユメノは、ずっと自分を強いと思っていないんだな))しばらくしてルイがぽつりと呟いた。5 #ナナニン

2016-08-06 15:57:06
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「ナンデ?」((自分を強者だと思っているなら、そもそもこんな隠れて抜け出すなんてことしないだろう?))「……そうだね」ユメノは妙に感心したように頷いた。ゴミ箱を漁っていた野良犬が、なにかを察知したのかこちらに吠えてくる。 ((まあ、私の力をどう使おうと君次第だ))6 #ナナニン

2016-08-06 16:01:45
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「私ね、アイドルに憧れていたの、普通のアイドルに」((ふむ))ぽつりぽつりとユメノはルイに打ち明ける。「アイドルの女の子とお友達になって、その子を間近で眺めていたかったなぁ……」((わからないな))ユメノの願望に、ルイは疑問を挟む。7 #ナナニン

2016-08-06 16:09:13
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((憧れているなら、力ずくでも自分のものにするんじゃないのか?))「片思いが好きな人間もいるのよ」それに、とユメノは付け足す。「私が貰った力じゃ、自分のものにしようとするうちに壊れちゃうし」 「でも、あなたもあなたよねー!あれズルいわよ!」とユメノは昔の話を掘り返す8 #ナナニン

2016-08-06 16:14:53
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((なんのことかな?))「アイドルに近づかせてやるってやつよ!私は普通のアイドルと思ったのに!」((ああ、あれは悪かった、でも話をちゃんと聞かない君も……))「やり方が一昔前の魔法少女アニメと同じじゃない!」ユメノは早口でまくくたてる。9 #ナナニン

2016-08-06 16:20:19
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「まあ、あのアイドルの子達も可愛かったからそこはいいけど……」((いいのか……))「でも問題はさらにあってだね!」返す刀でユメノはさらにルイに問い詰める。 「アイドルの子と殺しあうなんて聞いてないんだけど!?」((現代のアイドル事情まで把握するのは……))10 #ナナニン

2016-08-06 16:26:47
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「え、クオンジに責任転嫁!?」((そういうわけじゃないけど、私にもできることとできないことが……))ルイの言葉に勢いがなくなっていく。 「ま、可愛いアイドルと会えたのはよかったけど、騙したのは忘れないからね」((……早く目的地に向かおう))「あ、逃げるでない!」11 #ナナニン

2016-08-06 16:33:25
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「ここから先が、ウワサのセッパク・ゾーン……」ユメノは肩に持つトートバッグの取っ手をギュッと握った。この地を制圧しようとしたクオンジと、対抗勢力による戦闘でクオンジの6強のうちの一人、神城スイが消えたという。 ((敵意を示さなければやられないさ))ルイは言った。12 #ナナニン

2016-08-06 16:41:57
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「そうなの?」((ああ、まあどちらにしろ進むしかないだろう?))ルイの言う通りだった。ユメノはゴーストタウンと化したゾーン周縁に足を踏み入れた。 セッパク・ゾーンの中心部以外は、クオンジが将来の決戦を予想し、住民を半ば強制的に移動させていた。13 #ナナニン

2016-08-06 16:48:56
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再開発プロジェクトと称し、クオンジが強制住民移動を行ったことにより、セッパク・アーケード一帯は廃商店街を除き一般人はいなくなった。 移動を拒否した者は、アイドルに暗に見せしめにされるか、商店街に逃げ込むかのどちらかだった。14 #ナナニン

2016-08-06 16:56:09
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ユメノも噂には聞いていたが、クオンジに入るまで実態はよく知らなかった。 ガラスが割られ、落書きをされ、朽ちるのを待つ街を進むユメノは、前方の事務所ビルに何者かが立っていることに気がつく。「あの人は……?」((まずいな、彼女もアイドルらしい))「え?」15 #ナナニン

2016-08-06 17:01:27
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「ドーモ、野々原ヒメです、ここがどこだかわかってんのか?」野々原ヒメ、クオンジとの戦いで数多のアイドルを引退かアノヨに追い込んだという対抗勢力筆頭だ。 「ドーモ、堺屋ユメノです、この先の場所に用事があるだけなので何とぞ……」((ミト……?))ルイが何かに反応する。16 #ナナニン

2016-08-06 17:09:00
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「え、なに?」今までにないルイの様子にユメノは戸惑う。「なんだ……?」その戸惑うユメノに、ヒメは腕に薄く青い炎を揺らめかせながら警戒する。 ((あれは間違いない、私の仲間の羽生田ミトが中にいる))ルイは確信をもって断言する。「羽生田ミト……?」17 #ナナニン

2016-08-06 17:15:12
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((ああ、ミトは元気かと聞いてみてくれ))「……もしもしー?そちらのミト=サンはお元気ですか?」「なッ……!?」憑依者を名乗っていないのに、あっさり見抜かれたヒメは面食らっていた。 ((私は相変わらずだ、子猫ちゃんと毎日楽しく過ごしてる))「私は変わらずに……」18 #ナナニン

2016-08-06 17:21:07
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「どうしたんだ?急に笑って……」こちらからメッセージを受けとり、向こうでなにかがあったのだろうか。「私も変わらず、歌と豆腐で過ごしている……、だってよ」しばらくすると、ヒメから……ミトからのメッセージがきた。 ((そうか……、行こう))「もういいの?」((ああ))19 #ナナニン

2016-08-06 17:26:36
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ヒメも、ミトからなにか言われたのか、そのまま商店街の方へ飛び去っていった。 「ふぅ、助かった……」((そうだな))ルイはしばらくの間、一言も話さなかった。ユメノもなにかを察して、話しかけようとはしなかった。20 #ナナニン

2016-08-06 17:30:15
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ゴーストタウンをお互い無言で歩く。目的地まで間もなくのはずだ。((そろそろだな)) 「そうだねー、やっとだね」ルイが口を開いたので、もう沈黙に耐えられそうになかったユメノは、すぐに応えた。「これでオーサカの美少女が……」((ん?))ルイがまた何かを察知した。21 #ナナニン

2016-08-06 17:37:10
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((後ろのビル影に誰かいるな……、声をかけてみるかい?))「わかった、おーい、だれかいますかー?」ルイの言う通り、ユメノは声をかけると、ビル裏から少女が出てきた。「え……?バレた!?」 「ドーモ、堺屋ユメノです、なぜここに?」ユメノはアイサツと共に疑問をぶつける。21 #ナナニン

2016-08-06 17:42:07
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「ど、ドーモ、白鳥トモエです……!」トモエは高位憑依者を相手に精一杯のアイサツを返す。「ユメノ=サンにチャチャ=サンが戻ってきてほしいと……!」 「今さら戻ったところでセプクでしょう……?」「チャチャ=サンはあなたの力を今後も活かしてほしいと!」トモエ必死の説得!22 #ナナニン

2016-08-06 17:47:06
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「……これは私の中でもう決めたことなの」「そう……ですか……」トモエは俯き、そして背中の傘を引き抜き、構える。「なら、倒させてもらいます……!」 「なるほど」((来るぞ!))「わかってる!」トモエは特殊傘をヤリめいて突きだす!フープで受け止めるユメノ!24 #ナナニン

2016-08-06 17:51:46